モンゴルの夏休み:馬と羊と、遊牧民(その1)

2019.07.24 Wednesday

 

 

夏休みに、モンゴルに旅しました。

 

予備知識もほとんどなく行ったこともあり、驚くことも多く、また、自分の勝手な先入観や思い込みにも、気づかされる日々でした。前のブログ「未知の国、モンゴルでの夏休み」では、モンゴルとはどんなところかに、触れてみました。

 

今回は、特に印象深かったこと、遊牧民についてです。

 

旅の間、現地の遊牧民にどっぷり触れ合う機会があったかというと、そうではありません。旅行者に昼食を提供するサービスをしている遊牧民を訪問したり、旅行者用の宿泊施設として建てられたゲルに宿泊したくらいです。純粋に放牧を生業としている”遊牧民”や、その住居であるゲルは、遠くから眺めるだけでした。

 

それでも、見えてくるものや、気づかされることが、たくさんありました。

 

遊牧民たちは、放牧という形で家畜を飼育しており、そのエサを求めて、季節に合わせて住む場所を移動します。モンゴルでは、主に牛、馬、羊、やぎ、ラクダが放牧されており、山の近くではヤクも見かけました。ヤクの毛で作る靴下や手袋は、丈夫で暖かいのです。

 

 

生活は厳しく、遊牧をやめて都会で働く人も多いようです。モンゴルでは、この遊牧という文化を大切にしており、守るための補助もあるようです。たとえば何かの事情でゲル(家)がダメになったり、家畜が死んでしまったりした場合、1回だけはある程度の羊などは無償で提供してくれるような制度もある、と聞きました。

 

ゲルとは、移動できる組み立て式の天幕です。モンゴル語で「家」を意味するそうです。パオ(包)と呼ぶ場合もありますが、これは中国語ですね。

 

サイズはいろいろですが、小さいものなら、ラクダ1頭に積めるそうです。慣れた人なら、30分くらいで建てることもできるのだとか。小さいとは言っても、ベット2つ、食事用の大きめのテーブル、調理場所などがあるため、3〜4人なら十分な広さがあります。

 

遊牧民は定住しないため、ゲルを建てるために土地の所有権を得たり、借りたりする必要はありません。

 

ゲルは、ウランバートルなど都市部にもあります。都市部では土地の所有があるため、自由に建てることはできず、自治体に確認が必要です。地方から都市部に出稼ぎに来ている人が住んだり、別荘として持つ人もいるようです。

 

このほかに、旅行者が泊まれるゲルもあります。ホテルですね。ツーリストキャンプと呼ばれるところにあります。こちらのゲルは移動することはなく、基本は固定式だと思います。床も板張りで、電気もひいてあります。トイレやシャワーは部屋にはありませんが、ツーリストキャンプ内にはありますので、不便はありません。

 

どのゲルも、つくりはほぼ同じです。格子状の壁の骨組みをつくり、ドアをつけ、丸い天窓を柱で持ち上げ、布やフェルト、汚れを防ぐ白い布をかぶせて紐で締めます。

 

内部は、中心に鉄のストーブがあります。南にドアを設置するようで、右側(東)は女性や子供の場所で、キッチン部分です。お客さんがここに入ると、失礼にあたるので、要注意です。左側(西)が男性やお客さんの場所です。

 

食事は奥(北)のテーブルに出されますが、天窓をつっている2本の柱の間は、通り抜け禁止です。

 

(入って北側、奥からドアを眺めたところ。左手がキッチンです)

 

(天窓。晴れた日は青空が見えます。雨が降ったらシートをかぶせるので濡れません)

 

今回は、ハラホリンに車で向かう途中、ELSEN TASARKHAIという草原にある砂山で、遊牧民のゲルを訪問してお昼ごはんをいただく機会がありました。

(※ハラホリンとは、かつてモンゴル帝国の首都がおかれていたところで、カラコルムと呼ばれていました。)

 

向かう途中、運転手さん(日本語ができるモンゴル人です)が電話を入れたとき、「これから、お昼に出す羊をさばく」という話があったそうです。なんとも臨場感があります。

 

