古琴:天と地と人の音

2015.07.29 Wednesday




(中国、武当山ではじめて古琴を弾いたとき。形、まったくなっておりません)

太極拳がきっかけで、習い始めたものがいくつかあります。
ひとつが薬膳料理。もうひとつが、最近はじめた古琴です。

古琴は、中国最古の楽器のひとつで、世界遺産(無形文化遺産)にも指定されています。
日本との関わりは1300年前の遣唐使の時代まで遡り、
平安時代に貴族の間で奏でられていました。
源氏物語にも、光源氏が古琴を奏でる場面が出てくるそうです。

平安時代の終わりとともに、古琴も奏でられなくなりますが、
その後、江戸時代には、今度は庶民の間でも奏でられるようになったそうです。

海外から日本に渡ってきたもので、日本で形を変えて定着するものもありますが、
古琴は、そのまま、形も変えず、楽譜も変えず、日本で奏でられました。
今、古琴は中国のもの、という印象がありますが、これだけの歴史を考えると、
日本のものと言うこともできます。

5月に中国の武当山に行ったとき、はじめて古琴に触ってみました。
はじめてだから体も腕も緊張でガチガチ、弦をぱちんとはじいてしまうわたしに、
「子供のほっぺたをそんな風に弾いたら痛いでしょ。」
そして「これも太極拳と同じだよ」と、教わりました。

あまりにできないのが悔しくて(笑)、日本に帰ってから習うことにしました。
そこで最初に教えていただいたことが、冒頭に書いた古琴と日本の関わりです。
「そんなことも知られていないでしょ。もっと知ってほしいのよね」と
先生はおっしゃいました。

弦は7本。奏法は3つあります。
散音(さんおん)という、右手で弦を弾く音。開放弦ともいいます。
按音(あんおん)という、右手で弦を弾きながら左手で弦を押さえる音。
そして、泛音(はんおん)、ハーモニックスともいいます。右手で弦を弾いて
左手で弦を軽く押さえてはなすことで、軽くて高い音が出ます。

最初は散音の練習から、それから按音に入りますが。。。
左手で弦を押さえて腕を動かすため、指が痛い。。。
しかも、難しい。。。最初の意気込みはどこに行ったのか、
ここでちょっと停滞気味になりました。

でも先生は、そんなダメダメなわたしにでも根気強く、丁寧に教えてくださいました。
そして前回、教えてくださった言葉が、「天地人」です。

「古琴の音は、天地人なの。泛音が天の音。天に響いて届くような音でしょ。
しっかりしている散音が、地の音。いろいろやる按音が、人。表も裏もある(笑)。」

「古琴は、文化。ただ弾くだけではなくて、こんな背景もちゃんとわかってほしいの。」

人は、天地の間に生まれます。
太極拳をやるときも、天地の間に存在することを意識して、和を大切にしています。
それもあって、「天の音、地の音、人の音」を教えていただいたとき、
「ああ、そうなんだな」と、すごく心に響きました。

そして、俄然、やる気がでました(単純です)。
弾く時に、これが地でこれが人で。。。と意識すると、違うのです。

古琴は、すごく太極拳につながるものがあります。
姿勢、呼吸、意識の持ち方、そして、和。
繊細で丁寧なところも、同じです。
ゆったりと、音と音の間を大切にすることも、同じ。

「でも、最近は忙しいでしょう。残念ながら速く弾く人も多いのよね」と先生。

そんなところも、太極拳と同じです。みんな忙しいから、先走る姿が、
お稽古でもよく見られます。

「弾いていると、心が落ち着くのよね」と。

これも、慢慢学(マンマンシュエ)。ゆっくりやっていけばよいのです。
良いとか悪いとかでは、ないのです。
大切なことを、思い出します。
ちょっとできないだけで停滞するなんて、わたしもまだまだです。

ゆっくり、育てていこうと思っています。



(雲海が広がる、武当山の朝)
 

夏バテ防止は、冬の風邪防止

2015.07.23 Thursday


(中国、湖北省 武当山のお寺の裏の山に咲いていた花)

このところ、咳や湿疹、かゆみや口内炎が出たりしませんか?
わたしもそうです。

実はこれ、季節も関係している場合があります。
今日は二十四節気でいうと「大暑」。一年で一番暑い時期です。
季節で言うと、「土用」。土用の丑の日の土用です。

実は土用、1年に4回あります。
季節の変わり目の18日間のことを、土用と呼ぶのです。
ただし、4回のうちで夏から秋に変わる今の時期が一番変化が激しいため、
今の時期の土用が一番有名です(大暑の次は立秋で、8月8日は暦の上では秋になります)。
有名というよりも、注意して過ごす時期、と言ったほが良いですね。

陰陽五行説では、自然界のすべてのものを「木・火・土・金・水」の5つに分けており、
季節も相応しています。

木 = 春
火 = 夏
土 = 長夏(土用)
金 = 秋
水 = 冬

長夏は、実はもう冬の準備に入る頃なのですが(3か月前から準備します)
高温多湿で夏バテしやすく、胃も動かないため、食欲も減退します。
夏バテすると、冬にも風邪をひきやすくなります。
ですから、この季節は夏バテ防止のためにも、元気に冬を過ごすためにも大切です。

胃が弱るこの時期、粘膜系も弱くなります。
このため、咳、湿疹、かゆみ、口内炎も、出やすくなりがちです。

こんなときには、黄色い食べものを多くとるようにします。
たとえば、トウモロコシ、黄色いパプリカ、菊の花、カボチャ、桃、ぶどうなど。
卵の黄身も、黄色です。
菊の花は、日本でもお刺身には必ず入っているのは、殺菌作用があるからです。
風邪ひきそうなときなどは、早目に菊の花茶をたくさん飲みます。

冷たいものを避けること、水不足にならないようにも気を付けます。
水不足になると、消化吸収が落ちるからです。

さらに、楽しく気楽に過ごすことも、大切です。
中国最古の医学書と言われる「黄帝内経」では、「思う(失恋、仕事で悩む)と、
気がかたまる。胃にさわる」と言っています。

寝不足にならないように、水分を取って、冷たいものは避け、楽しく気楽に過ごすこと。
中医学では5色(青、赤、黄、白、黒)を毎日食べることが基本ですが、中でも今の季節に弱りやすい
黄色をたくさん取ること。

そして気楽に「無為自然(無理しない)」で過ごすこと。

夏バテ防止の秘訣です。

土用の丑の日にはウナギ、と言いますが、
ビタミンAやBが豊富なウナギは、夏バテ防止にはちょうど良いですよね。
出張稽古で午前、午後と続けてお稽古するときがあるのですが、
お昼にウナギを食べたある夏の日は、最後まで全員スタミナが切れず、元気にお稽古できました。
ウナギパワー、すごいです!
















(武当山)
 

夏のワンコインランチ、はじめます!:シェア奥沢での太極拳教室

2015.07.22 Wednesday

 
(いつもお稽古に行く、中国、武当山で作ってもらった手作りジャージャー麺)

8月、シェア奥沢で開催している「はじめての武当太極拳」のクラスの後、
ワンコインランチ(500円)をはじめます。

わたしがこの場所を選んだ理由のひとつは、立派なキッチンがあることです。
いつか、食べることと太極拳を組み合わせてやりたかったからです。

太極拳で心身を整えることで、五臓六腑も育ち、外から取り込む酸素や栄養を
効率よく体でエネルギーに変えることができるようになります。

せっかく大切に育てた体ですから、丁寧に食べることは、とても大切だと思っています。

わたしは4年くらい薬膳中華を習っており、季節にあった食材を取ることで、
体は前よりもずっと元気になりました。

ここでは食だけを学んだのではありません。
薬膳の先生の食材への向き合い方は、とても丁寧なのです。
太極拳で、体と心に丁寧に向き合うのと同じように、食べるものとも丁寧に向き合うこと。
いつもおおらかで明るくて元気で、丁寧な先生のそばにいる時間は、とても心地よいのです。

会場のシェア奥沢では、この夏、「クールシェアワンコインランチ」を始めます。
それに合わせて、こちらもワンコイン。麺類などの簡単メニューになりますが、
この季節に必要な食材を使い、季節に合わせた食べ方、過ごし方などもお伝えしていこうと
思っています。

☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

【夏のワンコインランチ!】

日時:8月8日(土)、23日(日)、29日(土)
   ☆はじめての武当太極拳: 10時〜11時半
   ☆ワンコインランチ:   11時半〜13時頃 

参加費:☆はじめての 武当太極拳: 2000円
          ☆ワンコインランチ: 500円

※教室の予約をされる際に、ランチのご希望もお聞かせください。
 教室のお申込みは、minminkungfu☆gmail.com(☆を@に変えてください)
 でご連絡いただくか、わたしに直接お知らせください。
 (8−10月、自由が丘の講座ご案内は、こちらから
  →http://blog.minminkung-fu.com/?eid=61

※通常のお稽古あとのお茶の時間は、この期間はありません。

※ワンコインランチでは、準備はほぼこちらで行いますが、最後の仕上げやお片付けは、
みなさまにもご協力をお願いします。

☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆

最初のメニューは、思い出のジャージャー麺(?)にする予定です。
これは、中国の武当山にお稽古に行ったときに、作ってもらったものです。
お肉を細かくし、麺をこねて打って作った本格派です。
わたしが「おいしい〜」と食べたことを、作ってくれた人が覚えていてくれて、
半年後にお稽古に行ったときに、「ジャージャー麺食べたい?なら(わたしが)帰る
前に作るよ」と言って出してくれたのです。
わたし、狂喜乱舞(笑)。

おいしいものは、みんなを笑顔にします。
わたしも楽しみで、ちょっとチャンレンジな企画です。
この夏、さらに笑顔があふれますように。


(お肉をミンチに。わたしにつきあって裏山を一緒に駆け上がってくれたこの男の子も、
今はすっかり大きくなりました。わたしの先生の兄弟弟子の先生の学校にいます。)





















(麺をこねこね)



(この学校は、こんなかまどでした。)


(調理人(笑)。本職はお医者さんです)

そして。。。できたのがトップ画像のジャージャー麺です^^
好吃〜♪

最後に。。。ワンコインランチでご提供するものは、ここまで本格派では
ありません。盛り上げておいて、すみません。。。

太極拳の套路の名前

2015.07.20 Monday



太極拳の套路(一連の動作)には、名前がついています。
実はこれが、詩的でとても美しいのです。

武当太極拳では、たとえば「仙人が袖を振る(仙人拂袖)」とか、
下記の「月を懐にかかえる(怀中抱月)」です。




実際には動作に名前がついているため、上記は「月を懐に抱える」の一番最後の
ところです。腕を丸く、赤ちゃんを抱っこするような形になります。

太極拳は、イメージの力を大切にしています。
それぞれの名前も、そのイメージを膨らませるために、役に立ちます。


下記は、「白い鶴が両翼を広げる(亮翅)」です。
















(田理阻師父、第十五第武当玄武派承継人)

両腕が、太極マークの真ん中のS字ラインのようなカーブを描きます。

太極拳には、いろいろな門派があり
(詳しくは「カンフー(功夫)の意味と、太極拳」http://blog.minminkung-fu.com/?eid=16)、
套路の名前の中には、その門派独特のものと、どの門派にも共通するものとあります。
亮翅は、どの門派にもありますが、
門派によって、動きがだいぶ違う場合もあります。

武当太極拳は、特に詩的な美しい名前が多い気がします。
このほかにも、「川の流れにそって舟をこぐ」、「腰の玉飾りを揺らす」
など、なるほどね、と思うような名前がいろいろついています。

ただし、それぞれの動きにはこの優雅な名前とは別に、武術としての用法もあります。
たとえ「川の流れにそって舟をこぐ」という優雅な名前でも、
「相手の足や腕を抑えて、腰を回して投げて、さらに肩に担いで
投げて、押す」というのが、実際の用法です。

お稽古するときには、名前でイメージを膨らませながら、実際の用法も想像して、
呼吸で動きをリードしていきます。やること、いっぱいあるのです(笑)。

套路の名前は、まずイメージを膨らませるためでもありますが、
動きを覚えるためにも役立ちます。
動きを覚えることに苦労する、という声は多く聞きますが、
動きと名前を一緒に覚えていけば、その名前が順番に書かれた紙を頼りに
思い出すことができます。

