高く跳ぶために、思いっきり低くかがむのか

2020.05.19 Tuesday

 

(「仆歩」という姿勢)Photo by Xie Okajima

 

高く跳ぶためには、思いっきり低くかがむ、と、よく聞きますよね。

 

人生で苦しいとき、励ますことばでもあります。大きく飛躍する前には、低くかがむことが必要だ、と。

 

でも実際、体でやってみると、思いきり深くかがんでしまうと、体が重たく、跳べなくなりますよね。

 

実は、ぴょんぴょん軽く跳ぶには、かがまないほうが高く跳べます。

 

昔、CMで流行ったマサイ族のジャンプを真似するなら、ひざを曲げず、伸ばしたまま跳び始めるほうが、うまくいきます。

 

ひざを曲げてしまうと、ひざの部分で体が分断され、全身がバネのように使えないからです。

 

違う見方をするなら、全身が分断されず、バネのように使えるなら、高く跳ぶために低くかがむのも、ありです。

 

太極拳は、常に全身をバネの状態にしています。

 

直立するときは、足で地面を押して頭が天に向かうようにして、縦に伸びる力を出します。見た目には静止していても、実際は、ずっと縦に伸び続けています。止まらないのです。

 

そのためか、この立ち方をしている人は、すっとして見えます。体の大きさに関係なく、体重が重かったとしても、ふわっと軽い印象があります。

 

太極拳をするときだけではなく、普段もずっと、この立ち方をしています。

 

縦に伸びるバネが効いていることは、養生のためにも大切です。

 

老化とは、関節の隙間が縮んで、身長が低くなったり、体が硬くなりますよね。一方で縦に伸びるバネが効いている人は、関節の隙間が常に空いて、関節がスムーズに動き、体は緩んでいます。体の中にゆとりもあり、血もスムーズに流れます。血が流れれば体温が上がり、体温が上がれば、生命力につながります。

 

低い姿勢を取るときも、ただ下がるのではなく、バネをきゅっと縦に押しつぶした状態にします。つまり、上から押されてもつぶれません。

 

また、ぎゅっと縮まって力をため込んでいるので、この後、ぴゅんっとバネが戻る力を出すことができます。

 

これが、太極拳やカンフーの低い姿勢です。(注:太極拳は、カンフー(中国武術)のひとつです)

 

力があることも大事ですが、この方法ならひざを痛めないことも、大事な点です。全身に無駄な緊張がないため、体のめぐりも妨げられません。

 

「葉底蔵花」というタイトルのブログでも書いたのですが、力があることは、健康にもいい、という証明になります。

 

 

わたしが、この低い姿勢の強さに気づいたのは、「イップマン」という映画を観たときです。

 

ブルースリーの師匠で、詠春拳の達人だったイップマンは、優しく、家族を愛する人格者としても知られています。

 

映画ではドニー・イェンが演じており、さすがの武術で、格闘技好きの人も楽しめるとは思いますが、それだけではなく、あたたかい人柄がよく描かれていて、「武術をする人の心」を知ることができます。本当に強い人は、優しいのです。(映画のメイキング映像は、こちらから)

 

第3作目の「継承」には、マイク・タイソンとの対決シーンがあります。このときイップマンは、大男のマイク・タイソンの前で、ものすごく低い姿勢を取り、そのまま素早く動きます。

 

びっくりしました。このときに、「低い姿勢は、強いのだ」と気づきました。

 

 

下記の動画は、武当三十六式太極拳の、

第十九式 回頭望月(振り返って月を眺める)

第二十式 海底捞月(海底から月をすくい上げる) です。

 

 

この低い姿勢の状態は、「座胯」と言います。胯というのは、股関節とか、骨盤のことです。英語だとヒップに当たります。

 

「胯に座る」とは、しゃがむこととは違います。しゃがむと体重が下に落ちて、立ち上がるのが大変ですよね。胯に座る状態は、上に向かう力を保っているため、いつでもすぐに立つことができます。

 

 

太極拳を習い始めた頃は、これができなくて、下がっていくと、そのままお尻が地面にぺたんとついてしまうほど、ヘタレでした。

 

「下がらないんだよ」と何度、先生に言われても、ぺしゃん。

 

ぺしゃんとなった後、立ち上がるほどの脚力は、当時のわたしにはありませんでした。あまりにできないので、ついに「そんなに低くしなくていいから」ということになりました。

 

あのときは、必要な筋力がなかったこともありますが、コツもわかっていませんでした。

 

