人種を越えるもの

2020.07.08 Wednesday

 

(中国、武当山にある太子洞)

 

7月7日のNHK「アナザーストーリーズ」は、「マンデラとゆるし」というタイトルで、南アフリカの英雄ネルソン・マンデラ氏を取り上げたものでした。

 

反アパルトヘイト闘争で投獄されていたマンデラ氏は、27年間の投獄生活から釈放された最初のスピーチで、白人にも、共に新しい国をつくろう、と呼びかけ、多くの人を驚かせます。

 

その背景にある理由を、探る内容でした。

 

最初に紹介された印象的なエピソードは、白人看守との関係です。看守と囚人という関係から、だんだん信頼を築き、最後は親友と呼ぶ間柄になるまでの、さまざまな出来事が紹介されました。

 

たとえば、マンデラ氏の奥さんが、生まれたばかりの赤ちゃんを「会わせたい」と連れてきたときです。規則では禁止されていたのですが、奥さんは「どうしても」と引き下がりません。規則に反すれば看守の身も危うくなります。看守は智慧を働かせ、「黒人の赤ちゃんを抱っこしたことがないから、ちょっと抱っこさせて」と言い、そのままマンデラ氏の元に向かいます。

 

マンデラ氏は、赤ちゃんを抱っこして、アフリカの言葉で話しかけ、涙を流したそうです。

 

他にも、この看守の機転は、マンデラ氏の釈放に向けての動きにも、大きく関係したようです。

 

偶然の引き合わせかもしれませんが、きっとそれだけではなく、このふたりの、人としての心が、いろんなことを動かしていったのかもしれないと思うと、ただ、じんとします。

 

どんな時代、どんな状況でも、こういう人たちがいることは、救いになります。

人と人との関係は、人種の壁も越える力があるのだと思えるからです。

 

アパルトヘイトの時代、わたしはイギリスの大学の寮に住んでいたときがありました。

 

ときどき買うグレープフルーツを、同級生のアメリカ人が「どこ産?」と聞いてきました。何も考えずに買っていたわたしは、ラベルを確認しなければわかりませんでした。

 

「南アフリカだよ」と答えると、彼女は「わたしは南アフリカ産のものは、買わないの」と、にこっと笑いながら、言いました。

 

直接の関係者ではなくても、不買運動で反対の意思を示すことに、驚いて、それから日本に帰国した後も、南アフリカ産のグレープフルーツを買うことは、やめました。

 

大学生を大人と言えるのかどうかわかりませんが、ぼんやり生きてきたわたしは、知らないことばかりでした。

 

その後、アパルトヘイトの制度が撤廃されたとニュースで知り、ささやかな不買運動も終わりました。

 

「そうなのか。すごいな、よかったな」と思った後、特にその国の状況に思いを寄せることは、ありませんでした。

 

2010年、仕事で南アフリカに行く機会がありました。移動は送迎がつき、ホテルには1階ごとに、ものすごく屈強そうなガードマンが立ち、自由にちょっと外に買い物に行くなどとんでもない状況で、

 

現地の人とのふれあいと言えば、通訳についてくれた学生さんだけで、それも忙しすぎて、ほとんど私的な話をする時間もなく、この国は「危ないのだ」ということ以外、どんな国なのか、わからないまま、帰国しました。

 

南アフリカでは、今でも人種間の争いが絶えないのだそうです。

 

ぼんやり生きていた20代の頃から、だいぶ年月が経っても、いまだにわたしは、知らないことばかりなのだと、思い知らされます。

 

 

海外に出ると、日本人というアイデンティティの一部を、強く感じることもあります。

 

真珠湾攻撃の日(日本は12月8日、ハワイは12月7日)には、「今日は、まゆみが戦闘機に乗ってやってくる」とからかわれたこともありました。どんな顔をしたらいいのかわからず、何も言えませんでした。

 

アメリカ人同士で「ジャップ」と言っているときに、偶然わたしが通りかかり、「あ、ごめんね」と言われたこともあります。差別用語ですが、日常的に使うんだな、と感じました。

 

中国の仲のいい友達でも、対日勝戦記念日(日本は、終戦記念日です)には、SNSに「〇周年万歳!」という投稿をあげたりします。

 

そういう場面に出会うたびに、複雑な思いがします。「わたしがしたことではない」と思いながらも、それは、わたしの一部です。少なくとも、外から見たときには。

 

あるとき、ある中国人の友人が、秦の皇帝の「日本人とは...」という発言をのせていました。ばかにするような言葉だったため、「どうしてこれをのせるんだろう」と思って、「?」というコメントを付けてみました。

 

すばやく「きみのことじゃないよ!」とメッセージが送られてきて、すぐに投稿は削除されました。

 

日本人への一般的な感情や対応と、わたし個人へのそれは違うのだと、感じました。

 

それを感じることは、よくあります。その経験があるから、ちょっと何かあっても、「それは、今は仕方ない」と流せるのかもしれません。もちろん、決定的にひどい差別を受けたわけではない、ということも大きいと思いますが。

 

外から見えるもの、国籍や人種の場合、差別の対象になることもあれば、日本のように、行きたい国には行ける自由度が高いメリットもあり、悪いこともあれば、いいこともあります。

