太極とは、すべての源

2015.11.30 Monday



太極拳という言葉は誰でも知っていますが、太極の意味は意外と知られていないと思います。

この言葉は、「太極拳経」の最初に出てきます。

太極者、無極而生、動静之機、陰陽之母也。

太極の者は無極(何もない状態)より生まれ、動き出し、もしくは要素が
発生するきっかけを与えるもので、陰陽の母である。
(参考:「太極拳経解釈 至虚への道」楊進 著 2009年 二玄社))

ちょっとわかりにくいのですが、太極とは、陰陽という二極に分かれた状態ではありません。
日本語だと紛らわしいですが、”対極”とは違います。

陰陽に分かれる前、動き出す前のまだ混沌とした状態のことを指します。

それは太極拳の套路にも表れています。
太極拳にはさまざまな流派がありますが、最初の動きは同じです。
直立した状態から、足を横に開く動作です。
これは無極(混沌)という状態から、陰陽の二極に分ける、という意味があります。

すべてのものは、二極から成り立ちます。
質が違うけれども、お互いが補完しあって成り立っているもの、です。
人が生きる世界は、天地。
人は、精子と卵子によって生まれますし、生まれたら呼吸(吸う、吐く)し、
心臓は同じリズムで鼓動します。どちらかに行きすぎることはありません。

太極図と呼ばれているのが、冒頭の写真の図です。
静止しているのではなく、ぐるぐる右回りに動いている、と言われています。
黒(陽)が大きくなりすぎる前に、白(陰)が力を増し、白が大きくなりすぎる前に
黒が力を増してきます。
さらに、黒(陽)の中に白、白(陰)の中に黒があるように、はっきりと分けきれるものではありません。

現実でも同じです
男性でも女性性を持ちますし、女性にも男性性があります。
血液は動脈、静脈にわかれますが、別々の経路で流れているものではなく、もとは同じものです。

静功と言われる站椿功(立禅)も、見方を変えるとすごく動いています。
立つこと自体、重力とは逆の上に伸びる力を使います。
2本足で立つことは、どうしても不安定になるため、微妙に体を動かしてバランスを取ろうとします。
風に吹かれれば、その方向からの力ともバランスを取ろうとします。
そして、体の中は動いています。呼吸は続きますし、血液は流れています。

辞書によると、太極とは、「中国哲学において、すべての物の実在を規定する唯一の根源をいう。
(中略)太極は、宇宙または個々の物の本体、つまり存在ならびに主体の唯一の真理である」
(「ブリタニカ国際大百科事典」より)と書かれています。

太極は、すべての源であり、陰陽の要素や質を持つけれども、陰陽という二極とは状態が違う
ということかな、と、今は理解しています。

自分と他人、分かれているように見えるけれども、実はみんなひとつ。
他人と衝突するとき、逆に惹かれるときにも、相手の中に自分の要素を見ていることも多くあります。

2011年、中国の武当山でのお稽古の最終日、師匠だった田理阳師父(武当玄武派第十五代継承者)に、
「あなたには太極の心がある」と言っていただいたことがあります。
そのときから、”太極の心”の意味をずっと考えています。
ある、と言うのは、それを考え続けることでもあり、忘れずに大切にしなさい、
という意味でもあると思っています。

今でも「わかった」と思っているわけではなく、これからもずっと考え続けるのだと思います。

今の理解でしかありませんが、元はひとつ(源)ですべてを含み、それは混沌としていると
ちゃんと腑に落ちれば、
わたしがだめで他人が良い、とか、他人がだめでわたしが良いとか、そんな区別をすることも
なくなり、もっと平和な世界が広がるのかな、と思っています。

わたしの日常は、まだまだどちらかに行きすぎたり、分断されていたりするので、
まずは自分から。自覚するところからですね。


(中国、武当山。世界遺産、紫霄宮(ししょうきゅう)を上から眺めたところ)

太極拳とは、自分の感覚を育てること

2015.11.29 Sunday


(站椿功 (站功、立禅))

「太極拳経」という文献があります。
1852年に発見され、それが太極拳という名前の由来になったと言われています。

最近、「太極拳経」の解説をしている本を読みました。
(「太極拳経解釈 至虚への道」楊進 著 2009年 二玄社)

