太極の心 武当三十六式太極拳

2020.04.18 Saturday

(中国 湖北省 武当山  明月院)

 

10年前、中国の武当山で2か月お稽古した最後の日、

当時の師匠だった武当玄武派第十五代伝人の田理陽師匠から、「あなたには、太極の心がある」ということばをいただきました。

 

それまで10日間お稽古していた太極扇を、「やって見せて」と言われ、たどたどしくご披露した後のことでした。まだまだ粗削りのつたない状態でしたが、それでも師匠は「わずか10日で、こんなにできるようになって。外国人の生徒で、そんな人はいない。あなたは、よくやっている」とほめてくださいました。

 

めったにほめないという評判の、厳しい師匠で、わたしも手をピシッと叩かれて注意されたこともありますが、ことあるごとに「あなたは、よくやっている」と、励ましてくださいました。

 

心身ともに辛かったこの時期、師匠のおおらかさと、笑顔と、真摯さと、励ましには、本当に救われました。

 

田理陽師匠は、シンプルで奥深いことばを使われます。そのときは、「太極の心」の意味はよくわからず、その後お稽古を続けながら、ずっと考え続けてきました。

 

今、自分なりに感じていることがあります。

 

この世は、陰と陽という2つの異なる質を持ちながら、お互いに補完しあう組み合わせからできています。天と地、男女、動と静、昼と夜、のように、です。

 

太極とは、18世紀の武術家で「太極拳経」を書いた王宗岳によると、「陰陽の母である」というとおり、陰と陽に分かれる前の、ひとつのこと、つまり、すべてのひとつの源、と理解しています。

 

太極では、陰と陽という要素はありますが、混沌としていて、分かれてはいません。それが動き始めると、陰が極まれば陽になり、陽が極まれば陰となり、陰と陽は常に調和を図りながら、くるくると転換して動いていきます。それは、この世で生きることでもあります。

 

もともとはひとつなのだから、必ず調和はあります。

 

でも、陰と陽に分かれているこの世では、それが忘れられやすく、調和というバランスも崩れやすくなります。

 

人との衝突や、自分の心身の不調和も、起きます。

 

不調和は、調和の意味を感じるための経験でもあります。

 

自分を振り返っても、そうです。

 

ケンカなどの衝突、辛いことがあるとき、その奥にある自分が大切にしたいことが、大切にできていないことに気づきます。

 

それがわからないうちは、とにかくその場所でどうにかしようとしますが、合わないことを続けていると、さらに事態はひどくなります。

 

ようやく気づいて、大切にしたいことを大切にするために、その場所や相手から離れたり、行動を起こします。

 

自分がグズグズしているときには、向こうからはじき出されるようなことも起きます。そのときは、かなり辛いですが、あとから振り返ると、「あれでよかった。あのおかげだ」と思える体験になります。

 

そして、自分に大切にしたいことがあるように、衝突した相手にも、守りたいものがあるのだと気づきます。

 

どちらが正しいわけでもなく、間違っているわけでもなく、ただ、共に歩むのは難しいだけです。そのときは。

 

 

太極の心とは、調和です。宇宙の調和、人と人との調和、心身の調和です。

 

不調和を経験することで、調和を知るように、この世で生きていくことは、不調和の中で大切なことを知り、その上で調和を図っていく道だと思います。

 

調和なければダメなわけではなく、必ず調和はあるのだと信じて、不調和の中で、自分がどう行動するかを選択していくことだと思います。

 

太極拳とは、そんな生き方を教えてくれます。

 

心を静めて、体で、崩れそうになる陰と陽のバランスを繊細に探り続け、陰と陽を転がすように転換させながら、動き続けます。

 

太極拳は武術ですから、相手がいます。相手が何かの理由で攻撃をしかけてきたとき、どう対応するかの技を学びます。

 

それは、「こういう場合には、こうする」という方法論ではなく、もっと根源的なもので、

 

力に力で対抗するような、売られたケンカを買うのではなく、

自分を忘れず、大切なことを守り続けるだけでいいのだと、わかっていく道です。

 

その上で、相手の攻撃したい意欲が、自然に減退するようにしむけ、調和を取り戻します。それが、技です。

 

少ない労力で大きなパワーを発揮させる技は、自分の力を有効に、最大限に活かす智慧になりますし、

 

それを実現させるためには、全身が協業できるように、無駄な緊張がなく、巡りの良い体になっていないといけません。それが、すこやかな体づくり、健康にもつながります。

 

心が荒れていると、体に影響がでます。体の緊張として現れることもありますし、例えば怒りは肝臓にくる、というように、感情が大きすぎると、内臓に負荷がかかります。

 

心と体が協業できるようにするためには、心も静めることも大切です。

 

心身の調和を取り戻し、人との調和を取り戻していくと、宇宙の調和にもつながってきます。

 

自分の内に深く入っていくことで、個を超えた、普遍的な何か、それが太極の真理みたいなものに、つながっていく感じがします。すると、自分に起きる小さなこと、悩みなどは、取るに足らないことのように思えてきます。

 

大事なものは、外ではなく、自分の内側にあります。

 

外でどんなに嵐が吹き荒れても、内に入って大切なものを確認して、守っていけば、自ずと、取るべき行動は決まってくると思っています。

 

外で起きることに対して行動を決めるのではなく、自分の大切にしたいことを守りながら、外で起きていることも無視せず、うまく調和していける道を探っていきいます。

 

武当三十六式太極拳は、そんな太極拳らしさがつまった套路です。

 

太極拳にも流派がいろいろありますが、武当山に伝わる太極拳のひとつの特徴は、気功の要素も多く含んでいることのような気がします。そのため、気功を学ばずに、太極拳だけする人は、いません。

 

この套路も、武道と気功の両面を持っています。

 

柔が剛を制し、静が動を制し、軽が重を制すことを教えてくれ、

 

その動きは、流れる雲や、絹のように流れる水のように、止まることなく続いていきます。

 

「無為自然」という天地自然に沿った行動や心の持ち方を身につけ、実践していくことで、自分本来の生き方を送るという、タオの教えを体現しているものでもあります。

 

大切なものは、人それぞれです。それは、他人や自然を害すものであってはなりませんが、そうでなければ、なんでもいいわけです。

 

人が「いい」と思う生き方に合わせるために、人に褒められるために、大切なものを無視して生きるよりも、

 

他人からどう見えたとしても、自分が、大切なものを守って生きていけるなら、それはとてもしあわせなことではないのでしょうか。

 

太極拳って、すてきなのですよ。心にも、体にも、世界にも、宇宙にも、よいと思っています。

 

今はお休み中ですが、再開できるようになったら、またクラスでも続けていこうと思っていますし、遠方の方などには、オンラインで視聴できる動画でのレッスンを準備しています。

 

そしてお稽古がお休みの間、生徒さんには、ムービーレッスンの動画を特別価格でご提供します。

 

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ご興味のある方は、ぜひどうぞ。

 

 

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「陽だまり」とは

「陽だまり」のイメージは、縁側にのんびり座り、暖かいお日様の光が射しこみ、ぬくぬく、まどろむような時間と空間です。縁側は、なくても生活できますが、あると居心地が良く、今、とても失われている”あそび”や”ゆとり”だと思うのです。モノも置かれておらず、いつもキレイで、りん、とした印象もあります。人が集って、一緒にお茶でも飲んでなにげない話をして、ほっとする場所でもあります。太極拳を通して、陽だまりのような場を創っていきたいと思っています。

 

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いしい まゆみ(道号:静慧)/ みんみん)

太極道家

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