OKバジさん

2018.07.28 Saturday

(本文と無関係ですが、武当山の朝)

 

先日、OKバジさんにお会いして、お話を伺う機会に恵まれました。

 

本名は、垣見一雅(かきみかずまさ)さん。今年で79歳、これまで20年以上ネパールのパルパ郡で支援活動を続けてこられています。

 

まなざしが美しく、一人ひとりの顔をしっかり見て話す方です。

 

組織も作らず、オフィスも持たず、ひとりで支援してこられました。OKバジ(OK Baji)というあだ名は、"OKおじいさん"、という意味で、なんでもOKと言っていたことから、つけられたとか。

 

「わたしは御用聞きです」と、毎日あちこち歩いて回るため、日々の寝床は毎日違います。高齢になってこられた垣見さんを心配して、村人たちが家を建てたそうですが、「ほとんどいない」とか。

 

ネパールと縁が出来たきっかけは、「エベレストを見たかったから。」でもそのとき、登山中に雪崩に遭い、垣見さんの荷物を持っていたポーターさんが亡くなりました。

 

「借りができた」というような表現をされていたと思いますが、その後にポーターさんの村を訪ね、貧しく厳しい現実を知ることになります。

 

冬なのに穴だらけの薄いシャツで、寒さに震える子供たち。ひどいやけどをしても、お金がないため放置して、ひじの内側がくっついてしまった人。子供たち、特に女の子は、小学校にさえ行かせてもらえなかったり。貧しいために働き手として数えられることもありますが、親世代の教育への理解がなかったことも、あるようです。

 

目の前にいる人たちを助けたい、という思いから始まりました。その思いが、今でも続いています。

 

「自分はパイプ役だ」とおっしゃるとおり、活動資金は寄付で集めます。ひとりの子供が学校に通うためには、1か月50円あればよいのだとか。それで必要なサンダル、ノート、ペンを用意できるのだそうです。1年で600円ですよね。

 

診療が必要な人への援助もします。最初は診察代を渡したそうですが、病院に行かずに家族のお米代にしてしまう人がいたため、病院に自分の口座を持ち、垣見さんが書いた手紙を持って行けば診察を受けられるようになっています。

 

これまでに建てた小学校は、200を超えるそうです。創立記念日には呼ばれてスピーチに呼ばれるため、それだけでも大忙しです。その貢献は、ネパール国王からも表彰されているほどです。

 

「組織も持たず、どうやって......」と驚きますが、垣見さんは「援助活動は、はがき一枚あれば、できます」と言うのです。

 

寄付をいただいた方への報告はがきです。でもこれが、ただの報告書ではありません。

 

Aさんから1000円の寄付をいただいたら、その1000円を使って何をしたか、たとえば「20人の子供が1か月学校に通うための費用にあてました」と書いて、その子達が笑っている写真などをつけて、送ります。

 

報告の数、なんと1年で1200通ほど。「Bさんにいただいた1万円は〇〇に使いました」など、すべて個別の内容です。

 

寄付は、現金だけではありません。「退職してお金はないけれど」と、きれいなしおりを作ってくださる方、闘病中にアクリルたわしを作ってくださる方なども、いらっしゃいます。しおりを手に喜ぶ女の子たちの写真つきの報告書が届いたら、なんと、うれしいじゃないですか。

 

ひとりの力を、ものすごく考えされられました。

 

「オフィスも持たないから、いただいた寄付は全額支援に回すことができる。」もちろん経費はかかりますが、それも「これは切手代に使ってください」とか、「これは垣見さんの洋服代にしてください」と、寄付してくださる方がいらっしゃるのだそうです。

 

「日本から技術者を連れてきて、大がかりな支援プロジェクトをすることもありますよね。でも彼らに聞くと、『ネパールにも技術者はいる。足りないのはお金だ。』と言うのです」と話されていました。垣見さんひとりだからこそ、現地の方の助けを借りて、協力して活動を続けてこられました。「申請が必要なものも、みんな現地の人にお願いする」と、飄々とおっしゃいます。

 

活動を通じて、喜びを得ているとおっしゃいます。「寄付をいただいて、支援することで感謝されたり、寄付してくださった方にも喜ばれたり、それはすごくうれしい。」と。何事もそうかもしれませんが、使命だけでは、長くは続きませんよね。

 

アクリルたわしやしおりを作ってくださる方は、「自分の生きがいです」と、おっしゃるそうです。垣見さんは、「必要とされることって、人にとっては大事ですよね」と話されていました。

 

最初の頃は、寂しい思いをしたこともあるそうです。診察を受けさせようと病院に送った後、治療が終わっても何も言ってこなかったり。「日本人としては、お礼は言いますよね。それが何もなくって」と。

 

でもそんなとき、「OKバジ、よかったね。今、徳を積んだよ」と言ってくださる方がいたのだとか。

 

そして、感謝の心がないわけではないのです。

 

ある日、いつものように歩いていたら、駆け寄ってきた人が、「あのときに助けていただいた子が、こんなに大きくなりました!」と言うのだそうです。何年もたっていたそうですが、忘れていないのですね。ほかにも、「卵、好きでしょ。家で取れたから」と持ってきてくれたこともあるそうです。

 

感謝のしかたの違いというのか、人間関係のとらえ方の違いというのか、何かが違うようです。

 

できる人が、できることを、できるときにするの、ということでしょうか。これをやってもらったから、それにお礼をいって、お返しをして、というものではないようです。

 

危ない状況にあったことも、あるようです。マオイストという武装闘争を行う組織と、政府との間で内戦が起きたとき、ボランティア団体は活動ができなくなり、国外に退去したそうです。現地に残っていた垣見さんは、マオイストから見ても不思議な存在だったようで、その長は、「お前の目的はなんだ。」「あなたは、目の前に倒れた人がいたら、助けようとするでしょう。わたしがやっていることは、それです」というように答えると、納得してもらえたのだとか。

 

「今、思いかえしても、あの言葉はとっても良かったと思うのですよね」とおっしゃいますが、その通りに行動してきたからこその言葉で、それは立場を超えて伝わったのかもしれないと、思います。

 

さらにそんな垣見さんを、危険だったり難しいことがあるたびに、村人たちがみんなで守ってくれたのだそうです。

 

かわいいエピソードもあります。柿の種をあげたときは、村人みんなでひとり1つずつ、ピーナッツは半分に割って分けあったのだとか。飴玉を子供にあげたときは、「ひとつしかないから、ここで食べていきなさい」と言ったにもかかわらず、外に持って出て、ひとつを割って、子供たちみんなでちょっとずつ食べたのだそうです。それも、「いちばん小さな子に、いちばん大きなかけらをあげて、本人はいちばん小さなものを選ぶんだよ。」と。

 

分け合う心が豊かだなぁ、と感じます。そして想像するだけで、なんだかとっても楽しそうです。

 

「日本に帰ると、毎日が五つ星ホテルに泊まっているようですよ。蛇口をひねれば水が出て、飲んでも安全だし、お湯だって出るから、シャワーも浴び放題、電気もある。」日本に暮らしていると当たり前のことが、いちいち感動の対象になります。

 

何もないところの方が、ある意味では豊かに暮らしているというのは、わたしも中国の武当山に行くたびに思います。お天気がいいな、とか、ごはんがおいしいな、とか、日常、生きていること自体が、うれしくて楽しいのです。(ただし武当山は、水も出るし、お湯も出ます。電気もあります。断水や停電が、ときどきある程度です。)

 

垣見さんは、「感謝日記をつけたらいいですよね。毎日3つ、感謝を書くの。」と言います。垣見さんは3つどころではなく、ものすごくたくさんになるそうですが、「息ができる、も、入ります」と。そういうことですよね。息ができることって、当然のように感じますが、こうして生きていること自体、ミラクルと言えば、ミラクルです。

 

垣見さんのような方にお会いすると、ひとりの力はすごいことを、あらためて感じます。そして垣見さん自身は、とっても軽やかで、楽しそうです。

 

勇気がでますよね。希望も、ぴかーんと明るく見えてくるようです。

 

喜びから行動しよう。そうすれば、きっとうまくいく。

 

 

☀OKバジの著書などは、こちらから。

 

 

(注:お話を録音してはいませんので、「」内の言葉は、記憶にあるものです。言葉の表現が多少違うこともあると思いますが、その点は、ご勘弁ください)

 

 

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いしい まゆみ(道号:静慧 / みんみん)

太極道家

体と心が目覚める太極拳(http://minminkung-fu.com/)

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