太極拳の套路(型)

2015.12.28 Monday


(64式武当太極拳

太極拳には、套路(とうろ)と呼ばれる型があります。
たとえば64式武当太極拳であれば、64の套路で成り立ちます。

この套路が覚えられずに、太極拳を途中でやめてしまうこともあるようです。
生徒さんの中にも「難しくて覚えられない」とか、「套路は難しいから、
站椿功(站功、立禅)や気功がやりたい」とおっしゃる方もいらっしゃいます。

そんなことから套路があるのはどんな意味があるのだろう、と考えるようになりました。

站椿功は、無駄な力を抜くからだの使い方や、感覚を育てる基本だと思っています。
実際に太極拳で動くときの力の源を育てるもの、という感覚もあります。

気功は、上記に加えて、呼吸と動きの連動を学んでいくものだと感じます。
これが太極拳の動きの基礎にもなっています。

ちょっと横道にそれますが、太極拳と気功の違いは、相手がいるかいないか、です。
太極拳は、相手を想定して、それに対する動きの連続です。つまり武術です。
気功はひとりで行います。

養生という点でいえば、気功の方が優れているが、気功だけでは”運動”という面が足りない、
と、教わったこともあります。

では運動する、からだを動かすとは、どういうことなのでしょうか。

前に読んだ本の中に、なぜ人間は落ち込むか、という話が書かれていたことがあります。
魂が人間という形の中に入って生まれるとき、ある部分の振動レベルを低下させている、
つまり、形という委縮のなかへ文字通り落ち込ませているのだと、説明していました。
だから落ち込むことは、人間として生きる上では当然のことなのだとか。
落ち込みから抜け出すためには、低下させた振動レベルを上げればよく、
からだをうごかすことで可能になる、と書かれていました。
(参考「あなたの神話ーアセンションのサイクルー」ドリアン・G・イスラエル著)

からだを動かすとすっきりするのは、誰にでもある経験だと思います。
わたしはこれを読んだときに、自分がなぜ太極拳をするのかが、わかったような気がしました。

では自由に動かすのではなく、”型”があるのはなぜなのでしょうか。

太極拳だけではなく、古くから伝わっているもの、日舞や歌舞伎、能、バレエなど
には、先人の智慧がつまっていると思います。
最初からわかる必要などなく、わかるわけもなく、ひたすら型を真似ることで、
だんだん智慧を学んでいけるような気がするのです。
そしてそれを、人に伝えることもできるようになってくるようにも感じるのです。

わたしにとって、表現したいこと、伝えたいことは、太極拳の套路の中にあります。

太極拳は、相手を想定して動くことも、大きな要素だと思います。
人は一人では生きていません。友好な関係も作れますが、争いも起きますし、危険もあります。
そんな中、どんな存在として生きていくのか、どうやって生きていくのか、
自分で選んでいくことが大切なような気がします。

套路を覚えることは、ほんの入り口です。だから覚えることを諦めないでほしいと思うのです。

ただし、覚えるかどうかは個人の自由です。覚えないことが悪いわけではありません。
自分にとってのタイミングではないことも、あるかもしれません。
でも、もしも自分が套路をする機会があって、それを覚えたくないと思うことがあるなら、
なぜそう思うのか、ちょっと考えてみてください。
もしかしたらそこには何か、大事なメッセージやヒントが隠されているかもしれないからです。


(64式武当太極拳)

争いを終わらせるための太極拳

2015.12.22 Tuesday

















太極拳という言葉はよく知られていますが、どんなものなのかは、
深く知られていないと感じています。

健康のためというイメージも強いのか、武術だとご存知ない方もいらっしゃいます。
武術だと知っていても、「戦うものでしょ」とおっしゃる方もいらっしゃいます。

武術の武は、戈(ほこ)を止めると書くように、
太極拳は、争いを終わらせるためのものなのです。
自分から攻撃をしかけることは、ありません。
もっと言うと、争いが起きないことが一番良いとされます。

太極拳は、自分から動くことはありません。
外から力が加わった場合、それに対応して動きます。
その対応の仕方が独特で、これが争いを終わらせる道に導いていきます。

たとえば横から押されたとします。
これをそのまま押し返すと、”争い”になります。
押している方が急に力を抜くと、もう一方は前に倒れて自滅します。
押し合い続けていると、どちらかが勝つか、共倒れになるまで終わりません。

太極拳の場合、横から押されたときは、その力と下に向かう力とをバランスさせます。
この場合、押している方が急に力を抜いても、押されている方は倒れません。
外からかかっている力に応じて反応しているだけからです。
押されている間は、その力と下に向かう力とをバランスさせ、
力が抜けたきは、自分と大地との関係になり、
重力と、その反対の上に向かう力(立つという意識と、立つための骨という構造と筋力)
をバランスさせています。

わたしの太極拳のクラスでは、実際にこの両方を体験してもらうこともよくあります。
まず、押されている側の感想から見ていくと、
押されているとき、つまり”争い”が起きているときには、押し返す力が必要ですが、
太極拳のからだの使い方でバランスを取っているときは、力まずに楽に立っていられます。

面白いのは、押している側の感想です。
「争いが起きているときには、もっと攻撃したくなったけど、太極拳のからだの使い方で
受けられていると、自分がバカみたいに思えました。」
後者の場合、どっしりと動きそうにないこともあって、押そうとする気持ちや攻撃する気持ちも
そがれてしまうのです。

攻撃をしかけた方が、「ちょっとバカみたい」と自分で笑ってしまうところが、ポイントです。

これが、争いを止める方法でもあります。


(中国、武当山で。赤い人が押している野に対して、白い人は争っていません。)

生徒さんは、「これって人間関係も一緒ですよね」とおっしゃいました。

そうなのです。面白いですよね。

”争い”を終わらせるためには、相手がどのくらいの力できているのか、どんな状態なのか、
その瞬間で判断し、それに応じた力の使い方をする必要があります。多すぎず、少なすぎず、です。
その判断をする力として、感覚を磨いていく必要がありますし、
瞬時にそれに応じた力の使い方をするためには、感覚と連動して自分の体が動く必要があります。
それは”技”と呼べるものかもしれません。
この、”瞬間芸”ができるようになるために、長い時間をかけてお稽古していくのだと思うのです。

太極拳は、頭でっかちになりがちな人に、動物的な感覚やからだの使い方を思い出させるものでもありますが、
同時に、すごく知的な能力を発展させていくものでもあると、感じています。
人間だからこそできることです。
そしてそれは、この地球で人間としての役割を果たすために、必要なことのような気がします。

今日は冬至です。
季節は、陰が極まって、陽に転じるとき、です。
陰と陽は優劣ではなく、お互いに必要としあい、常にバランスをとって動き続けます。
その結果、まあるい”円満”な調和が保たれます。

太極拳のこんな話を、もっとたくさんの人に知ってもらって、体験してもらうことで、
まあるい調和を保つ世界を広げていきたいと、思っています。
 

空腹を味わう

2015.12.18 Friday



人生初の断食をしてみました。

2泊3日、0カロリーの飲み物(水、柿の葉茶)のみで2日半を過ごします。
期間中は、座禅して休憩する、の繰り返しです。

現代人は食べ過ぎだという説もあり、断食も流行っているようですが、
目的や効果は、人によってさまざまだと思います。
宿〇を出して胃腸をきれいにする、とか、
からだの大掃除をすることによって、頭や心もすっきりさせる、とか。

わたしの一番の目的は、”食べない”経験をすることでした。

22歳でイギリスに留学していたとき、同じ寮にイスラム教徒の友人、ハリー君がいました。
ラマダーン(断食月)と呼ばれる期間、日の出から日没まで飲まず食わずで過ごします。
それまで周りにダイエットする人はいても、断食する人はいなかったため、
目を丸くして話を聞くわたしに、友人たちは
「君は断食したことがないのか!やるべきだ。あれば自分への挑戦だ!」と言うのです。

でも、わたしの心に一番残ったのは、ハリー君の言葉でした。
「これは宗教上の理由だけではない。本当にお腹がすくと、
周りの人はどうでもよくなって、”とにかく食べたい”だけになるんだ。」

わずかのパンをみんなで分かち合って、ではないということです。
正常な状態のハリー君なら、もちろんそんなことは望んでいません。

それからもう一つ、最近、友人のご高齢のご親族が内臓機能不全になって、
自分で食事ができなくなったとき、点滴などで栄養補給したりせず、
1か月くらいかけて人生の幕を閉じた、という話を聞いたこともあると思います。

そんな理由で臨んだ断食。
食べること、食べないことを、いろいろ感じることになりました。

”食べない”と決めており、終われば食べられるとわかっていることもあり、
それほど苦痛ではなく、空腹という状態をじっくり味わいました。

からだが本当に食べ物を必要としているのかなども、いろいろ感じました。
街を歩けば食べ物があふれているため、欲していないのに頭で食べたくなることや、
時間つぶしで食べていることも、たくさんあるような気がしました。

