タオの生き方と、太極拳

2018.05.25 Friday

(中国、武当山で。站椿功のお稽古)

 

タオの生き方とは、「無為自然」、自分から意識的に生み出そうとしないことを言います。

 

無為とは、何も為さないこと、自然とは、自ら然り=あるがまま、です。

 

老子は「道徳経」の第7章で、次のように言っています。

 

天地が永遠に続いていくのは、自分から命をのばそうとしないからだ。
そういうわけで聖人は、わが身を後まわしにしながら、かえって先になり、わが身を度外視しながら、かえってその身を保全する。
わが身をどうにかしようという意識がないからであろうか。
だから自己を実現できるのだ。

(「老子」蜂屋邦夫訳注 岩波文庫より、抜粋)

 

ここで言う「聖人」とは、タオ(道)を知って、道に従う賢者のことです。

 

”私(我)”がない、無為自然な状態は、自分を捨てることで、状態に応じて適応し、変化できます。わが身を後まわしにするとは、人に従う=人を受けいれること。それが闘争から調和を導く第一歩です。

 

うつくしい姿ですよね。

 

......でも、ちょっと現実離れしているような気がしませんか?

 

いま、老子の「道徳経」を読むクラスを開催しているのですが、この前、生徒さんが「老子の思想に触れて、癒されて、また争いのある現実に戻る」という話をされていました。

 

「これは理想で、日常とは違う」というご意見も。わかる気がします。

 

でも、老子は日常に活かせないことを、つらつらと語っているわけはないと思うのです。

 

人に従い、あるがまま、というのは、何にもしないこととは違うと思います。それは、”老子の教えを体で表現するもの”とも言える太極拳で、体験することができます。

 

太極拳は、武術ですが、自分から攻撃することはありません。武術の”武”は、”戈を止める”と書くとおり、起きてしまった争いを終わらせるためのものです。相手から攻撃されたときに、反応します。

 

そのとき、相手から向かってきた力に対して、反発するわけではなく、受容します。別の言葉でいうと、吸収、です。

 

相手から打たれるがままの状態は、受容とは言い難いですよね。痛いですし、怪我したり、場合によっては命を落とすかもしれません。ここに相手と自分の”共存”はなく、調和もありません。

 

ではどうするか。

 

”天地とつながる立ち方”を守り続けることです。

 

太極拳の立ち方は、ただ力を抜いて、ぼんやり立つわけではありません。一般的に思われているリラックスとは異なります。

 

足で大地を柔かく押して立ちます。体重に、下に押す力がプラスされることで、下に向かう力が大きくなります。人が立つときには、下に向かう力と均等の力が上に向かっているため、上に伸びる力も大きくなります。これで、縮こまっていく背骨の関節に隙間を空けていくのです。

 

站椿功(立禅)を歌で表現している中国語があるのですが、その冒頭は「头顶脚踩身空灵」です。”頭は上に伸び、足は大地をしっかりつかむと、体は空(くう)になる”です。「頂」という中国語のもともとの意味は、英語でいうとto equal、つまり均衡することです。大地を足で押して、下に向かう力に均衡するように、頭が上に伸びる、という意味に捉えています。

 

これを縦に伸びる力、「竖劲 Shù jìn」と言っています。自分の中心に、しなやかな細い軸がある感覚です。軸というより、個人的には、天と地を結ぶ”縁(えにし)というイメージが、好きです。

 

細くしなやかな軸(縁)が中心にあると、残りの体は、柔かいまま存在することができます。水が入ったビニール袋は、机の上にぽんと放置するとぐだぐだですが、細いしなやかな串を真ん中に通すと、やわらかいまま、しっかりしますよね。そんなイメージです。

 

柔かいから、押されれば、形は変ります。でも、天地とのつながりである縁(軸)は、しっかりあります。人に従い、あるがまま、ではありますが、人に振り回されたりはしません。

 

天地につながるとは、地球とともに、宇宙とともに動く、という意味です。太極拳とは、自ら動かず、地球や宇宙と共に動くことです。それが「あるがまま」「自然=自ずと、然り」です。

 

太極拳のクラスでも、老子のことばを読むクラスでも、これを体感するようなお稽古をします。「老子のことばは理想で、現実とは違う」とおっしゃっる方も、こんな体感から日常に結びついていくことがあり、そんなときは、とっても嬉しいです。

 

体感してなんぼ、とはこのことです。もちろん、読んで理解することも大事ですけどね。

 

さて、この縦に伸びる力が、より大きな力を外に向かって出すことにもつながると思っているのですが、長くなってしまったので、それはまた次回、書きますね。

 

「老子のことば」クラスは、6月から「タオを生きることば」に変えて、引き続き開催します。6月は6日、20日の夜です。詳しいことは、こちらの講座案内からご覧ください。

 

 

【特別クラスのお知らせ】

5月27日(日)13:00-15:00は「おためし体験〜みんなが知らない太極拳のひみつ」です(千葉県香取市)。詳細とご応募は、こちらから。

6月10日(日)14:00-16:30は「みんなが知らない太極拳のひみつ」(3)です。詳細とご応募方法は、こちらから。

6月17日(日)14:30-16:30は「太極扇を体験しよう(第8回)」です。詳細とご応募方法はこちらから。

 

 

(武当山の雷神洞にて。朝の站椿功)

 

☀「陽だまり」とは

「陽だまり」のイメージは、縁側にのんびり座り、暖かいお日様の光が射しこみ、ぬくぬく、まどろむような時間と空間です。縁側は、なくても生活できますが、あると居心地が良く、今、とても失われている”あそび”や”ゆとり”だと思うのです。モノも置かれておらず、いつもキレイで、りん、とした印象もあります。太極拳を通して、陽だまりのような場を創っていきたいと思っています。

 

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いしい まゆみ(道号:静慧 / みんみん)

太極道家

体と心が目覚める太極拳(http://minminkung-fu.com/)

講座のご案内は、こちらからどうぞ

 


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