到着してすぐ、ラクダの隊列がやってきました。ラクダは1か月くらい放牧しておけるそうです。水を与えなくても、こぶがあるので大丈夫なのだとか。そのかわり、こぶは萎れて、くたっとなってきますが。

 

ラクダの隊列には、リーダーがいるようで、そのラクダが進めばみんなが進み、止まるとみんなが止まります。飼育されているとはいえ、知らない人間に近づくのは避けるらしく、人がいるところには近づかず、ぴたっと歩みを止めます。

 

(ラクダの隊列。モンゴルのラクダは、ふたこぶです。近寄ると蹴られるので、遠くから。)

 

モンゴル犬もいました。暑さのせいか、ずーっとお昼寝していました。天下泰平ですが、番犬の役割を果たしていませんね。

 

席に通されると、まず出てくるのはスーテイ・ツァイ(乳茶)です。茶葉を湯でわかし、牛乳を加えたもので、地域によっては塩やバターが濃いところもあります。おいしいときはおいしい、いまいちなときはいまいちで、地域の味、家庭の味があるようです。

 

遊牧民のゲルは電気がなく、ろうそくの火で過ごすそうですが、このゲルでは太陽光発電をしていました。なかなか進んでいます。

 

 

お昼ごはんは、ホルホグというモンゴル料理で、羊を圧力なべで加熱したものです。味付けは塩だけ、一緒にじゃがいもとにんじんも入っていました。

 

 

骨付き羊は、かなり豪快です。モンゴルの人は、とにかく肉食で、中でも羊をよく食べます。おいしい草をたっぷり食べ、しっかり運動している羊は、「血抜きもせず、一緒に食べる」そうで、身もしまっており、味もしっかりして、でも臭みは少なく、おいしかったです。羊が苦手な方は、ダメかもしれませんが。味付けは塩だけですが、それが素材のおいしさを引き立ててくれます。

 

さきほどまで生きていた(かもしれない)羊、命をありがたく、おいしくいただきました。

 

ワイルドな骨付き肉に、動物が苦手な友人は「こわーい」と、おびえ気味でした。すると運転手さんが小さめのナイフで、きれいに骨から身をはずし、食べやすいように一口サイズに切ってくださいました。

 

この手際が、すばらしいのです。「いつもバーベキューでやっているから」と言うのですが、お肉を取った後の骨は、きれいに真っ白。こちらの方は、お肉の扱いも本当に上手です。こんなところにも、羊と共に生きてきた歴史が見えるようでした。

 

ウランバートルを出れば、どこに行っても360°を見渡せる大地が広がります。草の生え方、色もそれぞれです。ゴビは砂漠と呼ばれることもあるようですが、本当の砂漠ではなく、短い草が生えています。現地の方に言わせると、「砂漠じゃない。これは、ゴビだ。」と。

 

広い空、どこまでも見渡せる地平線、2時間車で走っても、景色は変りますが、360°見渡せることに変わりはありません。この光景は、すばらしかったです。

 

道は、舗装道路もありますが、ただ草原を走ることもあります。モンゴルの人は、山の形で方角を見ているのだそうです。すごい能力ですよね。

 

見通しの悪い都会で育ってきた人や狭い国土で育った日本人は、この広いモンゴルのようなところでは、うまく距離感が把握できない、という話を聞いたこともあります。

 

舗装道路を車で走っていても、ときどき、羊やヤギ、馬や牛などが横断していきます。怖がらせないように車は減速して、渡り終わるのを待ちます。

 

ときどきは、車にはねられてしまうこともあります。「そういうときは、どうなるの?」と運転手さんに聞いてみたら、

 

「たぶん、昼間にはねたら、車が悪い。夜にはねたら、飼い主が悪い」という答えでした。夜は家畜たちもお家に帰りますからね。

 

放牧の様子を見ていると、いろいろと興味深いことがありました。

 

やぎと羊が混ざっていることが多かったので、聞いてみたら、「羊の群れにやぎを入れておくと、やぎが先導して家に帰ってくれる」とか。やぎは、おりこうさんなのですね。

 

木で作った丸い柵の中に、子馬が入れられているのを見かけることもありました。馬乳酒を作るためだそうです。母馬と子馬をいつも一緒にしておくと、ミルクはみんな子馬が飲んでしまいます。馬乳酒用のミルクを取るためには、昼間は子供を母馬から離して、搾乳するのだそうです。子馬は、朝晩だけお母さん馬からミルクをもらうのだそうです。

 

ただし、これは西の方のやり方だとか。

 

「西は馬乳酒を造るために、子馬は昼間、ミルクを貰えない。だからそんなに強い馬には育たない。でも、その馬乳酒を飲んで育った人は強く、モンゴル相撲は西が強い。東は、子馬は昼夜ずっとミルクを貰えるため、強い馬が育つ」と教えてもらいました。

 

馬乳酒とは、馬のミルクに種として馬乳酒を1割程度加え、馬(牛?)の皮袋の中に入れて、一晩攪拌させて作ります。「馬のミルクは甘い」というのですが、お酒になると、すっぱいので、よくわかりません。皮袋に入れるほうが、菌の作用でおいしくなるそうですが、皮袋を清潔に管理するのは大変なので、現在ではプラスチックを使うところも多いのだそうです。馬乳酒にも、各家庭の味があるようですね。

 

遊牧民のゲルでふるまわれるほか、スーパーなどにペットボトルで売られているものもあるのですが、「おすすめしない」とか。味とか質も問題もあるようです。

 

アルコール度数は2〜3パーセントで、そんなに高くないのですが、標高が高いせいか、ちょっといただいたら、ふわんふわんしてきました。

 

「初めての人は、お腹が緩くなることもあるから注意してくださいね」というアドバイスもありました。質がよい馬乳酒でも、慣れていない人は注意ですね。

 

遊牧民は、食生活の大部分を家畜に依存してきているため、馬や羊の乳製品は、とにかく多いです。ヨーグルトを乾燥させたような硬いものや、柔かくバターのような味わいのもの、いろいろです。あまりに種類が多く、それぞれで、味は食べてみないとわかりません。

(右側にあるのが、ヨーグルトを乾燥させたようなもの)

 

モンゴルの食といえば、肉と乳製品です。小麦も食べます。内陸のため魚は食べませんし、野菜は、今でこそ育てているところもありますが、歴史的にはあまり食べません。

 

土地の環境や腸内環境にもよるのかもしれませんが、「お肉とお魚、バランス良く食べないと」とか、「野菜もたくさん食べないと」というわけでもないのですね。

 

「馬は、友達であり、大事な食糧でもある。だから馬の色を現わす言葉は100種類くらいある。けれども魚は、どれもみんな”魚”。」と言っていました。

 

生活に関わってこないものは、名前もついていないというのは、どの国でもあることですが、モンゴルでは魚の他に、花も「あれもこれも、みんな”花”。それぞれの名前は、みんな知らない」そうです。

 

また、遊牧民と言えば馬に乗るイメージですが、現在では、オートバイに乗る人もいます。「その方が効率がいいから」と。遊牧民は、朝、放牧し、日が沈む前には家に連れて帰りますが、様子によっては、放牧したまま夜を明かすこともあるそうです。ただしその場合は、遊牧民が近くにやってきて、泊まるのだそうです。放置せず、ちゃんと管理しているのですね。

 

今回は乗馬も体験できました。馬の話もいろいろありますが、長くなってきたので、その2に続きます。

 

最後に、旅行者の宿泊用ゲル、ツーリストキャンプの写真を掲載します。ここは温泉地でもあり、西洋人の旅行者も多く、優雅な温泉リゾートでした。

 

(ツェンケルにあるシベート・マンハン。ツーリストキャンプです。)

 

(シベート・マンハンの温泉。イオウの香りがして、お湯はとろんとしていました。いいお湯です。モンゴル人はシャワーが一般的で、お風呂に入る習慣がなく、温泉と聞いてもぴんと来ないらしいのですが、いちど入ると、とりこになる人もいるとか。)

 

(ツーリストキャンプのゲル。旅行者用の宿泊施設です。朝晩は冷え込みますが、ストーブに火を入れてもらうと、暖かです。左手奥の建物には共同トイレがあります。広くてキレイです。)

 

 

☀☀☀モンゴルの夏休み:馬と羊と、遊牧民(その2)は、こちら☀☀☀

 

 

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