 

歴史や国同士の関係、人種などからくる感情は、すぐにはどうしようもないことも、あると思います。でも、自分を超えるものは、「今は、仕方ない」と思ったりもします。

 

それとは別に、個人として、関係を築いていくこともできます。

 

日本は小さな国なので、海外に行くと「日本人とちゃんと話すのは、人生で初めて」という人にも、出会います。関わる深さや長さにかかわらず、ひとりの人として、ふつうに付き合うだけで、長い間に、何かが変わっていくのかもしれません。

 

でも実際には、違う文化と背景を持つ人たちに、たくさん教えられて、助けられてきたことも、多いのですけどね。日本は、そう思われているんだ、そうみられているんだ、ということも含めて、です。本当に困ったことがなから、言えるだけかもしれませんが。

 

話を番組に戻すと、マンデラ氏のスピーチの背景には、投獄中、各国のたくさんの歴史書を読んでいたことも、関係しているそうです。

 

投獄前のマンデラ氏は、かなり短気で、すぐ相手の胸ぐらをつかむような、血気盛んな人だったようです。投獄中にたくさんの歴史書を読んで、海外のさまざまな事例を学ぶうちに、憎しみや恨みは、破壊を生むだけだという思いに至った、という話がありました。

 

27年間の投獄生活があったからこそも、あるのかもしれません。

 

同じ経験をしたらみんながそうなるわけでもなく、やはりそれは、この人だったからなのでしょうけれど、どんな経験でも、自分次第だという点は、誰にとっても共通のように思えます。

 

あきらめないこと、なのかしらね。何を、と、ひとことで言うのは難しいのですが、自分の望む人生を生きること、なのかな。

 

 

最後に、こういう話のときに、いつも思い出すことがあります。


中国の武当山に行くと、太子洞という洞窟に住むおじいちゃん道士に会いに行きます。洞窟にある祭壇をずっと守っていて、ここに住む人たちみんなに、とても尊敬されています。有名人で、日本のテレビ番組でも”仙人”として紹介されたりします。

 

悩んでいる人が訪ねてきて、ひとしきり話をして、泣き崩れてしまうこともあります。

 

あるとき訪ねていくと、先にいたお客さんがわたしを見て「韓国人?」と聞いてきました。おじいちゃんは「仲良しの日本人だよ」と。


「似てるよね」という先客に、わたしが「韓国人と日本人は、似てるけど違うよ。」と言うと、おじいちゃんがわたしの手を取って「指が1本、2本、3本、4本、5本、みーんな、おーんなじ」と言って、にこっ。

 

その場にいたみんなが、「そうそう、そうだよね」と大笑いしました。

 

こういう人には、みんなが救われます。

 

ちょっとでも、こんな人でいたいな、なりたいな、と思います。

 

(太子洞の贾(Jia)おじいちゃん)

 

 

【おうちで過ごそう!応援企画】

すきま時間にできる、カンタン体操を動画でご紹介しています。リフレッシュにも。こちらから。

 

 

オンラインでの動画レッスン始めました。
 
≪入門編≫
  立ち方、歩き方の≪基本編 ≫と、太極拳の動作の練習としてもおすすめの≪武当五行六合功編≫のセットです。詳しくは
こちら
 
≪武当太極拳編≫
  武当三十六式太極拳をいくつかに分けてご紹介します。「その1」は、
  第1式〜第10式です。詳しくは
こちら
 
≪立ち方編≫
  地に足をつけて、自分らしく生きるための基盤を作ります。≪入門編≫の「基本編」第1講の単発講座。太極拳をしない方にも。詳しくは
こちら

 

 

【7月の特別クラス】

 7月11日(土)14:00-16:30  「やさしい站椿功」(池尻大橋)詳細とお申込み方法はこちら

 

  7月12日(日)14:30-16:30はじめての形意拳」(九品仏)詳細とお申込方法はこちら

 

  7月19日(日)14:00-16:30「たのしい太極扇」(九品仏)詳細とお申込み方法はこちら

 

  7月25日(土)14:00-16:30 「ホントにはじめての武当太極拳・気功(九品仏)詳細とお申込方法はこちら

 

 

「陽だまり」とは

「陽だまり」のイメージは、縁側にのんびり座り、暖かいお日様の光が射しこみ、ぬくぬく、まどろむような時間と空間です。縁側は、なくても生活できますが、あると居心地が良く、今、とても失われている”あそび”や”ゆとり”だと思うのです。モノも置かれておらず、いつもキレイで、りん、とした印象もあります。人が集って、一緒にお茶でも飲んでなにげない話をして、ほっとする場所でもあります。太極拳を通して、陽だまりのような場を創っていきたいと思っています。

 

...☆...☆...☆...☆...☆...☆...☆...☆...☆...

 

いしい まゆみ(道号:静慧)/ みんみん)

太極道家

講座のご案内は、こちらから


0
    コメント
    コメントする








       

    calendar

    S M T W T F S
          1
    2345678
    9101112131415
    16171819202122
    23242526272829
    3031     
    << August 2020 >>

    selected entries

    categories

    archives

    links

    profile

    search this site.

    others

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM