重いと軽いは、同時にある

2020.07.18 Saturday

 

(武当丹剣)Photo by Xie Okajima

 

重いと軽いって、逆の概念ですよね。

 

何かを手に持つとき、どっちかになりますよね。このふたつが同時に存在することはないと思うのは、ふつうかもしれません。

 

でも、あるのです。そして実は、そちらが真実なのかもしれない、と思っています。

 

重いと軽いが同時に存在するのは、太極拳をの体感です。

 

お稽古の中に、放松(ファンソン)功というものがあります。ペアになり、ひとりが立ち、もう一人が立っている人をあちこち押したり、ひっぱったりします。どこから押されても倒れない体になっているかどうかを、確認していきます。

 

(放松功)

 

もし倒れたら、体に無駄な緊張があることになります。(もしこれが攻防であれば、緊張している部分が、その人の弱点です。)

 

倒れないことは、重い、とも言えます。足で地面を押して立つことは、地面に根をはるようなもので、どっしりしている感覚もあります。

 

でも同時に、体はふわりと浮いている感じがします。

 

広い宇宙に、ふわっと浮いているような感じです。(浮いたこと、ありませんが、なんとなくそう思います)。

 

もうちょっと現実的なところで言えば、海にぷかっと浮いて、浮力が効いている感じです。

 

なぜでしょうか。

 

足で地面を押すことで、頭が天に向かって伸びて、縦に伸びる力が生み出されます。頭を上から押してもつぶれませんし、肩をぐっと押しても、つぶれません。


立っているときだけではなく、腰を落としても同じです(コツは、あります。)

 

上に伸びる力が働いていると、例えば足を踏み出すにしても、滞空時間が長くなりますし、地面に着くときも、ごんっと落ちることはなく、ふんわり着地します。

 

自分の意識と、体の使い方ひとつで、日常生活の空間を、浮力が効いている場所に変えることができます。

 

面白いでしょ。

 

太極拳の動きがゆっくりなのは、いろいろ理由はありますが、ゆっくりしようとしなくても、自然とそうなる面も大きいのです。地上で歩くときよりも、水中で歩くときの方がゆっくりになりますよね。あんな感じです。

 

これだと、ひざに負担はかかりませんし、体の関節の隙間が空いていくことで、ゆとりも生まれます。ゆとりある体の中では、血も流れやすくなり、血が流れれば体温もあがります。体温があるのは、生命力がある証拠でもあります。

 

太極拳をする人の体は、20年たっても同じ体と言うのは、このためです。老化をゆったりスピードにすることができる、と言えばいいかしらね。

 

(左:太極拳の体の使い方をしている人。右:無駄な緊張があって、上から押されたらつぶれてしまう人)

 

今から9年くらい前、先生の套路の動画を見たときに、「なぜ、こんなに軽々としているんだろう」と思ったことがあります。

 

先生の体重は、85キロとか、90キロとかです。重たいですよね。

 

でも高いところから飛び降りて着地しても、足音があまりしません。わたしの足音の方が、大きかったのです。あれも、今から8年くらい前のことです。

 

ずっと「なんでだろう?」と思っていたのですが、ずっと後になってから、「そうか、浮力が効いてるのと同じことなんだ」と気づきました。

 

体の大きな人、体重がある人でも、普段歩く姿に、重たさを感じません。もちろん横から押されても倒れにくいのですが、それは体重があるからではありません。


逆に軽くても、ぺったんぺったん、音をたてて歩く人、いますよね。(昔の、わたしです。足音でわかる、と言われていました。)

 

陰と陽で見るなら、陰が下向き、陽が上向きですから、陰が重い、陽が軽い、です。

 

陰と陽は、ふたつでペアです。片方だけでは存在しないなら、両方が同時に存在することの方が、自然に思えてきます。

 

太陽と月(太陽が陽、月が陰)も、空に見える時間は違いますが、1日の中では両方ありますし、地球レベルで見たら、日本に太陽が出ているとき、ブラジルには月が見えますよね。時間と空間を広げて考えたら、両方が同時に存在します。

 

命も、同じだと思います。

 

命というと、生きることだと思いますよね。でもそれは、丸いものの半分しか見ていないのではないでしょうか。

 

宮崎駿監督の「もののけ姫」には、命は、生と死と、ふたつ持っている、というセリフが出てきます。山犬に育てられた少女、サンが「シシ神さまが死んでしまった」と嘆いたときに、アシタカが言ったセリフです。

 

この世という見える世界で見たときには、死を迎えて無くなったように見えても、命としてはある、と言えばいいのかしら。

 

道教の修行者たちが言う「不老不死」も、同じことだと感じています。

 

昔はわたしも、「不老不死はあり得ないから、不老長寿だ」と言い換えていたのですが、今は、そのまま不老不死だと思っています。

 

命は、生と死と、両方あるからです。

 

この世が陽の世界なら、あの世が陰の世界です。

 

太極拳は陽気を養うもの、と言うことがありますが、それは陽の世界で生きていくためのエネルギー源のようなものです。でも、陽気を養うためには、陰気も必要です。

 

イメージでいうなら、陰がベースで、陽はその上に自然に育ちます。根(陰)がない草に、花(陽)は咲きません。

 

行動する(陽)ためには、しっかり寝ること(陰)が必要です。陰が足りていれば、自然と体が動き始めます。

 

心が弱っている人に、「がんばれ」と言ってはいけないのは、休みが必要な人(陰が必要な状態)に、行動しろ(陽)というのは、無理な話だからだと思っています。

 

休みがたっぷり足りている人には、「がんばれ!」でいいですよね。自然に動くのですから、もう他人が言う必要もないですけどね。

 

命を見るとき、この世で見えているのは、「生」です。でもそれは、見えていない「死」という基盤の上に、成り立っている気がします。

 

「もののけ姫」で見るなら、「シシ神さまは、花さか爺さんだったんだな」という言葉どおり、シシ神さまが死んだとき、野山には春が来たように樹木が目覚めて、花が咲きます。すごく好きなシーンです。ここで流れている音楽が、またよくて、何度観ても泣けます。

 

生命の循環で考えても、映画の「ライオンキング」に出てきたように、アンテロープを食べるライオンが死ぬと、土に還って、アンテロープが食べる草の栄養になります。死は終わりではなく、生を育みます。

 

太極拳の太極は、宇宙の根源とか、すべてのひとつの源であって、陰と陽の両方が含まれています。この世では、陰と陽は質が異なり別々に存在して、お互いを補完しあいますが、太極の状態では、陰と陽は、まだ二つに分かれてません。分かれていないから、調和しています。

 

人も、個として存在しているように見えても、本当はつながっている、とよく言いますよね。それも、太極の領域の話だと思っています。

 

太極拳は、不調和もあるこの世で、もともとは調和していることを信じて、それを取り戻す技だと思っています。


不調和があるのがダメなのではなく、それを経験するから、調和の大切さがわかりますし、


不調和を経験しながら生きることが、この世で生きることのような気がします。

 

太極拳で、体の無駄な緊張が取れて、心が静かで深い状態に入っていくと、意識はしっかりしていながら、夢を見ているような、ふんわりした感じになります。

 

天と地と繋がって、意識が広くなっていくと、日常の小さな問題が、取るに足らないことに思えてきたりします。そして、もっと大事なことを思い出します。

 

この世にいながら、あの世にも行っているような感じだと思うのです。

 

昔は「そんな状態になったら死んでしまう」と本気で思っていたので、よく「太極拳をするときは、この世には存在しない太極という状態に、ちょんっと触れに行く感じ」と、表現していました。足を踏み入れることを認めたくなかったのです。過去のブログにも、たぶんそう書いているものがあると思います。笑っちゃうくらい、わかりやすく正直です。

 

でも、そんなことないのだと、去年の終わりごろから思うようになりました。

 

なんとなくですが、体が弱いと、そのまま持っていかれてしまうこともある気がします。そうならないように、体をこの世につなぎとめておくために、まず体をしっかり育てるのだと思っています。

 

そうすれば、意識が広がって「あの世」の領域に行ったとしても、ちゃんと「この世」に足をつけて生き続けられます。

 

「あの世」の領域に足を踏み入れると、「この世」でやろうとしていることを思い出すと、感じます。生まれる前に、神さまとした約束を思い出す、ともいえるのかしら。

 

神さま(としか言えないので、とりあえずそう言っておきますが、特定の宗教の話をしているわけではありません)が願っていることを、この世で形にする、とも言えるかもしれません。

 

「見えるものに騙されない」(2016年2月2日)で書いたように、見えるものよりも、感覚を信じて、見えないものを大切にしてきてきましたが、

 

見えないものを感じるようになったら、見えるものの意味も、分かってきたような気がします。

 

この世では、見えるものにすることで、伝えることができるからです。その手段として、それぞれ選ぶのではないのかしらね。体を使って表現したり、ことばや文学や絵や音楽で表現したり、映画も、そうですよね。

 

だから、以前とは違う意味で、見えるものも大切だと思うようになりました。

 

重い、軽い、のように、「白か、黒か」みたいな議論は、よくあると思います。わたしも10年前までは、「白か、黒か、どっちかしかない」と思っていました。

 

そんなわたしに、「ほとんどものもは、グレーだよ。ある瞬間は白で、次の瞬間は黒だったり。同じ人でも、好きだけど嫌いということも、あるでしょう?」と言ってくれた人がいました。

 

その言葉をすぐに素直に受け入れられなかったあの頃は、いろいろと苦しい時期でした。一生懸命だったのですけどね。

 

それを言ってくれた方と、最近お話をすることがあって、「この世にいながら、あの世に行くことが、怖いと思わなくなった」と話したら、「そんなことしたら、死ぬって思っていたものね」と笑って聞いてくださいました。

 

そして、「これからも、大変なことがないわけではないけど、あんなに苦しいことは、もうないよ」と言ってくださいました。たぶん、そうだろうと、思います。

 

この世で生きるとは、いろいろありますが、「生」がある限りは、体という形を満喫して、見える形で表現したり生み出したりして、精いっぱい生きようと思います。

 

 

この話は、書いてみたら、「続きを、そのうち書きます」と言っていた、下記の2つのお話の続きになりました。

「境界で生きる」(2020年6月10日)

「形あるものは壊れるけれど」(2020年7月14日)

 

今日は、これが書けて、なんだかしあわせです。

 

 

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「陽だまり」とは

「陽だまり」のイメージは、縁側にのんびり座り、暖かいお日様の光が射しこみ、ぬくぬく、まどろむような時間と空間です。縁側は、なくても生活できますが、あると居心地が良く、今、とても失われている”あそび”や”ゆとり”だと思うのです。モノも置かれておらず、いつもキレイで、りん、とした印象もあります。人が集って、一緒にお茶でも飲んでなにげない話をして、ほっとする場所でもあります。太極拳を通して、陽だまりのような場を創っていきたいと思っています。

 

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いしい まゆみ(道号:静慧)/ みんみん)

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