武当山日記:体を温める

2015.10.05 Monday













(中国、武当山。南天門からの眺め)

今回、中国の先生たちとわたしの、大きく違う点に気づきました。

上着の脱ぎ着の回数が違うのです。

中国の先生たちは、ちょっとでも寒いと、すぐに上着を羽織ります。
それも裏にキルティングがついている、そこそこ温かいものを羽織るのです。

お天気が悪い日は、日中でもかなり肌寒かったのですが、
そんなときは上着を羽織ったまま、お稽古を始めます。
動いて暑くなると脱ぎ、休憩になるとまた羽織るなど、
脱いだり着たりをこまめに繰り返します。

わたしは、と言えば、ちょっと寒いと思いながら
そのままにしてしまうこともありました。
脱いだり着たりの頻度は、極端に少なく、
これでは自分の体を大切にしているとは言えません。
わたしはまだまだ雑なのだなぁと、しみじみ反省しました。

体が温かいことは、健康のバロメータでもあります。
冷え症の赤ちゃん、というのは、ちょっと聞いたことがありません。
これからぐんぐん成長する赤ちゃんは陽気に溢れているため、
体温が高いという考え方があります。
気功や太極拳は陽気を育てるもので、血流を良くして体を温め、
理想的とする赤ちゃんの状態に近づけることで、生命力を強くすると言われています。

温かさを保つために、筋肉量をつける必要もありますし、
体を無駄に緊張させずに動く、ということもあります。
しっかり呼吸することで、横隔膜が動いて、内臓をマッサージする、ということもあります。
リラックスさせるためには、イライラせず、心を落ち着けることも大切です。
これらはすべて、気功や太極拳で実現できます。

でも、冷えてしまった体をあれこれと温めていくよりも、
寒いなら上着を着て冷やさない方が、簡単です。
特に今の季節のように気温差が激しい環境では、体の適応が追いつきません。

筋肉量もあり、体も動かしている先生たちでも、まめに脱ぎ着をするのであれば、
わたしはもっと自分の体に気を配らないといけないと思いました。

上着を羽織るというちょっとしたことを、まめにするかしないかで、
ゆくゆく、大きな違いになってくるのかもしれませんね。


(朝焼け)
 

武当山日記:站功

2015.10.04 Sunday



武当山で毎日する練習のひとつに、站功(Zhàn Gōng)があります。
站椿功(たんとう功)ともいいますし、立禅といえばわかりやすいかもしれません。

動かないため、太極拳などの動功に対して、静功と呼ばれます。

午後の一番最初は、この練習から始まります。
心を落ち着けて、立ちます。
大地に根を張る樹木のように、脚はしっかりと根を張り、
頭は天にむかって伸びていきます。
無駄な力や緊張があれば、取り除いていきます。

形は、冒頭の写真のように、樹木を抱えるように腕を丸くするものが
よく知られているかもしれませんが、腕の位置はいろいろです。

学校では、腕の形を変えていくタイプをやっています。
ひとつの形が約3分、全体では30分くらいです。

腕を横に開いたり、上げたりする姿勢もありますので、筋肉うまく使わないと、
持ちこたえられません。
肩こりになる筋肉、僧帽筋など、肩の上側にある筋肉を使うのではなく、
立つために使われる筋肉で、使っても「使っている=くたびれる」という
意識が薄い筋肉をうまく使います。
具体的には、広背筋という背中にある筋肉の上に、リラックスさせた腕を載せています。















これも中国武術の体の使い方の基本です。
間違えると負荷がかかる姿勢をできるだけ楽に続ける方法を探ることで、
理想的な立ち方、体の使い方を覚えていきます。
同時に、筋トレではありませんが、必要な筋肉を育てることにもなると思っています。

もうひとつ大切なのは、頭を天に向けることです。
立つということは、下に向かう重力と真逆に、上に向かう力を働かせています。
頭を上に向ける意識を持つことで、それを実現します。
この意識が薄いと、ひざに負担をかけて痛める原因にもなりかねませんし、
いざというときに、素早く動くことはできません。

今回から片足立ちポーズも入っていたので、体にもそこそこの負荷も
かかりますし、忍耐力も必要です(わたしは、ですが)。
でも、それがあっても、この站功、気持ちよいのです。



苦しいことが好きなわけではありません。

人は、苦しいことで存在を感じる、という癖があるといいます。
一生懸命にやっていることで、「やっている」安心感を感じる、というものです。
でも中国武術では、実は「やっていない感」が一番なのです。
難しい姿勢を楽にできる方法を探ることは、「やっていない感」を探ることでもあります。
そうやって、時間をかけて自分で探って、解放の方向に向かいます。

わたしの先生はこの站功が好きで、自分の体の中に力を蓄えるためによくやった、
と言っていたことがあります。
だから今でも、お稽古にいれているのだと思います。

探り探り、忍耐力も必要なあたり、わたしはまだまだです。
でも、このときの体の感覚は、うまく言葉にはできませんが、とても良いのものです。
特に山でやっていると、終わったときに目をあけて見える山に
生まれて初めて見るような、すごくフレッシュな感覚を覚えたりします。

そしてこれが、太極拳などの動功をするときのベースにもなっていると、感じます。

この先、続けるうちに、どんな変化が待っているのでしょうね。
 

武当山日記:放松(ファンソン)

2015.10.03 Saturday























9月下旬から約2週間、武当山(中国、湖北省)にお稽古に行っていました。
そのときのお話を書いてみようと思います。

毎日必ずあるお稽古のひとつに、放松(Fàngsōng)と呼ばれるものがあります。
”放松”とは、リラックスと訳されることが多いのですが、
本当に全身リラックスしたら、人は立っていられません。
軸をしっかりさせて、不要な緊張を取り除いてリラックスさせます。

2人一組になって、相手の体を丁寧にほぐすところからはじめます。
上がその写真です。(写真は、今年の5月のものです)

その後、相手の体を押したり、ひっぱたりして、無駄な緊張がないかを確認しながら
放松の状態に導いていきます。
されている側も、自分で無駄な力が入っていないかなど、感覚を確認していきます。

それが下の写真です。

ある意味では、されるがままですが、自分の軸はしっかり持っています。
脚は大地に根をしっかり張り、頭は天に向かって真っすぐ伸びている状態です。





















人に触られることは、それだけで緊張します。
自分の半径60cm以内に人が侵入すると不快に感じると、聞いたこともあります。
ましてや実際に接触していると、そこに意識が向いてしまいます。
他人の動作によって影響されてしまう状態は、自分軸を失っており、
それこそ相手の思うツボです。

そうならないように、自分の軸をしっかり持つことを心がけます。
まず最初の段階のイメージは、草です。
風が吹いたり引っ張られたら、それに応じて動きます。自分で動いたりはしません。
引っ張られているのを離されたら、自然にもとに戻ります。
引っ張られているときに抵抗していると、離されたときに自滅します(笑)。

放松にも段階があって、次の段階のイメージは、どっしりした樹です。
太い幹は、押されてもたいていのことでは動きません。

これが、中国武術の体の使い方の基本だと思っています。

武当山で道路を歩いているとき、先生に横から押されたことがあります。
よろけたわたしに先生が、「太極拳の歩法でしょ」と一言。
ああ、そうか、と。
放松の状態で歩いていると、どっしりしているので、押されてもよろけません。

これ、すごく自己防衛にもなると思うのです。
普通に歩いているとき、悪気がなくてもぶつかられることもあります。
そんなとき、放松ができていれば、自分がつき飛ばされるリスクも少なくなると思うのです。

意識しなくても自然にできるようになるまでには、繰り返しの練習が必要です。
だからかもしれませんが、これは毎日お稽古します。

もうひとつ、自分なりにこのお稽古の意味を感じることがあります。
人に触られることで緊張する、と書きましたが、触る方も同じように緊張したりします。
相手を「別もの」と認識しているからかもしれません。
その意識を変える練習にもなります。
触ったところから相手の体が自分につながっていると感じていきます。

このお稽古をするようになって4年くらいですが、体の反応もだいぶ
変わってきたと思います。自分のプロセスを振り返ってみても、
焦らずゆっくり続けていくことが大事だと感じます。

そしてこれは、頭ではなく、絶対に自分の体で体験して、積み重ねて
いく必要があります。

わたしもまだまだ、発展途上です。
変化を感じていくのも、また楽しいのですよ。

武当山に行ってきます

2015.09.19 Saturday


(中国、武当山)

明日から約2週間、中国の武当山にお稽古に行きます。

6年ほど前から通うようになった武当山、訪問回数が1ダースを超えたところから、
数えるのをやめました。

何度行っても、行く前は緊張します。
この感覚が始まると、行く準備を始めていると感じます。

武当山は、わたしにとっては特別な場所です。
わたしの体と心は、武当山という場所で目覚め、育っていっている気がします。

ここではじめて武当太極拳と出会って、「よくわからないけど、なんだか良い気がする。
やりたい」と思った気持ちが、ずっと今に続いています。

山を走っていて、悲しくないのに涙がぽろぽろこぼれたこともあります。

自分のエゴを思いっきり見せつけられた経験もあります。

エゴだらけの自分に嫌気がさし、絶望的な気持ちにもなりました。
でも、そんなダメな自分でも、
わたしは最後まで自分の味方でいようと、はじめて思えたのもこの場所です。