わかりやすい本ですが、深いところもたくさんあるので、またゆっくり読んでいこうと
思っていますが、まず印象に残ったのは、太極拳とは己を知ること、という点です。

「太極拳のすばらしいところは、相手よりも先にまず自分自身と向き合うこと、
自分の心で自分の身体と対話することです(P.74−75)。」

実際、わたしの中国の師匠たちは、「感覚」という言葉を良く使います。
「こうすると感覚が違うでしょ」とか、「感覚がいい」とか。
太極拳の特徴のひとつは、観察する感覚を育てていくことだと思います。

ひとつの例は、站椿功(站功、立禅)です。
上記の本の中でも説明されていることですが、立つ、ということは、
重力に対して逆の力を働かせています。でも普通は、逆の力を働かせている意識はなく
無意識に立っています。

以前、上着を着るという動作を、ゆっくり観察してみたことがあります。
普段は無意識にやっている動作を、どこの筋肉が最初に動くか、次はどこか、
観察していくのです。わたしの場合、どうやったら着れるのか一瞬わからなくなりました(笑)。
それくらい体は複雑に動いているのに、通常は無意識でその動作をしているのです。

習慣で無意識にできる動作があることも、熱いものを触ったら手を離すなどの反射的な
動作も、それができることはすごいことだと思います。
でも逆に言えば、無意識にしていることを意識できるようになれば、今までとは
違う可能性が開く、とも言えます。

感覚だけは、誰からも教わることはできません。
自分の体で体験して、観察して、自分でつかんでいくしかありません。

站椿功は、ひたすら立つだけです。
わたしの場合、最初はわけもわからず、腕が痛くなるのに耐えながら、でした。
苦行が良いとはちっとも思わないのですが、このときは「今、これが必要な気がする」
と思って、とにかく30分、1時間、ひたすらやる、と決めたのです。
やりはじめてどのくらいたったか忘れましたが、樹を抱えるように丸くした腕の内側で、
何かがぐるぐる回る感覚を得たのが、最初です。

緊張が強かったわたしの体は、立ち続けることで、
立つために必要ない緊張を観察しながら、ひとつずつ抜いていきました。

続けるうちに、大地から力をもらって”立たされている”感覚も感じるようになりました。
物理的にはこれが、立つために不要な力が抜けて、
重力と同じだけの力が反対方向に働いている状態なのだと思うのですが、
そんな理屈より、その状態を感じている自分の感覚の方が大切です。

それまで「ひとりで立たないといけない」と、どこかで気を張っていたような気がします。
でも、そんな自分も小さく思えました。
自分だけで頑張ることを手放したら、こんなに助けてもらえるのに。
立たせてもらっているけど、自分という軸を失っているわけではないのです。

軸を失わない、というのは、太極拳をするときにも大切なポイントになります。
人との関係性においても、同じです。

自分の体を観察することで育てた感覚を使って、相手を観察します。
無意識にやる動作を意識していくことで、自分の動きも細かくコントロールできるようになります。
わたしの師匠たちが、相手が攻撃を仕掛ける前に素早く察知するのは、
この観察力と、自分の動きをコントロールできる力だと思うのです。
(ちなみに、フェイントをかけても騙されません。見破られます。)

武当太極拳の背景にある道教が大切にしているものは、「調和」です。
争わないこと、共存することです。
それには、相手を知ることも大切です。
でもその前には、まず己を知ること。
そこからいろんな可能性が広がると思っています。

この道は、まだまだ続きます。
やっていると、まだまだわからないことだらけだと気づきます。
同時に、自分の体ひとつあれば一生飽きずに遊べる、と、よく思います。
この先、まだまだ楽しみです。
来年、5年後、どんな感覚が育っているのかしらね。




 

【講座のお知らせ】みんみんの青空太極拳教室(12〜1月 代々木公園)

