太極拳と呼吸

2018.10.19 Friday

(武当山で)

 

以前、「太極拳って、呼吸法でしょう?」と聞かれたことがあります。

 

深くて質のよい呼吸は、すこやかな心身のためには大切です。ただ、いろいろなご意見はあると思いますが、太極拳は呼吸法ではないと、思っています。

 

太極拳での呼吸(目指す呼吸、と言うべきかもしれません)は、”自然”です。自ずと然り、あるべき呼吸です。

 

そのために、まず体を整え、心を整えます。体から無駄な力が抜け、緩み、”放松(ファンソン)と呼ぶ状態になり、心が落ち着いて静かな状態になったときには、本来の呼吸が戻ってきます。(例として、体と心を整えて自然な呼吸に至る、站椿功のやり方は、こちらから:武当山日記:站椿功がもたらす「喜悦」

 

人は生まれたときから呼吸をしているのですから、生まれながらにして達人です。余計なことをしなければ、自然とよい呼吸になっているはずです。

 

よい呼吸とは、腹式呼吸、そして鼻呼吸です。

 

まず、腹式呼吸から。

 

人は進化の過程で二足歩行になったときに、胸式呼吸になりやすくなったと言われています。四つん這いだと腹式、ハイハイする赤ちゃんは、普通に腹式呼吸をしています。

 

胸式呼吸は、交感神経を刺激します。舞い上がったり、爆発したり、興奮度が上がるイメージですね。胸式の浅い呼吸では、吸った空気が肺の中まで到達せずに吐き出されるため、肺に炭酸ガスなどの不要なものが溜まるのだそうです。

 

腹式呼吸でも胸式呼吸でも、息が入る場所は肺です。腹式の場合、呼吸によって横隔膜が上下するため、それが下に押し下げられたときはお腹が膨れてくるのです。ときどき勘違いして、お腹を動かそうとする人がいますが、それは腹筋運動です。

 

横隔膜が上下することは、内臓のマッサージにもなります。こうやって日常的にマッサージすることで、内臓の機能を応援してくれます。

 

横隔膜が自然に上下しないとき、どんなことが起きているのでしょうか?

 

人の体は、骨と、それを支える筋肉を使うだけで、立てます。このときに使う筋肉は緊張筋と呼ばれ、赤い色をしていることから赤筋ともよばれます。主に下半身に多く、緊張していることを感じない筋肉です。いちいち「緊張してるー」と感じたら、立っていられませんから、上手くできています。

 

でも、いろんな理由や事情により、たいていの場合、骨と最小限の筋肉で立てていません。こうなると、体はその人を立たせることを優先させるため、本来使う必要のない筋肉を固めて、骨のようにして支えようとします。いろいろ固めるなかで、横隔膜もギュッとしてしまうと、呼吸しても動きませんよね。

 

防衛本能なので、このがんばりには「ありがとう」と感謝を伝えたいところですが、緊急事態が続くと負担が大きすぎます。太極拳で体を整えていくのは、この無駄な緊張に気づいてやめていく過程でもあります。

 

次は、鼻呼吸です。

 

現代人は、やわらかいものばかり食べていて、あごや口が弱くなりがちです。無意識に口がだらん、と開いてしまうのは、このためです。さらに胸式で浅い呼吸だと、たくさん息を吸おうとして、口を使うこともあるようです。

 

本来、口は食べるところ、鼻は息を吸うところです。口から吸ってしまうと、いろいろ不都合が出ます。

 

口が乾燥して、唾液が出にくくなり、

唾液が出ないことで、食べたものの殺菌が不十分になり、胃が弱ったり、

いろんな菌が途中で防御されずにそのまま肺に入り、風邪をひいたり、です。

 

太極拳では、口を閉じて、舌は上あごにつけ、鼻呼吸をします。

 

そう言われても、無意識にだらーん、と開いてしまう人は、口を動かす体操が、おすすめです。以前、テレビでお医者さんが、インフルエンザの予防として、口を大きく開けて「あ・い・う・べーっ」と言う体操を紹介していました。だらーん癖のあった人も、これで解消されていましたよ。

 

体を整えたら、次は心です。

 

心がわさわさ落ち着かない状態だと、交感神経を刺激し、胸式に傾いてしまいます。心は静かに、穏やかに、です。(整え方の一例は、上にもリンクをはった武当山日記:站椿功がもたらす「喜悦」に、書いています。)

 

体と心を整えれば、結果として自然にでてくるものだという点で、わたしは”方法”ではないと思っているのですが、その過程を方法だと呼ぶことも、あるかもしれません。

 

太極拳での呼吸については、もうひとつポイントがあります。

 

いつ吸って、いつ吐くか、です。自然であれば、呼吸は自ずと出てくると言ってしまえば、その通りですが、何が無駄な力を使うことになるのかわかっていないと、難しいですよね。

 

息を吐いたとき、吸ったとき、どちらが緊張すると思いますか?

 

吸ったときではないでしょうか。体が膨らむと、多少ではあっても、緊張は起こります。

 

このため、太極拳で攻撃する動きのときは息を吐き、その準備をしているときは吸うことになります。これだけは、原則というか、法則のようなものと言えるかもしれません。

 

でも、あくまで原則です。

 

ときどき、「ここは吐く場所だから」と、息が切れているのに、吸うのを我慢してしまう人もいます。苦しいですし、体が余計緊張しますよね。本人は必死、まじめなのですが、悲しいことに、これでは本末転倒です。

 

だから、息が続かなくなったら、そこで吸ったり吐いたりしてもいいのです。体が楽であることの方が、優先です。

 

いろんな本を読んでいると、ときどき「呼吸は自然で」という文章にあたります。「先生に呼吸を聞いたら、『自然』としか答えてもらえなかった」というものも。

 

「なら、なんでもいいのか」とも読めてしまいますが、シンプルな答えでありながら、奥が深い答でもあります。ふつうの生活の中では、不自然であることが、普通だからです。人はどうも、無駄なことをするほうが得意みたいですからね(わたしも含めて)。

 

こんな風に、わたしにとって呼吸は、ひとつの結果だったり、体や心の緊張を教えてくれるサインだったりしたわけですが、最近、気づいたことがあります。

 

6年くらい前、站椿功をしているときの1分間の呼吸は、6−7回でした。その後、あまり回数は気にしていなかったのですが、最近は3−4回になっていました。深くなったのかしら。ちょっと、いえ、とっても、すごく、うれしい。

 

 

☀「陽だまり」とは

「陽だまり」のイメージは、縁側にのんびり座り、暖かいお日様の光が射しこみ、ぬくぬく、まどろむような時間と空間です。縁側は、なくても生活できますが、あると居心地が良く、今、とても失われている”あそび”や”ゆとり”だと思うのです。モノも置かれておらず、いつもキレイで、りん、とした印象もあります。太極拳を通して、陽だまりのような場を創っていきたいと思っています。

 

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いしい まゆみ(道号:静慧 / みんみん)

太極道家

体と心が目覚める太極拳(http://minminkung-fu.com/)

講座のご案内は、こちらからどうぞ

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