「まっすぐな足」への誤解

2019.12.28 Saturday

 

(武当山 明月道院にて)

 

「足をまっすぐ」というとき、どんな状態になりますか?

 

ふくらはぎやひざ裏は、どんな感じですか?ぴんっと張っていますか?

 

わたしが見てきた中では、ほぼすべての人のふくらはぎとひざ裏は、ぴんっと張っていました。

 

でもこれでは、足の筋肉を無駄に緊張させてしまっています。

 

太極拳では、膝を「曲げず、伸ばさず」と言ったりします。そのとおりだと思います。

 

でもこの表現だけでは、どうしたらいいか、よくわからないのではないでしょうか?悩むかもしれませんね。

 

下半身である足は、土台です。ここの骨を、積木を積み上げるように、しっかり重ねていくことが大切です。

 

たとえば、ひざ下とひざ上を2つの積み木としてみる場合、2つがきちんと接面していたら、支えは不要ですよね。

 

でも、積木同士が接する面がずれていたら、安定させるためにテープで張ったり、つっかえ棒が必要になってきます。実際の体では、テープ、つっかえ棒の役割を、筋肉を緊張させることで果たすことになります。

 

土台の下半身が緊張すると、上半身も緊張します。体は常にバランスを取ろうとしており、緊張には緊張でバランスを取ります。悲しいほど、素直です。

 

では、ひざ下、ひざ上、2つの積み木をきれいに接面させるためには、どうしたらいいでしょうか?

 

イメージで、両方の骨(脛骨と大腿骨)がお互いにいちばん押し合えるところを探ることです。見ることも触ることもできませんので、体の中に意識を向けて、感覚で探るしかありません。

 

「こうかな」と思ったら、ひざ裏とふくらはぎの様子を確認します。ちょっと緩んでいますよね?

 

これが「足がまっすぐ」の状態です。ひざは「曲げず、伸ばさず」となります。

 

これまで思っていた「足がまっすぐ」の状態とは違うかもしれませんが、ここを直して立ってもらい、その人を押してみると、安定性は抜群に改善しています。

 

全身が安定するために、無理なく楽に立つためのポイントは、ひざ以外にもありますので、ここだけですべてが解決するわけではありませんが、ひざの意識を変えるだけでも、かなり改善されます。

 

と、ここまでは、はじめての方でも、比較的すぐにできます。

 

問題は、ここからです。

 

大腿骨と脛骨が押し合うように立つところまではいいのですが、どうも、その状態でひざを固めてしまう人が多いようです。

 

ひざ関節は、水の性質を強く持っていると感じます。そういうイメージで動くと上手くいく、ということでもあります。

 

実際、関節の表面を覆っている硝子軟骨は、9割近くが水分で、関節に加わる衝撃を吸収し、なめらかに動かしているそうです。


さらに、関節には関節包という袋状のもので包まれており、その中に関節液があり、潤滑を助けます。(参考:「100年足腰」 巽 一郎 著 サンマーク出版)

 

この構造から見ても、水の性質はありそうですよね。

 

水の性質とは、どんなものでしょうか?

 

”抵抗しない”、”自由に形を変える(固まっていない)”でしょうか。上から下に流れる、もありますが、大きく括れば、それも”抵抗しない”に含まれます。

 

まっすぐ立つときの足の状態は、上で書いたように、大腿骨と脛骨がお互いに押し合うところを探ります。

 

このとき、誰かが後ろから”ひざカックン”したら、どうなるでしょうか?(ひざ頭で、他人のひざ裏をぽんっと押すものです。)

 

接面がしっかりしていれば動かない、と思うでしょうか?

 

関節ですから、後ろから衝撃がくれば、ちょっと曲がります。ただし、バネのように、全身が縦に伸びる力がしっかり働いていれば、それだけで崩れ落ちたりはしません。

 

でもこのとき、膝が固まりすぎていて、曲がらない人が、多いのです。

 

どういうことかというと、大腿骨と脛骨がお互いに押し合えるところを探った後(ここまではOKです)、その状態で固めてしまうようなのです。水ではなく、氷にしてしまっているようなものです。

 

「これだ!」となったら、永久保存したい気持ちが働くのでしょうか?

 

残念なことに、それは大きな間違いです。

 

「点がつながって線になる」でお話したように、太極拳は、瞬間をとらえて反応するものです。それが安定を作っているだけで、「これだ、安定した」と思ったところで形状記憶させようとすると、自然の摂理に反すします。自然の摂理とは、変化することだからです。(参考:「安定」の奥に隠されているもの

 

多くの人が越えられなくて悩む壁が、ここにあるような気がしています。

 

壁は、自分で作っているのですけれどもね。せつないことに、自分で作って、自分で悩んでいるようなものです。

 

ひざ関節の上下の骨が、お互いに押し合えるところを探るのは、1回ではなく、・・・・・・のように、常に探り続けます。その点の間隔が狭くなればなるほど、安定性は増します。

 

・・・・・・のように、瞬間をとらえて対応していけば、後ろから”ひざカックン”されたときは、その瞬間に対応することができます。

 

ちょっとですが、曲がります。水の性質である、”抵抗しない””形を自由に変える”を、活かせるからです。

 

先日の「動作を分解してつなげていく」では、横歩きは、次のような7段階に分解できるとお話しました。

 

0:両足で立つ

1:右足を実にする(右足だけで立つ。左足は虚という状態で、体重がかかっていない)

2:左足を真横に出してつま先を地面につける

3:お腹を収めて(すると腰が低くなります)、左足のかかとが地面につく

4:左足のひざを緩める

5:右足で右斜め下方向に地面を押すと、体重が左に移動する(このとき、腰の高さが変わらないように)

6:左足で真下に地面を押す。右足のかかとが地面から浮く。

7:右足のつま先が地面から離れて、左足の横に、つま先、かかとの順でつく

 

(注:別の方法として、2:お腹を収める 3:左足を真横に出して、つま先、かかとの順につける、というやり方もあります)

 

4でひざを緩めるのは、水の性質を上手く引き出したいからです。

 

ひざが水のようになっていれば、5で右足で地面を押して体重が左に移動するとき、左ひざの形は変ります。

 

大事な点は、積極的に変えるのではなく、受け身的に変わることです。”抵抗しない”が、水の性質ですから。

 

このとき、ぐっと地面を押すのは右足です。こちらが”実”なら、もう片方の足は”虚”、からっぽな状態です。積極的に活躍する場は、まだ整っていません。

 

”虚”のときは、「待て」です。受け身的に、起きることに抵抗せず、素直に反応するのがいちばんです。出しゃばってはいけません。

 

「ひざは柔かく使う」と言いますが、「柔かく使えている」と言うほうが、ぴったりくる気がします。柔かく使おうとすると、動かしてしまいそうですものね。

 

面白いもので、体には、精神状態が反映されます。

 

ひざには「柔軟性」というキーワードがあります。硬かったり、障害がある人の場合、「柔軟に対応できない人」、つまり、頑固な人が多いようです。(参考:「伝統医学のこれから」第2巻 石原克己 著)

 

どきっとしませんか?

 

心から見直していく方法もありますが、まずは体を変えてしまうほうが、具体的で、やりやすいように思います。

 

固めてしまうのは、最初に書いたような「まっすぐな足」への幻想かもしれませんし、「ここを固めなければ、立っていられない」という防衛からかもしれません。

 

それまで、ひざ裏をぴんっと張り続けてまっすぐ立つことが普通だったために、筋肉をあちこち固めてテープを巻いたり、つっかえ棒をつくっていたことで、「この緊張がなくなったら、崩れ落ちてしまう」という恐怖があるのかもしれません。

 

全部、幻想です。

 

悪い夢から覚めたら、体はもっと楽になっていくし、頑固さも和らいでくるかもしれませんよね。

 

試してみる価値は、多いにあると思いませんか?

 

 

☀「陽だまり」とは

「陽だまり」のイメージは、縁側にのんびり座り、暖かいお日様の光が射しこみ、ぬくぬく、まどろむような時間と空間です。縁側は、なくても生活できますが、あると居心地が良く、今、とても失われている”あそび”や”ゆとり”だと思うのです。モノも置かれておらず、いつもキレイで、りん、とした印象もあります。太極拳を通して、陽だまりのような場を創っていきたいと思っています。

 

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いしい まゆみ(道号:静慧)/ みんみん)

太極道家

講座のご案内は、こちらからどうぞ。


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