断食中、1日半たったところで野菜ジュース150CCだけ、いただけます。
人参と玉ねぎを3時間、重ね煮をしたものと、手絞りミカンという
とても丁寧に作られた野菜ジュースです。しみじみ、おいしいのです。
からだ全体に染み渡って、パワーが出てくるような気がしました。



そして、1日に何度も行う座禅。自分の呼吸に意識を向けていきます。
「息とは、自分の心と書く」という言葉は、とても響きました。

「食べない」ことで感じること、からだの反応は、人それぞれです。
わたしは3日目の朝に、食べるなんてとんでもないほど気持ち悪かったのですが、
いざ、断食明けの食事を目の前にすると、するすると入ります。
食の人、サトケンさんが主宰する断食会でもあるため、明けの食事はたっぷり、
大量の水と大根の煮汁(2リットル)を飲んだ後、生野菜、油とお砂糖なしでつくったパン、
豆乳ヨーグルト、果物などをどっさり食べます。完食。
野菜のおいしさなどはしみじみ感じましたが、良く聞く”食べることへの感動”というよりは
”するするとからだに入っていく感覚”を感じていたと思います。

食には、たとえば薬膳のように「この季節にはこの食べ物、この食べ方がおすすめ」というような
ものがあります。わたしは薬膳の考えをとても大切にしてきているのですが、
それでも、実際には人のからだはさまざまです。
何をどれだけ食べるのが良いのかは、自分のからだと相談していくしかないと思っています。

面白い話を一つ、教えていただきました。
森美智代さんという、1日に青汁1杯だけで13年を過ごしていらっしゃる方がいるのですが、
彼女の腸内環境は、牛に似ているそうなのです。

牛は草食動物です。でも、筋骨隆々です。
タンパク質を口から入れなくても生成できるということです。(牛であれば)。
それと同じように、森さんのお腹にはタンパク質のもとになるアミノ酸をつくるような
菌がたくさんあるとか。

森さんの場合、病気治療がきっかけで断食、小食を経験し、いろいろ経て今の形なったそうです。
著書では「食べる楽しみは失ったけど、生きる楽しみを得た」というようなことを書かれていました。
そして、誰もがこの形をすすめるわけではないけど、自分の場合は結果としてこれが一番よい、
とも書かれていました。

わたしの薬膳料理の先生も、「これはどのくらい食べたらよいですか?」と聞くと、
「わかりません」とおっしゃることがあります。自分のからだと相談しなさい、ということです。
その後のからだがどうなるのか、調子や冷え方など、経験を重ねていくのです。

観察して感覚を育てることは、太極拳とも通じます。
それは自分を大切にしていくことでもあると思います。
経験してみて、良かったです。

それでもやっぱり、食べることは好きです。
頭だけを満たすのではなく、心に負担をかけず、からだが満たされる食べ方を
心がけようと思います。

断食は、3日以上になると指導してくださる方なしでは危険なことがあります。
わたしは佐藤研一さん(http://ta-ki-bi.jp/)の会に参加しました。
ひとりでやるなら1日程度、ほどほどに。


(お散歩中に見た、空と光と海)
 

呼吸で動きをリードする

2015.12.14 Monday

太極拳の面白いところのひとつは、”呼吸で動きをリードする”ところです。

動きに呼吸を合わせる、ではなく、呼吸を合図に動いていくのです。

腹式呼吸は、吸ったら肺に空気が入って胸が膨らみ、横隔膜が押されておなかが膨らみます。
吐いたら胸はしぼみ、横隔膜は上に上がります。体の中心に動きがでます。これを利用します。

息を吸って動くときの例です。
下記の姿勢で息を吸うと胸が膨らみ、外側についている腕が外向きにちょっと押されます。















それを合図に腕を広げていくと、下記のような形になります。


次は息を吐くときの例です。
息をたくさんすって腕を上に上げていき、














上の図の姿勢から息を吐くと、まず肋骨が閉じ、近い関節から引っ張られて
下に降りていきます。肩の下側、ひじ、手の順番です。

上の図から下の図まで腕を下すときには、腕は何もする必要はなく、
吐くことを合図に肋骨が閉じる動きに引きずられて腕が下がっていきます。



これがうまくいくと、自動で腕が動いていくような感覚が出たりします。
そして呼吸を合図に全身が連動して動く、という感覚も体感できます。

なにより、気持ちよいのですよ。
自動で動くから、楽ですし。
(実際には、ほんのちょっと自分で筋肉を動かしているため、自動ではないのですが、
実感としては、”勝手に動いていく”という感覚になります)。