コツは、いくつかあります。

 

≪低い姿勢を取るときに、ひざを前に曲げないこと≫

ひざは、クッションのように使えるように、曲がるようにできていますが、前に曲げてしまうと、バネが切れてしまい、体重がひざにかかります。これが、ひざを悪くする原因でもあります。

命門という、おへその裏のツボを後ろに引いて、ひざより上の部分が後ろに向かうことで、ひざは曲がり、低い姿勢が取れます。

 

≪「座胯」のコツ≫

「座胯」は、椅子に座るようにとも表現されますが、実際に椅子はないので、どこで支えるかというと、もも裏のハムストリングスです。上の命門を引くやり方をすると、このハムストリングスが使えます。

 

≪陰陽のバランス≫

下がるのであれば(陰)、上がるところ(陽)が必要です。ここでは右手をぐっと上に引き上げて、しゃがんでしまうのを防いでいます。

 

「高く跳ぶためには、思いっきりかがむ」とは、ただしゃがみ込むのではなく、力を蓄える方法でかがむことが必要です。

 

体を壊すことなく、強い体を作るためには、低い姿勢を取るコツを学び、さらに必要な筋力も育てていかなければなりません。

 

身の丈にあったペース、少しずつで、いいのです。

いきなり「低い方が、かっこいいな」と思うと、やりすぎて体を壊します。

 

筋力もコツもあり、無理なくできる人は、それで養生につながります。

筋力も足りず、コツもつかめていなければ、高めの姿勢で無理なくできるところで練習する方が、養生につながります。

 

この場合、低い姿勢を取る人と、高い姿勢でする人の間に、優劣はありません。

 

以前、兄弟子は「どっちでも価値は同じだから。できる人はやる、できないならやらない、それだけ。」と言っていました。指導する人が、きちんとこれを伝えることは、すごく意味があると思っています。

 

つい、「低い方が、かっこいい」に流されてしまいますしね。

 

套路の解説文を見ていたら、この部分は「老化防止」とありました。

 

ハムストリングスを使うとき、必ず大腰筋も働きます。

 

大腰筋は、上半身と下半身をつなぐ筋肉で、胸椎の一番下と、5つの腰椎から出て、大腿骨というももの大きな骨につながっています。大腰筋がしっかりしている人は、運動のパフォーマンスが高いそうです。

 

大腰筋は、わたしのイメージですが、使おうとして使える筋肉ではなく、必要なときに活躍してくれる筋肉です。ハムストリングスも同じで、たとえば「座胯」という姿勢を取ったときに、働いてくれます。

 

站椿功をはじめ、太極拳では、この大腰筋がすごく使われます。つまり、太極拳は、大腰筋を育てます。

 

この大腰筋、位置で言うと、ちょうど丹田のあたりです。丹田は大切ですが、わたしが知る限り「丹田を使う」という言い方はしません。緊張させずに放っておけば、うまく使われるイメージです。

 

丹田の力は、大腰筋の力じゃないのかしらね、と、ちょっと思っています。

 

 

ちなみに、脚力があれば、しゃがみ込んでも、足の力でグイッと立ち上がれますす。でも、それをしてしまうと、体に無駄な力が入り、無断な緊張を引き起こします。これでは体の巡りは悪くなりますし、養生にはなりません。そして、動きも一瞬止まるので、流れるようになめらかには、いきません。

 

ある意味、脚力がないところから始めて、良かったなあ、と思います。頼る力がなければ、「できない」ことがちゃんとわかりますからね。

 

そしてヘタレのわたしでも、なんとかなったのですから、誰でも大丈夫なのです。コツをつかんで、続けていけさえすれば。

 

とにかく続けることです。そうすれば、必ず結果は出ます。体は、絶対に嘘をつかないし、裏切りません。頼りになるのよ。

 

 

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「陽だまり」とは

「陽だまり」のイメージは、縁側にのんびり座り、暖かいお日様の光が射しこみ、ぬくぬく、まどろむような時間と空間です。縁側は、なくても生活できますが、あると居心地が良く、今、とても失われている”あそび”や”ゆとり”だと思うのです。モノも置かれておらず、いつもキレイで、りん、とした印象もあります。人が集って、一緒にお茶でも飲んでなにげない話をして、ほっとする場所でもあります。太極拳を通して、陽だまりのような場を創っていきたいと思っています。

 

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いしい まゆみ(道号:静慧)/ みんみん)

太極道家

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