恩師の訃報

2020.05.21 Thursday

 

(武当丹剣)Photo by Xie Okajima

 

わたしには、「この人に会っていなかったら、太極拳を始めていなかった」という恩師がいます。

 

相良孝美先生、といいます。

 

先生に出会ったのは、2006年の7月15日でした。

 

知り合いの女性の、話しているときの身振り手振りが美しくて、「この人、何をやっているのかなあ」と思っていたら、「わたし、太極拳を習っているの」と。

 

「体験できるよ」というので、「ならば!」と参加してみました。

 

この日まで、太極拳をやりたいと思ったことは、ありませんでした。

 

初めての参加は、普段お稽古しているみなさんの中に入れてもらって、自分の体を感じていったり、わけもわからず太極拳の動きを真似してみたり、

 

さっぱり、でしたが、

 

「この先生、すごい!」と思ったのです。

 

何がすごいって、「わたしにできないことができて、わたしにわからないことがわかる。」です。

 

まず、手のひらがおさかなが泳ぐようにゆらゆらと動くのです。すっごい関節の柔らかさです。

 

そして、これはどうしてそう感じたのかわかりませんが、「この人の意識は、ホントに地球の裏側まで届く」と感じたのです。

 

「絶対、習う!」と、月3回のお稽古に通い始めました。

 

途中、半年くらいフィトセラピー(植物療法)の学校に通っていた時期を抜かして、2009年の4月まで、約2年間教えていただきました。

 

でもその間、わたしは、と言えば、さっぱりでした。

 

やめようと思ったことはありませんでしたが、太極拳を覚えるのも大変ですし、やっていても「はて?」みたいな感じでした。続けていたのは、「先生は、すごい」と、ずっと思っていたからです。最初の印象だけではなく、習っている間も、その思いは、ずっと更新され続けていました。

 

転機が来たのは、2008年の12月でした。先生の生徒さんだった人で、わたしが別の講座を習っていた方が、中国の武当山に3か月、カンフーのお稽古に行っていて、その機会に「こんな場所、一生に一度、行けるかどうかだから」と、訪ねていくことにしました。

 

「せっかく行くなら、わたしたちも武術学校に入ろう」となり、正直、ものすごく不安でした。

 

一日中、体育の授業が続くみたいなところですよ。足が遅くて、運動神経とは無縁だと思っていたわたしにとって、しかも10代、20代の若人でもなく、「ついていけるのだろうか」と、怖かったです。

 

実際、初日に片道4時間くらいかけて山頂まで登ったとき、ひねっていないのに、足首が腫れてしまったほどでした。わたしの体は、本当に弱かったのです。

 

でも、そのときに習った武当太極拳は、「これ、いい」と思えました。動きがシンプルで、今から思えば、もちろん何一つ出来ていないのですけれども、「なんか、わかる気がする」と思ったのです。「これは、やりたい。」

 

帰国してしばらくは相良先生のクラスにも通っていましたが、そのうちに武当太極拳を教えてくれるクラスが出来て、そちらに行くようになって、相良先生のクラスはやめてしまいました。

 

それから、先生にお会いする機会はありませんでしたが、2年くらい前に、Facebookでつながることができました。

 

わたしが太極拳を続けていることも、「頑張っていますね」と言ってくださり、「わたしの生徒が、あなたのブログを読んでいます」と、恐縮してしまうようなことをおっしゃったり、「ああ、先生は、こういう方だったな」と、しみじみ感じました。

 

それからときどき、投稿にコメントをいただいたり、わたしがコメントしたり、ほんの少しですが、交流がありました。それはとても大切な瞬間でした。

 

そのおかげで、「わたしが太極拳を始めたのは、先生のおかげです」と、伝えることもできました。

 

今は流派が違っても、「この先生、すごい」という、あの瞬間がなければ、始めていなかったと思うのです。感謝しか、ありません。

 

先生の訃報が届いたのは、昨晩でした。わたしを先生に引き合わせてくださった方が、知らせてくださいました。

 

精力的に活躍されているご様子だったので、驚きました。まだ、お若いのです。わたしと、そんなに年齢は変わらなかったと思います。

 

最後の交流は、今年の3月11日、わたしの投稿に、コメントしてくださったときです。ちょっと長いですが、その投稿を、下記に青字で書きました。

 

虹の戦士。

 

アメリカ・インディアンに古くから伝わる言い伝えがあります。

 

地球が病んで
動物たちが 姿を
消しはじめるとき
まさにそのとき
みんなを救うために
虹の戦士たちが
あらわれる。

 

その祈りのことば を
大切にしています。

 

おお父よ、わたしはあなたの声を風のなかに聞き、あなたの息はこの世界中のすべてのものに生命を与えています。

お聞きください。わたしはあなたの前に、あなたのたくさんいる子どもたちのひとりとして、今、立っています。

わたしは小さくて弱く、あなたの力と知恵とを必要としています。どうかわたしを、美のなかに歩ませ、なにどぞこの眼に、赤と紫の夕陽をお見せください。

この両手が、あなたの創られたものを、尊敬させるようにしてください。この耳を、あなたの声が聞こえるように、鋭くしてください。

そうすればきっと、あなたがわたしの一族に与えられた教えを、一枚一枚の木の葉や、ひとつひとつの岩のなかにあなたが隠された教訓を、このわたしも、理解するかもしれません。

父よ、わたしは力を求めています。偉大なる敵と戦うための力ではなく、その力で、汚れのない手と、濁りのない眼をもって、わたし自身があなたのもとを訪れる準備をさせてください。

もしそれがかなうのなら、日没の太陽が姿を消すように、わたしの命が終わりを迎えたとき、いささかも恥じいることなく、わたしのスピリットはあなたのもとを訪れることができるでしょう。

「虹の戦士 Warriers of the Rainbow」翻案 北山 耕平 より引用

 

むかしも今も
東も西も

大切なことは同じだと感じます。

 

目には見えない
多くの人が忘れているかもしれない大切なことを

感じて
いろんな形で地上におろす人たちがいます。

アート 芸術は、そんなものだと思っています。

 

太極拳も アートのひとつだと思っていて

それは 今日のごはんの糧にはならないかもしれないけれど

魂を震わせてくれるもので
希望です。

 

それがなければ わたしの心は死んでしまうかもしれません。

心が死んだら 体も死んでしまうかもしれません。

 

生まれてきたのは、生きるためで
ただ、生きることに意味があります。

 

ごはんを食べて 休んで
体を鍛錬して 心を静めて

自分の命を生きようと 思います。

 

そうしたら 明日もきっと
太陽が昇って 心を照らしてくれます。

 

みんな いつでも愛されていることを
忘れずにいられますように。

 

先生からのコメントは、「素晴らしい言葉です。静かに感動しています。」でした。

 

この言葉が、嬉しくて、わたしも静かに感動していました。

 

これが、最後の直接のやりとりになりました。

 

今から見ると、このときはすでに闘病されていたのかもしれず、それを思うと、また感じるものがあります。

 

 

先生が亡くなった昨晩、わたしは寝る前に、站椿功をしていました。

 

途中、うすい悲しみのような感覚がやってきました。

 

「誰が悲しんでいるのだろう?」と思いました。

 

同時に「泣かないで」という言葉も、浮かんできました。

 

うすい悲しみは、そのまま続いて、涙は出ないと思ったのですが、終わるときに、2粒だけ、ぽとっと、こぼれ落ちました。

 

そのまま寝てしまったのですが、

 

夜中に目が覚めて、ふと携帯を見たら、訃報のお知らせが入っていました。

 

 

今なら、もっと先生から習えたかもしれない、という思いはあります。「これ、教わりたいな」と思っていたこともあります。

 

それを実現させなかったことを、後悔しているわけではありませんが、もっといろいろ話してみたかったし、教わりたかったという思いは、あります。

 

「泣かないで」という言葉が、先生に関係あるのかないのか、わかりませんが、

 

今日は朝から、絞り出すみたいな涙が出て、目がとろけそうです。

 

わたしという人は、出会った人と、過ごした場所と、経験でできている、と思っています。

 

先生との交流は、量としては多くなかったと思いますが、わたしにとっては、その小さな瞬間は、大きくて、大切なものでした。

 

わたしの命がいつまであるのか、それはわかりませんが、最期のときが来るまで、しあわせに、精いっぱい生きようと思います。

 

先生のご冥福を、心からお祈りします。

 

 

オンラインでの動画レッスン始めました。

 

≪入門編≫

立ち方、歩き方の≪基本編 ≫と、太極拳の動作の練習としてもおすすめの≪武当五行六合功編≫のセットです。詳しくはこちら

 

≪武当太極拳編≫

武当三十六式太極拳をいくつかに分けてご紹介します。「その1」は、

第1式〜第10式です。詳しくはこちら

 

≪立ち方編≫

地に足をつけて、自分らしく生きるための基盤を作ります。≪入門編≫の「基本編」第1講の単発講座。太極拳をしない方にも。詳しくはこちら

 

 

【6月の特別クラス】

 ≪新規≫6月 7日(日)10:00-11:30「みんみんの ぽかぽか陽だまり太極拳」(茅ヶ崎)詳細とお申込み方法はこちら

 

6月14日(日)14:00-16:30  「やさしい站椿功」(屋外・代々木公園)詳細とお申込み方法はこちら

 

6月21日(日)14:00-16:30「たのしい太極扇」(池ノ上)詳細とお申込み方法はこちら

 

6月27日(土)13:00-15:00 「麗屋 弘鈴庵の 立って、歩いて、太極拳(千葉県香取市)詳細とお申込方法はこちら

 

6月28日(日)14:30-16:30はじめての形意拳」(池ノ上)詳細とお申込方法はこちら

 

 

「陽だまり」とは

「陽だまり」のイメージは、縁側にのんびり座り、暖かいお日様の光が射しこみ、ぬくぬく、まどろむような時間と空間です。縁側は、なくても生活できますが、あると居心地が良く、今、とても失われている”あそび”や”ゆとり”だと思うのです。モノも置かれておらず、いつもキレイで、りん、とした印象もあります。人が集って、一緒にお茶でも飲んでなにげない話をして、ほっとする場所でもあります。太極拳を通して、陽だまりのような場を創っていきたいと思っています。

 

...☆...☆...☆...☆...☆...☆...☆...☆...☆...

 

いしい まゆみ(道号:静慧)/ みんみん)

太極道家

講座のご案内は、こちらから

 

 


0
    コメント
    コメントする








       

    calendar

    S M T W T F S
          1
    2345678
    9101112131415
    16171819202122
    23242526272829
    3031     
    << August 2020 >>

    selected entries

    categories

    archives

    links

    profile

    search this site.

    others

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM