葉底蔵花

2020.05.13 Wednesday

(葉底蔵花)Photo by Xie Okajima

 

太極拳には、それぞれの動作に名前がついています。

 

形のイメージがわく名前や、技の説明になっている名前もあります。

 

古典のようなことばなので、直訳してもよく意味がわからないこともあります。それでも、名前の理解は、大切です。

 

武当三十六式太極拳に、「葉底蔵花」という動作があります。直訳すると、葉の下に花を隠す、です。

 

はて?と、わからなかったので、調べてみたところ、八卦掌の代表的な技に、同じ名前のものがありました。

 

映画の「グランドマスター」で、チャン・ツィイー演じる若梅(ルオメイ)という八卦掌の伝承者が、奥義だと話している技でもあります。

 

八卦掌の解説は、だいたい次のような感じです。

 

相手の腕を掴んで払うときの、自分の腕が、枝(葉)になり、その腕の内に、もう片方の手を蔵(かく)しています。

腕を払いながら、蔵した手を、相手の肋骨あたりに打ち込みます。この打ち込む手を、咲く花にたとえています。

それで、枝(葉)の下に、咲く花を隠している、という名前のとおりになります。

 

八卦掌と太極拳ではスピードが違いますが、なるほど、技としては、共通するものがあります。

 

武当三十六式太極拳では、次のようになります。

 

1.後ろ足(右足)を押して前に移動するとき、左手も前に伸びる(右手は、一緒についてくるくらい)

 

2.前足(左足)を下に押して体が伸びるとき、左手が上に伸びる(1と合わせて、左手は斜め上に伸びる)

 

3.命門(背中側にある、おへその裏のツボ)を、後ろに引きながら、左手の手の平を外に開きながら後ろに引く。

  この手が枝(葉)で、技としては、相手の腕を取って後ろに引いています。

 

4.3と同時に、右手(花)が、前に出る。技としては、無防備になった相手の肋骨を打ちます。

 

下記の動画で、2分53秒から3分2秒の動作が、「葉底蔵花」です。

 

 

技として成り立たせる(=力がある)ためには、1と2で、左手がしっかり斜め上方向に伸びることが大事です。

 

このとき、左手だけが伸びるのではなく、1で後ろ足を押すこと、2で前足を下に押すことが、左手の伸びにつながるようにします。

 

その上で、命門を後ろに引いて、左手を後ろに引きます(これが、陰です)。しっかり引く力があることが大事ですが、この前に斜め上にしっかり伸びていないと、引く力が出ません。

 

陽が極まったら(左手が斜め上に伸び切ったら)、自然と陰に転換します(左手が後ろに引かれる)。それが力を出すコツです。

 

左手が斜め上に伸び切らないと、自然と陰に転換しないため、力で引っ張ることになります。すると、技としての力は弱くなります。

 

右手は、陽になります。陽は、陰を作り出せば自然と発生するので、4のとき、右手を積極的に出す必要はありません。

 

シーソーの片方を下げたら、もう片方が上がるように、左手を後ろに引いたら、右手は自然に前に出て打てるようになります。

 

右手の打つ力を作り出す元は、引いている左手です。

 

右を積極的に前に出してしまうと、バランスが成り立たず、技としての力は弱くなります。

 

技として成立して力が出れば、養生にもなります。太極拳は健康によい、とされるところですね。

 

逆にいえば、技として力がなければ、養生にもなりません。

 

この動作でいえば、たとえば、

 

1で、後ろ足(右足)を押して前に進むとき、左手が前に進む

 →体に無駄な緊張がなければ、押した力が左手に伝わって前に伸びる力になる

 

2で、前足(左足)を下に押して、左手が上に伸びる

 →体に無駄な緊張がなく、押した力が左手に伝わって上に伸びる力になる

 

さらにどちらも、関節の隙間が空いて、体の内側にゆとり(スペース)が生まれています。ゆとりがあれば、血が流れやすく、血が流れれば体温があがり、体温があることは生命力にもつながります。

 

3と4で、命門を後ろに引くことで左手が後ろに引かれたら、右手が前に出る。

 →陰と陽のバランスが取れていれば、右手を積極的に動かす必要はなく、少ない労力で大きな力を出せる。それも養生です。

 

と、なります。

 

見方を変えれば、健康によい動きができているかの確認のため、力があるかで見ることもできますよね。

 

太極拳とは、相手を想定した攻防の技の連続です。

 

ただしそれは、相手を倒すためのものではなく、不幸にして起きてしまった争いを終わらせるためのものです。

 

武術というと、荒々しいものを想像する方もいらっしゃるでしょうし、実際そういうものもあるのかもしれませんが、武術の武は、戈を止めると書きます。争いを止める術、ですよね。

 

相手が攻撃してきても、抵抗して真っ向勝負をするのではなく、相手の力と攻撃の意思をそぐために、技を使います。

 

攻撃する気まんまんの相手に、「やめましょう」と言っても、終わりませんよね。力づくでやめさせるのではなく、相手が自分の意思でやめるように、仕向けていきます。

 

どちらもダメージを負わず、ふたりとも無事で平和が戻るのが、いちばんです。

 

一番よいのは、争いが起きないことです。それにはまず、自分が赤ちゃんのような状態であることです。

 

無防備で、ニコニコしている赤ちゃんを見て、攻撃したくなる人は、そういないですよね。平和な存在は、周りも平和にします。

 

普段から体に無駄な緊張を作らないこと、そして心を開いていることは、赤ちゃんの無防備さにつながります。

 

逆に「外に出れば敵ばかりだ」と、心を閉ざし、自分を守るために鎧をつけて防御すると、それを見た人は怖くなって、逃げるか、攻撃するかになります。

 

自分だって怖いから、心を閉ざし、鎧つけるのに、それが相手の闘争心に火をつけてしまうのです。せつないですよね。

 

赤ちゃんではないわたしたちが、赤ちゃんの無垢さ、柔らかさを取り戻すためには、鍛錬が必要です。それが、お稽古です。

 

お稽古の過程で、自分がいかに、無駄に怖がって体を鎧のように固めているかを知ります。そして本当は、敵などいないのだ、と気づいていきます。

 

すればするほど、子どもに還っていく感じですが、それは大人であるからこそ、できることです。

 

大人って、楽しいですよね。

 

 

オンラインでの動画レッスン始めました。

 

≪入門編≫

立ち方、歩き方の≪基本編 ≫と、太極拳の動作の練習としてもおすすめの≪武当五行六合功編≫のセットです。詳しくはこちら

 

≪武当太極拳編≫

武当三十六式太極拳をいくつかに分けてご紹介します。「その1」は、

第1式〜第10式です。詳しくはこちら

 

≪立ち方編≫

地に足をつけて、自分らしく生きるための基盤を作ります。≪入門編≫の「基本編」第1講の単発講座。太極拳をしない方にも。詳しくはこちら

 

 

「陽だまり」とは

「陽だまり」のイメージは、縁側にのんびり座り、暖かいお日様の光が射しこみ、ぬくぬく、まどろむような時間と空間です。縁側は、なくても生活できますが、あると居心地が良く、今、とても失われている”あそび”や”ゆとり”だと思うのです。モノも置かれておらず、いつもキレイで、りん、とした印象もあります。人が集って、一緒にお茶でも飲んでなにげない話をして、ほっとする場所でもあります。太極拳を通して、陽だまりのような場を創っていきたいと思っています。

 

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いしい まゆみ(道号:静慧)/ みんみん)

太極道家

講座のご案内は、こちらから

 


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