2015.11.24 Tuesday



緑いっぱいの代々木公園での、青空太極拳教室です。

青空の下、風を感じながらの太極拳は、また格別です。
はじめての方も、経験者の方も、ご参加をお待ちしています。

☆日時: (注:雨天の場合、お天気に準じて静かにお休みです)
12月6日(日)10時〜12時
12月20日(日)10時〜12時
12月27日(日)10時〜12時

1月9日(土)10時〜12時
1月17日(日)10時〜12時
1月31日(日)10時〜12時

☆場所:
代々木公園 
※待ち合わせ場所は、南門です。
代々木公園駅(地下鉄千代田線)、代々木八幡駅(小田急線)よりですが、
原宿(JR)からいらっしゃる場合は、バラ園を通り過ぎて噴水を右手に見て進むと、
南門に着きます。

☆参加費:2500円(1回)

☆内容:
基本功、気功、呼吸、武当太極拳(はじめての武当太極拳)など
(「はじめての武当太極拳」画像はこちらからhttp://youtu.be/DLACoQ-bLHs 

☆服装:
動きやすい服(ストレッチのきいたトレーニングパンツなど。寒い場合のために上着もお持ちください。)
靴(上履きのような、底の浅い靴がおすすめです)
※お着替えは、トイレなどで各自お願いします。

☆持ち物:
タオル、飲み物

☆お申し込み方法
メールでご連絡(minminkungfu☆gmail.com (☆を@に変えてください))いただくか、
facebookのイベントページで参加ボタンを押してください。
※お申込みいただいた方には、緊急連絡先をお知らせします。












 

からだは必ず応えてくれる

2015.11.23 Monday


(仆歩 Pūbù)

太極拳をずっとお稽古してきて思うのは、「からだは必ず応えてくれる」ということです。
誰でもそれなりに、やった分だけ結果がくるのです。

生徒さんの中には、武当山には行ってみたいけど、「先生と一緒に練習するなんて、とてもとても」
とおっしゃる方もいらっしゃいます。

躊躇する気持ちは、わかります。
わたしもはじめてのときは、そうでした。

わたしは子供の頃からかけっこが苦手で、そのために”運動音痴”だと思っていました。
そんなわたしが、ひょんなことから中国、武当山の武術学校に1週間行くことになりました。
2008年のことです。

太極拳は、それまで1年ほど習っていました。
知人がやっていたので見学に行ったら、先生が素晴らしかったので、「やる!」と決めたのです。
体の使い方、意識の持ち方、「この先生には、わたしにできないこと、わからないことができる」
と思ったのがきっかけです。
でも自分はというと、1年やってもピンときません。進歩も感じられません。
「なんだか、なあ」という、説明できない感想そのままに、モヤモヤしていました。

そんなときに、当時受けていた講座の先生が武当山の武術学校に行くことになり、その期間に、
友人たちと一緒に、遊びに行ってみることにしました。
「こんな遠いところ、一生で一度、行くか行かないだしね」と。
同じ教室で武術を習っていた人が多かったこともあり、「どうせなら学校でお稽古しよう」となりました。

でも、”運動音痴”のわたし。かつ、太極拳もピンとこないわたし。 
”毎日が体育の授業”のような学校で、ついていけるのか、すごく不安でした。

でも、そこで武当太極拳をはじめて経験したときに、「これ、いい。これをやりたい」と
すごく思ったのです。からだの芯から動く感覚を、わからないなりに実感できたからです。

はじめての武当山体験は、山頂まで登れば翌日は全身筋肉痛、
足首はひねってもいないのに腫れあがったりと、大変なことになりました。
でも、そのときに芽生えたやりたい気持ちと、武当山という山の環境に惹かれて、
今に至っています。

8年の間、いっぺんに何かが起きたわけではなく、亀のように少しずつ道を進んできました。
足首は弱かったので、いつも怪我しないようにケアしていましたし、ヒザを痛めたこともありました。
冒頭の写真のポーズも、最初は足が弱すぎてできませんでした。
でも少しずつ積み重ねていくことで、怪我しない方法も覚えましたし、弱かったところも少しずつ
強くなっていきました。
悩んだことも、回り道をしているような気がした経験も、今みれば全部、財産です。
8年前に比べたら、からだは見違えるほどしっかりしました。
同時に、無駄な力みは抜けて、パワーはつきました。

こんな過程を経てきたから、やった分だけからだは必ず応えてくれる、と言えます。
ただし、結果の現れ方を人と比較すると、同じではありません。
やわらかい人、固い人、集中力がある人、ない人、覚えの早い人、遅い人、など、
人には固体特性があるからです。
以前習っていた先生から「人の成長は、あなたの成長には全く関係ない」という
言葉通りだと思います。

誰でもそれなり、
自分は自分の人生を生きる、
それでよいのだと思います。

「かけっこが遅い」も、人との比較です。
それだけで「運動音痴」と決めたのは、わたしが作った妄想です。
この8年、わたしにも何度も「〇〇だから」という躊躇(=妄想)がやってきました。
でも、でもそのたびにいつも、「やる」という選択をしてきました。

大事なのは、「わたしは〇〇だから」という躊躇で、やりたい気持ちにストップをかけないこと
だと思います。いいなと思ったら、やってみることです。
必ず、からだは応えてくれるんですよ、本当に。


 


ふつうが、いちばん。ふつうが、特別。

2015.11.17 Tuesday


(ミナクル祭りの出演者「みなみん」と握手。豊橋南高校のゆるキャラです)

先日の日曜日は、豊橋の「なかよし太極拳クラブ」の初舞台でした。
ときどきお借りしている施設、ミナクルでの「第1回ミナクル祭り」に出演したのです。

2か月前、イベントがあると聞いた日に、生徒さんのアイディアで出演を即決(笑)。
1年半ほど練習している生徒さん2人に、まだはじめたばかりの2人も加えて、みんなで参加しました。

まずはこのクラブが立ち上がるきっかけとなった「武当太極扇」をふたりが、
それからみんなで「64式武当太極拳」のはじめの部分を披露して、
最後は会場のみなさんと一緒に気功の体験をしました。

まだ新しい施設のため、イベント前は「観客、誰もいないかもね(笑)。」なんて
話していたのですが、とんでもありません。ぎっしり、50人近くいらしたような。。。

音楽の音がでなかったりなどのハプニングもありましたが、それでもみんな、平常心を失わず、
機転もきかせて、落ち着いて最後まで終えることができたことが、何よりも良かったです。
はじめたばかりの生徒さんも、「すごく楽しめた」「無心だった」と、なかなかの大物です。

こんなふうに、太極拳を通じた交流が好きです。好きが広がっていく時間が、好きです。
こんな機会をいただけたことと、生徒さんに、感謝しています。

さて、ちょっと興奮するイベントが終わった後は、お昼寝タイムを経て、午後の練習です。
通常の練習に戻り、64式武当太極拳の続きを練習しました。
新しい動きを、あれこれ探りつつ、「楽しい〜。」

実はこの太極拳、今は仲の良い友人でもある生徒さんと、はじめて話すきっかけになったものなのです。
わたしが中国の武当山で習ってきたこの太極拳を、お見せする機会があったときに、
「すごく良かった。わたしもこれが習えるようになるように、頑張って練習します」と
声をかけてくださったのです。

その方は、今、この太極拳をお稽古しています。

それって、すごいことだと思うのですよ。

さらにすごいこともあります。
太極拳の基本となるような、五行六合功という気功があるのですが、
その方、すごくこれに苦手意識があったのです。「どうにも感覚がつかめない」と。

でも、今回、やってみました。
そうしたら。。。全然違うのです。腕の動きで陰陽の転換を感じるようなものなのですが、
ちゃんと何かを感じているのが、外から見ていてもわかります。
ご本人も「全然違う。いくらでもやっていられる。」

やりたいと思っていたものを、現実にやっていたり、
できないと思っていたものが、気持ちよくできるようになったり。
昔、夢に描いたことは、気がつくと叶っていたりするのですよ。

終わった後、「楽しかったねー。」
朝のイベントが、遠い昔の話に思えました。

特別なイベントも良いですが、わたしにとっては日常が一番。
ふつうの毎日の中で、仲良く楽しくお稽古する時間が、何よりも好きです。

ふつうの毎日には、たくさんの感動や発見があふれています。
ふつうの毎日は、いつでも特別な毎日です。


(中国、武当山の朝)

 


calendar

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      
<< September 2018 >>

selected entries

categories

archives

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM