伝えていくこと

2019.08.31 Saturday

 

モンゴルで乗馬体験をさせてもらったとき、印象的なことがありました。

 

キャンプを主宰している遊牧民の方が、「乗馬を教える」と決めたとき、周りの人は「何おかしなことを言っているんだ?」と、全く理解されなかったのだそうです。

 

なぜなら、遊牧民には「教える」とか「教わる」という概念がないからです。みんな3歳くらいから落馬しながら、自分で乗り方を覚えていくのです。

 

現在のモンゴルは、馬に乗れる人、乗れない人に、分かれます。遊牧民の家に育ち、自分で覚えた人と、都会で育ち、まったくそういう機会がなかった人、の2種類です。都会に育った人が、大人になってから乗馬を習うことは、ないのだそうです。

 

「教える」という概念がないので、「キャンプをはじめたとき、教え方なんてわからなかった」と話してくださいました。2年かけて、自ら修得していったそうです。

 

ここでは、まず乗る前に、馬との距離の取り方、怖がらせない近づき方、そして乗るときのコツを、簡潔に教えてくれます。「こんな感じ」と、実際に体で体験させてくれます。

 

そして乗っている間に「もっと〇〇」とアドバイスしてくださいます。何度か繰り返されると、だんだんと「これじゃな」とか、

「ここができていない」とか、わかってきます。

 

初心者は、最初は遊牧民の方が馬を引いてくださいます。様子を見て、「この人はひとりにしても大丈夫」と思うと、引いている綱を持たせてくれて、ひとりで乗らせてもらえます。「その見極めも、今はできるけれど、最初はできなかった」とおっしゃっていました。

 

教えるという概念がない分野で、新しいことを思いついて実行する発想と行動力は、すごいな、と思いました。これは、今の時代に、遊牧民の文化を後世に引き継いでいくひとつの手段なのかもしれないと思いました。

 

この経験から、いろんなことを考えさせられました。

 

自分ができることと、教えることは違う、というのは、どの分野でもある話かもしれませんね。良い選手と良いコーチは違う、とかね。これは好き嫌いもありますし、向き不向きもあるのかもしれません。

 

みんなが先生になる必要もありませんし、カリスマのように、その人がいてくれるだけで存在が大きな影響を与えることも、ありますしね。人には、それぞれの役割がありますよね。

 

太極拳の場合、先生について習う場合がほとんどだと思いますので、モンゴルの遊牧民の子供のように、ひとりで学ぶことはありません。

 

自分が教えるようになったとき、先生から教わったことは、ひとつの指針になります。わたしの場合、何を大切にしているかという基盤になるものから、教えるときの具体的なポイントまで、広く影響を受けていると思います。

 

それでもやはり、教えるとは、自分なりに開発していくものだと感じます。

 

太極拳は、形ではなく、感覚が大切だからです。感覚は、言葉で表現できる範囲をはるかに超えています。

 

感覚を自分なりにしっくりくる言葉で表現してみるのですが、同じ言葉を同じように理解しないのが、人というものです。たとえば「やわらかい」と言っても、お餅、パン、ほっぺた、いろいろですよね。教えながら「この表現では通じない」と感じることも、あります。

 

そんなときは、違う表現を探します。経験が増えると、ある程度の傾向もわかってきます。〇と言って×をする人は△と言うと伝わりやすい、とか、です。

 

さらに、そのときの時代や環境に合う教え方も、あると思っています。

 

たとえば中国で習うとき、肩とか膝とか体の部位の話は出ますが、〇〇筋とか、〇〇骨とか、解剖学的な言葉がでることはありません。

 

なんといっても、丹田という目で見ることができないものを大切にしている文化です。体を理解するときに、解剖図ではなく、自分の感覚を頼りにしている部分が大きいのではないでしょうか。

 

日本にも、あん摩はありますし、ツボの理解もありますから、文化的に似ているところもありますが、今の時代の日本は、もうちょっと西洋よりのような気がします。場合によりますが、「これは〇〇筋を使う」という方が、伝わりやすいこともあります。

 

人間は、頭でわかると体が動いてくれることもあります。たとえば片足の膝を上げるとき、体の構造を知ることで、一瞬で5僂箸10僂らい高く上がるようになったりするのですよ。すごいですよね。

 

ただし、あまり構造ばかり意識すると、感覚がおいてきおりになり、頭と体がバラバラになってしまいます。

 

言葉で説明するときに、それが自分の感覚から出てくる言葉かどうかで、同じことを言っても、伝わり方が違うと思っています。

 

たとえば、よく言われるひとつに、「足の指で地面をつかむ」があります。習い始めの頃は、指で地面をつかむようにすると思っていました。

 

でも、そうすると、足に無駄な緊張を引き起こしてしまいます。

 

今は、こんな風に意図的に掴むのではなく、”指が自然に勝手に掴む”のだと思っています。

 

アスファルトの上の生活では、靴が欠かせませんが、そのために足が守られすぎて、足裏の能力が発揮されにくい状況になっています。足の指も、縮んでいる人も多いように見えます。

 

足がほぐれて、足の指もほぐれて(=関節の隙間があいて、骨がバラバラに動くようになって)いくと、ある日、指の腹で、くっ、と地面を掴むような動きをするようになります。

 

両手を伸ばしてぺったり机につけると、自然に指の腹で、くっ、と掴む力が生まれせんか?あんな感じです。

 

わたしにこれが起きたとき、「そういえば、中国の先生は、『足指で掴む。ほんのちょっとね』と言っていたな」と思い出しました。あの『ほんのちょっと』は、こういうことなのか、と感じました。

 

足指が自然に掴むようになるためには、とにかく足指を伸ばして、ほぐすことです。そして足は柔かいまま、緊張させず、ぺったり地面につけます。ほぐしていけば、足指の腹が、自分で地面を掴み始める日が、自然にやってくると思っているからです。

 

以前も今も、「足指で掴む」という表現は同じなのですが、中身は全く違います。

 

これで終わりではなく、またこの先「これ!」と思う感覚がやってくることもあるかもしれませんけどね。

 

 

自分のお稽古を深めていくことは、たくさんのものをもたらしてくれます。

 

でも、人に伝えるときには、自分がわかるやり方や表現だけではなく、工夫も必要です。その工夫が楽しいから、教えているのかもしれません。

 

わたしは、こんな風に感覚を言葉にすることも、今の時代や環境、日本で教えるのに合う方法を考えることも、好きです。人の数だけバリエーションがある反応も、「そう来たか」というように、楽しんで受け止めています。

 

以前、気功を教えてくださった先生が「教わるときは、そのとおりにきちんと習う。でも、それを消化して表現するときは、自分なりの表現になっていい。だから、同じ先生に5人の生徒がいたら、5人が教えるときに違う表現になることもある。」と、話してくださいました。

 

消化して、表現していくとき、教えるとき、それには今の時代だったらという要素も、教える対象という要素も、もちろん入ってきます。

 

型があっても、実際にはとっても自由で、オリジナリティあふれるものだと感じています。

 

伝統とは、変わらずに伝えられていくもの、というイメージがありますが、引き継ぎたい大切なことを伝える方法は、時代や環境に合わせて変化していく方が、自然かもしれません。

 

太極拳の場合、型自体が変わっていくこともあります。それは、型を伝えることが大事なわけではないことの現れかもしれませんよね。

 

 

 

【9月のイベント】

9月23日(祝・終日)は「こどもにかえって御岳山で遊ぼう!」です。詳細とお申込み方法は、こちら

 

 

【9月の特別クラス】

9月1日(日)13:00-15:00 「麗屋 弘鈴庵の 立って、歩いて、太極拳詳細とお申込方法はこちら

 

9月8日(日)14:00-16:30  「やさしい站椿功」 詳細とお申込み方法はこちら

 

9月14日(土)14:00-16:30 「はじめての武当気功詳細とお申込方法はこちら

 

9月15日(日)14:00-16:30「たのしい太極扇」 詳細とお申込み方法はこちら

 

9月22日(日)14:30-16:30「はじめての形意拳」 詳細とお申込方法はこちら

 

 

☀「陽だまり」とは

「陽だまり」のイメージは、縁側にのんびり座り、暖かいお日様の光が射しこみ、ぬくぬく、まどろむような時間と空間です。縁側は、なくても生活できますが、あると居心地が良く、今、とても失われている”あそび”や”ゆとり”だと思うのです。モノも置かれておらず、いつもキレイで、りん、とした印象もあります。太極拳を通して、陽だまりのような場を創っていきたいと思っています。

 

...☆...☆...☆...☆...☆...☆...☆...☆...☆...

 

いしい まゆみ(道号:静慧)/ みんみん)

太極道家

講座のご案内は、こちらからどうぞ。

 

体と心が目覚める太極拳(http://minminkung-fu.com/)

ブログ: みんみんの陽だまり太極道日記(http://blog.minminkung-fu.com/)

「太極拳、あるある、ないない話」Facebookページで毎日更新:こちらから

日々の好きなものを投稿するInstagram:Instagram(@mayuminmin927)


関連する記事
コメント
コメントする








   

calendar

S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930     
<< September 2019 >>

selected entries

categories

archives

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM