背中は語る

2019.04.25 Thursday

 

(東寺の帝釈天騎象像。立体仏像曼荼羅のうちの1体。東京国立博物館の「東寺 空海と仏像曼荼羅」より)

 

「自分」というとき、皮膚が境界線だと感じている方は、多いのではないでしょうか?

 

皮膚より内側が自分、それより外側が外、という認識です。

 

太極拳をしていると、この境界線が曖昧になってきて、どこまでが内でどこからが外か、わからなくなってきます。それとともに、意識が拡大していきます。個を超えて、全てはひとつの源である「太極」に触れに行く感じがします。

 

パーソナルスペース(この中に他人が入ると居心地悪いと感じる空間)の境界線もなくなっていき、視野も拡大していく感じです。

 

個を超えてつながりに向かうとき、「意識」と「体」という物体の2つの側面があると思いますが、

 

わたしにとっては、体からのアプローチが大事です。

 

体を持ってこの世に生まれ、それゆえ「個」という認識や自我が育っていくと思うからです。体が解放されていくと、意識も解放されていく気がしています。(人によって、違うアプローチもあると、思います。)

 

体の解放のきっかけのひとつは、皮膚の柔かさです。

 

さて、そこで背中です。自分の背中がどんな感じか、普段気にする方は少ないのではないでしょうか?

 

「背中で人生を語る」と言いますよね。

 

後ろと前はつながっているため、前だっても語っているでしょうが、後ろ姿から受ける印象の方が、正直のような気がします。前は、自分で見えますから、気も使いやすいですしね。(もちろん、気を使うことが悪いわけではありません。)

 

「やさしい站椿功」のクラスでは、ときどき、はじめる前と後で、後ろ姿の印象を見比べてみます。

 

ふたりペアになり、一人は後ろ向きに立ち。もうひとりが印象をメモします。形、〇〇に似ている、硬さ柔かさ、重さや軽さ、雰囲気、擬態語など、なんでも自由です。無責任に(これが大切です)、何かを気にすることなく、感じたままを書いてもらいます。

 

最初に書いたものは、そのまま回収して、終わった後あらためて印象を書いてもらい、両方を本人にお渡しします。

 

結構、わかりやすく変わります。

 

人それぞれですが、大まかな全体の傾向を言うなら、硬くてゆがんでいたものが、バランスが良くなり、スッとする感じでしょうか。痩せたように、すっきり見える方もいらっしゃいます。

 

背中は、ここ数年、とても気になってきた部位です。中国の師匠や兄弟子たちの背中は、とても柔かく、龍のようにしなります。必然的に、全身もしなやかに動きます。

 

でも、日本でいろんな人を見ていると、背中は一枚板のように硬く、まっすぐな方が多いのです。

 

背骨が柔かく使えていないこともありますが、背骨の関節をひとつずつ曲げられたとしても、背中に緊張が残っていることもあります。その緊張は、なくてもいいのだと気づいたことを書いたブログが、「背負ってきたものを、もう手放してもいい」です。

 

背中で語っているものは、個とか自我の現れでもあるような気がします。「がんばらないと」とか、何者かになろうとして努力しているものが、現れているのかもしれません。

 

努力は、すばらしいです。でも、しなくてもいい努力をしていること、ありませんか?一生懸命なだけに、自分ではわかりにくいでしょう。

 

自分がよかれと思ってやっていたことが、実は誰も望んでいなかったという、なんとも悲しい経験は、わたしにもあります。

 

そもそも、そんなに「自分」が頑張らないといけないのでしょうか?

 

例えば、立つことでも、自分ひとりでは立てません。

 

「なぜ立てると思う?」と聞くと、よく返ってくる答は、「立つ意志があるから」とか、「骨と筋肉で立つ」というもので、もちろんその通りです。

 

でもそれ以前に、地面がなければ、立つことはできません。当たり前にあるもののありがたさは、忘れがちになるものですが、ここでもそうです。

 

見方を変えれば、いつも大地は、人を助けてくれています。

 

それを体感していくことで、「立たなきゃ」という力みや荷を、降ろすこともできます。

 

人が緩むには、拠り所がないと緩めません。立つときには、まず地面が支えてくれること、足の骨の構造をしっかり土台にすること、そして上半身の重心ラインの位置(背骨の前側です)を認識することで、背中の緊張は緩めることができます。

 

すると、体はもっと軽く楽に動けるようになります。

 

頼りにするところを認識して、必要ないところを緩めながら太極拳をすると、「やっていない感覚」がさらに増します。動きの早い形意拳も、息が上がらず、楽に動けます。

 

こうして背中が緩んでくると、またひとつ、個からつながりを思い出していくきっかけのような気がします。

 

視野が広がれば、自分ひとりの思い込みで、良かれと思って突っ走ってしまうことも、減るかもしれませんよね。

 

 

「やさしい站椿功」の終わりに、こんな感想を言っていた人がいました。「本人の後ろ姿が変わったこともあるのだろうけど、自分の見方が変わったことも、あるような気がする。」

 

そうだと思います。世界は、自分のフィルターで見ているわけですから、自分が緩めば、フィルターは透明になるでしょう。前は見えなかった「ありのまま」が見えることも、十分にあり得ます。

 

つながりを取り戻した背中は、ありのまま、素のままです。この背中も語りますが、わたしの印象では、「おおらか」とか、「居心地よさそうで近寄りたくなる」という感じで、強烈な個性は感じません。

 

「太極拳には、個性が出る」という話もあり、わたしも昔はそう思っていました。でもあるとき、中国で田理陽師父(武当玄武派第十五代伝人)の太極拳を見たとき、

 

「この人は誰?」という衝撃を受けました。

 

それまで1か月以上直接教えていただいて、それなりに「知っている」と思っていた人とは、全然違う存在が、そこにいたのです。

 

そのときから、これが太極拳なのだと思うようになりました。個を超えたもの、すべてがつながるひとつのもの、それが太極ですからね。(そのときのお話を書いたブログは、「武術と才能」(2015年1月))

 

 

中国には、「武術に長じた者は打たれて亡くなる。水泳に長じたものはおぼれて亡くなる」という言葉があるそうです(出典:「老子と太極拳」清水豊著 BNP出版)

 

得意なところに、心の執着や滞りが生まれやすいから、とか。

 

聖人は、市井の人にまぎれている、とも言いますよね。

 

やればやるほど、個が際立つよりも、つながりを取り戻していくと、そうなっていくのかもしれません。

 

個を超えているけれども、それは誰でも根本に持っているもの(もしくは、それにつながるもの)でもあるためか、誰にとっても居心地よく、安らげてくれるような気がします。

 

皮膚や柔かく、お背中は、ふんわりと、ですよ。理想は、上の写真の仏さまみたいな感じです。たいそう美しく、楽そうです。

 

 

【特別クラスのご案内】

4月28日(日)13:00-15:00は、千葉県香取市(小見川)の「立って、歩いて、太極拳」です。詳細とご応募はこちら

 

4月29日(月・祝)14:00-16:30は「−20歳のカラダほんとにはじめての武当太極拳」です。全くの初心者、もしくは太極拳のお稽古に悩んでいる方に。太極拳とは?というお話から、基本的な体の使い方を体験できます。詳細とご応募はこちら

 

5月5日(日)14:00-16:30は「たのしい太極扇」です。詳細とご応募方法はこちら

 

5月11日(土)14:00-16:30は「やさしい站椿功」です。詳細とご応募はこちら

 

5月12日(日)14:00-16:30「内なる自然に還る旅:魚からの進化をたどって若返ろう!」第4回 より速く:草原を走る四つ足動物チーター です。詳細とご応募方法はこちら

 

 

☀「陽だまり」とは

「陽だまり」のイメージは、縁側にのんびり座り、暖かいお日様の光が射しこみ、ぬくぬく、まどろむような時間と空間です。縁側は、なくても生活できますが、あると居心地が良く、今、とても失われている”あそび”や”ゆとり”だと思うのです。モノも置かれておらず、いつもキレイで、りん、とした印象もあります。太極拳を通して、陽だまりのような場を創っていきたいと思っています。

 

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いしい まゆみ(道号:静慧)/ みんみん)

太極道家

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