「やらなくちゃ」が「やろう」に変わるとき

2020.02.13 Thursday

(站椿功の姿勢になる、ちょっと前の動作 photo by Xie Okajima)

 

 

「やらなくちゃ」が、「やろう」に変わるときが、あります。

 

義務とか強制ではなく、躊躇なく自発的に動けるようになるときです。これ、いいですよね。

 

内容にもよるかもしれませんが、ここに行きつくまでには、続ける努力が必要なこともあると思っています。

 

最近わたしが経験したひとつの例を、ご紹介しようと思います。

 

 

昨年10月、中国の武当山にお稽古に行ったとき、毎日、1回30分の站椿功を2〜4回していました。

 

その流れで、帰国してからも毎日1〜2回は続けています。調子がよさそうなときは長めに、1時間続けます。

 

站椿功は、杭(椿)を打つように立つ(站)という意味ですので、姿勢はいろいろあります。腕を下ろして立つだけもありますし、腕の形を変えていくものもあります。形、やり方によって、得られるものが違いますし、難易度も変わります。

 

武当山でやっていたのは、木を抱えるように腕を前にあげて静止するものです。縦に伸びる力と、四方八方に膨らむ力が働くタイプで、慣れないと、腕や肩、背中が痛くなってきます。

 

「それだけ続けたら、難なくできるだろう」と思われるかもしれませんが、やる前は、毎回、「絶対できる」という自信はありません。「とにかく、やってみよう」だけです。

 

実際、途中で痛くなったり、苦しくなることもあります。それでも「やめるのは簡単だから、もうちょっと続けてみよう」と、少しでも楽になるところを探ります。

 

誰に強制されているわけでもなく、「やる」と自分で決めているので、よほど疲労がひどくない限りはするのですが、やる前には、ベッドの上でゴロゴロしてみたり、別のことに逃げてみたりして、最後にあきらめるように、「さ、やるか」ということも多かったのです。往生際が、すっごく悪いです。

 

それが、ここ数日で、変わりました。

 

今なら時間があるな、というときに、「さ、やろう」と、逡巡することなく、するようになりました。

 

こんな風に、「やらなくちゃ」から、「やろう」と自然に思えるように変わるタイミングって、あると思うのです。それは続けていないと来ないですし、いつ来るかもわかりませんが。

 

ここ数日、痛いとか、辛いとか、感じないことも、大きいかもしれません。

 

時間の感覚とは不思議なもので、同じ30分が長く感じるとき、短く感じるとき、両方あります。調子がいいときは、わりと、あっという間に30分たちます。

 

これが、師匠がいう「気持ちいい」なのかどうかはわかりませんが、自分史上としては、いい感じです。

 

この「気持ちいい」というのは、温泉に入って緩むような気持よさとは違います。

 

カンフーでよく言われる「放松(ファンソン)」という状態は、適度な緩みと適度な張り感(緊張)が同居した状態です。

 

見た目は静止していますが、自然の摂理は動き続けることですから、これも止まることはありません。身長は、縦にバネのように伸び続け、体は風船のように膨らみ続けます。

 

無駄な緊張や詰まりがないので、血はすみずみまで流れます。体が中心から、ふわっとあたたかくなってきます。

 

無駄に緊張しているところがあると、それが詰まりになって、巡りが悪くなり、縦に伸びるバネも切れたり、風船も穴が開いて、膨らまなくなります。すると、この姿勢を続けることは苦しくなります。単純な仕組みですよね。

 

下の絵で、左が無駄な緊張があって辛い人、右が調和がとれて巡りのいい人のイメージです。矢印は、働いている力の方向です。

 

痛くなったり、つらくなってきたときに、あれこれ楽になるところを探るというのは、詰まっているところを探して楽にする、という意味です。

 

全方向にバランスが取れている状態を作り続けるためには、時間が必要ですし、この感覚が気持ちいいと思えるまでには、時間がかかるような気がします。

 

だからこそ、続けることは大切なことですし、続ける努力をすることも、大事です。

 

努力と聞くと、腰が引けてしまう人もいるでしょう。そのとおり、努力とか頑張るという言葉は、状況によっては、人を追い詰めてしまうこともあります。

 

陰陽の観点から見ると、陰は休む、陽は動く、です。ベースとなるのは陰ですから、「動くためには、まず休む」が基本です。

 

動き続けて休めていない人に、「がんばれ」と言ってはいけません。

 