こんな風に、頑張らないで楽に動くことが、太極拳です。
筋力で一生懸命に腕を上げたりしないため、動けば動くほど無駄な力は抜け、体はほぐれます。
ほぐれた体で呼吸を続け、動いていくことで、血流もよくなり、温かくなります。
うれしいことづくめです。

太極拳を初めて体験した方が、この「呼吸と動きが連動するところが初めての体験だった」と
おっしゃっていました。

別の方は、お稽古後に1時間ほどぐっすりお昼寝されて、「起きたら背中から羽が生えたみたいに
体が軽くなっていた」とおっしゃっていました。上半身、特に肩甲骨のあたりがほぐれたのだと思います。

これ、難しいことではなく、初心者でも結構できるのです。
上半身の緊張が強かったり、呼吸が浅い方は、(この2つの課題は、どちらも関係ありますね)、
ちょっと感じにくかったりする場合もありますが、それでも見ていると
ちゃんと呼吸にあわせて体が動いています。

太極拳のよいところは、動きがゆっくりのため、
このように呼吸が動きをリードする、ということを確認しながらお稽古できることです。
続けていくと慣れてくるため、動きが早くなっても、同じように連動して動くことができます。

ゆっくり動いてこの練習をせずに早く動くと、
筋力だけで動きがちになり、呼吸と動きも連動しにくくなりがちです。

だから、誰よりもゆっくり動ける人は、誰よりも早く動けるのですよ。
急がば回れ、ですね。
 

二本の足で立つこと

2015.12.06 Sunday



最近、なぜ人は2本足で立つことを選んだのかな、と考えたりします。

2本足は、不安定だからです。

立つことも、歩くことも、難しく、転ぶこともあります。
呼吸が浅くなっている人もいます。

4本足なら俄然、安定します。
自然と腹式呼吸になり、深い呼吸ができます。
さらに聞いた話では、匍匐(腹ばい、四つ足)だと、頭が無になるそうです。
だから禅寺などでは拭き掃除をさせる、とか。

安定している状態から、なぜわざわざ不安定な状態を選んだのかはわかりませんが、
不安定だからこそ、人間の頭は発達したのだそうです。

それでも、人間らしさでもある脳の発達は、行きすぎると
”頭でっかち”になることもあります。
カンフーで足を鍛えるのは、上半身と下半身のバランスを取るためと教わりました。
年齢を重ねると足の筋力が衰えるのに対して、上半身は重くなります。
上が重くなることで、転びやすくなったり、歩けなくなることもあります。
身体的にもそうですが、”頭でっかち”も、上半身が重くなる要素のひとつだと思います。

上半身と下半身だけではなく、2本足で立つことすべて、バランスのような気がします。
下に向かう重力と、上に向かう力(骨という構造を、それを支える筋肉を使って上に向かわせます)を
1直線上に、同じ量になるように調整します。

面白いことに、このバランス、力が均等なら良いわけでもありません。
ふたりでお互いに向き合って、押し合いっこを続けていると、いつかは疲労してしまいます。
どちらかがやめると、もうひとりは自滅する、というリスクもあります。
自分ひとりでも、人からの力が加わったりなくなったりしても、自滅せずに
バランスを保ち続けるのは、探求のしがいがあります。
こんなことをやるのも、カンフーのおもしろさです。

人は生まれてから死ぬまで、バランスのとり方をずっと学んでいくのかな、と思いながら、
わたしの”立つこと、歩くこと”の先生に、そんな話をしてみました。

先生は一言、「楽しいからですよ。」

なるほど。
だから赤ちゃんは、立とうとしたり、歩こうとするのかもしれません。

言われてみれば、わたしも立つ練習、歩く練習がすごく好きだったりします。

そういえば先日、生徒さんも「前は歩くの嫌だなあって思っていたのに、
歩くことが楽しくなってきました。」とおっしゃっていました。

立つこと、歩くことはあまりに当たり前で、無意識、無感覚でもできます。
でももし、歩きたての赤ちゃんの頃を思い出すことができたら、
ものすごくたくさんの感覚や感情が出てくるのかもしれません。

初めて立ったとき、歩いたときの楽しさは、きっと体が覚えているはずです。
感覚を研ぎ澄ませて、立って歩くような練習をするとき、あの楽しさをまた体験したり、
もっと深めていったりしているのかもしれません。

...四つ足動物の楽しさにも興味はありますが、とりあえずそれは、人間の領域外ですね。

(中国、武当山の学校で飼われていた犬。このときは足もとに収まるくらい小さかったのに、
2年後に会ったら、5倍くらいに巨大化していました。)


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