穏やかな心を持って生きること、

丁寧に生きること、

見えているものよりも、見えていないものの価値を教えてくれたのも、ここです。

自分の居場所を外ではなく、自分の中に持てたのも、ここです。

あげていくと、きりがありません。

誰にでも目覚めていくきっかけがあるとしたら、
わたしの場合は、武当山という小さくて大きな場所が、その入り口になっている気がします。

楽しいことも、苦しいことも、うれしいことも、嫌なこともたくさん経験していますが、
どれも大切な経験です。

最近、なぜわたしが太極拳を選んだのか、なんとなくわかるようになりました。
今回はこの感覚をそのまま持って、武当山で過ごしてみようと思います。

武当山という山への、絶対的な信頼を持って、

行ってきます。

 

「怖い」気持ちに理性で蓋をしないこと

2015.09.14 Monday


(今日の東京、丸ノ内)

二晩続けて、怖い夢を見ました。
あまりに怖くて、目覚めも憂鬱です。

どうしたらよいかわからず、わたしの人生の師匠に電話してみました。
「怖いのに昼間、大丈夫って思いすぎているのかも。
我慢しているとその分、夜にストレスがかかってくるから。」

そして、「今のこの状況では、怖いのは普通でしょ。」

台風とその被害、東京での早朝の地震、今日の阿蘇山の噴火、それに加えて
人身事故も多いような気がします。

それにつられて自分が不安になると、もっと加速させるような気もして、
「大丈夫、大丈夫だからね」と自分にも、地球にも言い聞かせていたと思います。

本当は怖いのに、です。

「大丈夫と思うことも大事だけど、でも怖いんだよね、と、それも認めないとね。」

つまり、我慢しすぎだったのかもしれません。

わたしはこんな風に、自分の気持ちに蓋をしてしまうことがあります。
理性で蓋をするのです。
たとえば、誰かに連絡してお返事がない場合、
近い人だと状況を知っているので、「今、忙しいからね」と、返事がない理由を
理性で言い訳して、本当の自分の気持ちに蓋をしてしまいます。
本当は、お返事がほしいのに、です。

その話を師匠に話したら、
「そういうときは、お返事がほしいの、ほしいのって、言ってみればいいのよ(笑)。」

ちいさな我慢も、たまると爆発します。
わたしがこれでご迷惑をおかけした人は、たくさんいるはずです(ごめんなさい)。

環境や状況が荒れ気味だったら、怖いのはふつうのことです。
でも、それに必要以上に持っていかれて、自分の軸まで崩れてしまわないように、
せめて自分の中では平和で穏やかな環境を保とう、と心がけます。それでも、怖いです。

怖い中にもうれしいことや幸せなことは起こります。それも事実です。
今朝は、聴覚障碍者の方への太極拳教室で、生徒さんがとても上手に、「呼吸で動きをリードする」
をやっていらして、「いいなあ、上手だなあ」と思って見ていました。とても幸せな時間でした。

わたしが太極拳をするとき、一番大事にしているのが、心を穏やかにすることです。
そして、自分のバランスをととのえて、自分と周りとの調和をとっていくことです。

それはきっと、ちょっとバランスを崩すとすぐに外の環境に自分の軸を持っていかれてしまうから
だと思うのです。自分の軸を、しなやかに強く保つための手段として、太極拳をする、ということを
選んでいるような気がします。

穏やかな人が一人いると、10万人が救われる、という話を聞いたことがあります。
音が振動で伝わっていくように、人の気も波動のように伝わっていくと感じます。
平和を願うなら、自然災害は止められないとしても、被害ができるだけ小さくすむように、と願うなら、
まずは自分が平和を保つようにしよう、と思っています。
だから、わたしにとって、太極拳をすることは、祈ることでもあると思っています。

外界で嵐が起きても、自分の心の中まで荒らすことはできません。
心が荒れるとしたら、それは自分が選んでいるだけです。
「怖くない、大丈夫」と我慢することも、実は心を荒らしている場合もあると、思います。

災害等で被害にあわれた方々に、お見舞いを申し上げます。
鎮まっていくことを、心から祈っています。
 


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