でも、ちゃんと休んだ人には、がんばる力が備わっています。ここで頑張らずに、いつ頑張る、です。

 

何か新しいことをするとき、まだ開いていない可能性を育てていくときは、太極拳でも、他のことでも、こんな風に、ある程度、長く続ける努力が必要だと思っています。

 

このとき、師匠や先生、先を行く経験者の先輩たちの存在は、大切です。

 

経験してきた人たちは、それで得られるものを知っています。

 

未経験の人は、それまでの自分が知っている狭い世界での判断で、「やってみたけど、苦しいだけ」と、すぐに、さじを投げてしまうこともあるでしょう。

 

それを、最初はとにかく強制のような方法であっても、続けさせるのが、師匠たちの存在でもある、と思うのです。

 

站椿功には、形意拳の基本姿勢となる三体式という方法もあり、ある意味、パワーがつく最強の站椿功だと思うのですが、それだけにキツイです。

 

兄弟子のひとりが、「苦しくて腕が下がりそうになるとき、師匠が『下げるな、頑張れ』といつも言ってくれた。そのうちに、できるようになった」と話していたことがあります。

 

そうやって習ったひとたちは、その意味がわかるから、時期がきたら、自らするようになりますし、教えるときにも同じようにします。

 

師匠が、武当山の武館で、初心者を含めた生徒たちに、毎日30分の站椿功を、2−4回やらせているのも、同じことだと思います。

 

続ける努力をする意味を知っているし、その先でしか得られないものも知っているし、それを知らない人たちの可能性や力を、信じているからだと思います。

 

 

今の時代、「これをやったら、こういう効果がある」という情報も多いですよね。同じことをするにしても、時短で、できるだけ効率的にというのも、ひとつの流れです。

 

それの恩恵にあずかっている部分もあり(たとえば洗濯機とか)、太古の時代に戻りたいとは思いませんが、

 

これがどういいのかわからなくても、先人の言うことを信じて、ひたすらやり続けてみるという姿勢も、忘れたくありません。

 

今の自分が感じていること、知っていることは、この世のすべてではなく、ほとんどのことを知らないからです。

 

わからないけれども、前を行く人を信じてやってみれば、自分の可能性や力が育つし、世界も広がります。

 

 

站椿功の場合、続けてきて感じるのは、自然と体がバランスを取るようになることです。

 

套路という太極拳の型をする場合、たとえば「ここが陰で、こっちが陽」と考えながらバランスを取っていくことも多いのですが、それが、頭で指揮しなくても、体が自ずと、バランスを取るように動いてくれる感覚です。

 

たとえるなら、同じところを100回練習しても、できなかったことが、1回でもできる、みたいな感じです。

 

これって、すごいのです。自分のことながら、感動します。

 

師匠は、「準備をしたら、準備ができていない」と言います。

 

たとえばどこか攻撃されるとき、それに備えてしまうと、その時点でダメだ、という意味です。構えの姿勢を取らない、という意味でもあります。

 

そうではなくて、攻撃された瞬間に、そのダメージを受けることなく、感知して反応する、ということです。こんなこと、頭で考えていたら、間に合いません。

 

站椿功は、そんな不思議な力をつけてくれます。

 

不思議な力は、ちっとも不思議なものではなく、続ける努力の上に、やってくるものなのですけどね。

 

 

※次回の「やさしい站椿功」は、3月29日(日)14:00-16:30 (池尻大橋)です。詳細とお申込み方法はこちら

 

 

【2月の特別クラス】

2月16日(日)14:00-16:30「たのしい太極扇」(自由が丘)詳細とお申込み方法はこちら

 

2月23日(日)14:00-16:30 「ホントにはじめての武当太極拳・気功(池尻大橋)詳細とお申込方法はこちら

 

「陽だまり」とは

「陽だまり」のイメージは、縁側にのんびり座り、暖かいお日様の光が射しこみ、ぬくぬく、まどろむような時間と空間です。縁側は、なくても生活できますが、あると居心地が良く、今、とても失われている”あそび”や”ゆとり”だと思うのです。モノも置かれておらず、いつもキレイで、りん、とした印象もあります。人が集って、一緒にお茶でも飲んでなにげない話をして、ほっとする場所でもあります。太極拳を通して、陽だまりのような場を創っていきたいと思っています。

 

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いしい まゆみ(道号:静慧)/ みんみん)

太極道家

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