しかし。。。中には、どうしても理解できない名前もあります。
「金色の子供が鯉を頭の上に載せている(金童顶鲤)」???
套路の名前は、詩的なので、中国人でもちょっと訳しにくいようですが、
これはイメージが膨らむような、膨らまないような。。。
そういう謎も、長くやっていれば、いつかは解けるかもしれません。

カンフー(功夫)とは、もともと、長い修練によって培われた力、という意味です。
(どうやら、欧米にわたったときに、誤用されて中国武術と訳され、今に至るようです。)
ですから、鯉を頭に載せた金色の子供の謎も、いつかは。。。
(どなたかわかる方がいらしたら、ぜひ教えてください。よろしくお願いします)。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「はじめての武当太極拳」動画は、こちらからご覧いただけます。
 http://youtu.be/DLACoQ-bLHs 
 

恩送り:Pay forward

2015.07.13 Monday


(今日、日が沈む時間に。とても美しかったです)

外国人の友人が、日本でイベントを開催することになりました。
「意見を聞きたい」というので、スカイプでお話しをして、その流れで
案内文を和訳したり、イベントをお知らせしたりなど、ちょこちょこっとした
お手伝いをしました。

たいしたことはやっていないのですが、すごく感謝されて、
「何かお礼をしたい」と、言ってくれたのです。

「そう言ってくれて、ありがとう。でも気にしなくても大丈夫。」

日本語を話せない人が、日本でイベントを開催することは大変なことです。
ごくまれな場合を除いて、英語だけでは難しいと感じます。
日本語のサポートなしには、届けたい人にもなかなかメッセージが届きにくいと思うのです。

それがわかっているから、わたしは自分にできるサポートをしたかったのです。
その人が、強い思いを持って、イベントを開催したいと思っていることも、わかるからです。

そしてもうひとつ、大事なことがあります。
わたしは中国に行くと、周りの人にいつもとてもお世話になるのです。
カタコトしか話さないわたしが困らないように、学校の人をはじめ、いろんな人が気を配ってくれます。

そんなこともあるので、「わたしも、言葉が不自由な中国で、十分、見返りはもらっているの。
だから、本当に気にしなくても大丈夫」と答えたのです。

「Pay forward (ペイ フォワード =恩送り)だね。いいね、その考えは。」

振り返って考えてみると、お世話になった人、助けてもらった人、その人たちに直接、
恩返しをしきれない場合もたくさんあります。
仕事の上司を含む目上の方や、自分が言葉を話せない外国の場合は、特にそうです。

20代の頃、台湾に初めて出張したときに、思いがけない出来事に遭遇し、バタバタ、あたふたしながら、
弁護士にさんまで会いに行くような経験をしました。
そのときに、グループ会社だった台湾の同僚が、すごくわたしを助けてくれたのです。
一段落して自由な時間ができたとき、「一緒にアイスクリームを食べよう」と、外に連れ出してくれました。
「迷惑かけて、本当にごめんね。」というわたしに、
「いいんだよ。君にとってここは、見知らぬジャングルのようなものだから。
でも、僕は自分の国だからよくわかる。
だから心配しなくてもいいんだよ。」と言ってくれたのです。

この言葉と経験がわたしの記憶に深く刻まれているから、逆の立場になったときには、
できるだけのことをしようと思うのかもしれません。
もちろん、自分に無理がかからないように気をつけながら。

もうひとつ、すごく助けてもらった経験の中で、
「この人は、わたしに何かをしてもらうことを期待してやってくれているのではない」
と思ったことがあります。仕事の上司などが、そうです。
「直接恩返しをすることはできそうにないけど、受けた恩は、誰か他の人に渡していこう」
と、思うのです。

恩を渡していくこと、恩送りとも言います。

人はひとりで生きていないこと、そしてみんなつながって生きていることを
感じられるときでもあります。

そして優しさは、ぐるぐるとめぐっていくのです。

いろいろなつながりの中で生きていることに、ありがとうございます。


(今日の、その瞬間だけの空の色。毎日見ても、同じ色の空はありません)


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