陽だまりの人 Vol.2: 小杉 瑞穂さん(曹洞宗僧侶)

2017.05.09 Tuesday

(小杉瑞穂さん)

 

インタビュー「陽だまりの人」シリーズ。わたしが目指している”陽だまり”な世界観を感じる方のお話を伺っていきます。

 

第2回目は、曹洞宗の僧侶である小杉瑞穂さん。小杉さんは、坐禅の”つらい、きびしい、難しい”といったイメージを払拭し、柔かく穏やかな坐禅をより多くの人に体験してもらうためにも活動されています。先日は、わたしと一緒に太極拳とのコラボイベントも開催していただきました。

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☀普段のお仕事

曹洞宗は全国に15,000ほどのお寺(宗教法人)があります。統括している本部が都内にあり、現在はその1部門である総合研究センターに在籍しています。全国から試験を受けて集まった25〜35歳前後、15〜20名の僧侶の卵のみなさんを3年間お引き受けして、禅の教えをどのように伝えていくかなどの学習と実習を積んでもらっています。先生、と呼ばれていますね。

 

 

☀ここ数年の坐禅を取り巻く状況の変化

駒澤大学内の坐禅堂で研修生が坐禅教室を開いているのですが、この5年でずいぶん参加者が増えました。25年前は1回に10人ほどでしたが、一時は90人ほどに増えました。現在は30〜40人で、熱がおさまったというより、坐禅をできる場所が他にも増えたために、分散しているとみています。

 

 

☀自分にとっての坐禅の変化

若い頃の私の坐禅観は、僧侶であるからやらねばならない義務のようなもので、それゆえ、きつくて辛いと感じることが多かったのです。トラウマになっている僧侶も多いのではないかと思います。私も最初はそうだったのですが、その中で「坐禅っていいな」と自然に感じる体験ができたことは大きかったですね。

 

1つ目は、大学生の時にやっていた児童教育部の活動でのことです。活動はハードで、毎週、都内のお寺で日曜学校を開催し、夏休みは長い時で3週間続けて地方を巡回し、子供たちを相手に人形劇やレクリエーションゲームをやる毎日でした。常に誰かと一緒にいる生活にストレスを感じていた中、ふと時間が空いて、お寺の縁側にぼーっと足を組んで坐り、外を見ていたことがありました。誰もいない、風そよぐ、静寂な時間。その時の清々しさ、心地よさが忘れられない体験となったのです。

 

2つ目は、總持寺(曹洞宗大本山總持寺)で、10か月修行したときです。厳しい指導で、最初の3か月は生活や作法をひたすら叩き込まれます。半年たって生活にも慣れ、ゆるやかに感じられてきたある日、夜の坐禅の時間に「今日は自由にしていい」と言われました。やってもやらなくても良いというのです。のんびりお風呂に入った後、修行仲間と自然に「坐禅する?」という流れになりました。それまでの坐禅は、寝ているところを見つかると、警策(きょうさく)で肩を打たれて強制的に起こされるのが当然なことだったのですが、そのときはもちろん監視などなく、すごく自由でした。開始も終わりも自由、自分で決められます。そのときに「坐禅っていいな」と思ったのです。

 

大切なのは「自分が選んでやっている」ことなのでしょう。させられる坐禅から自覚的な坐禅に、見方が大きく変わりました。

 

その2つの体験の後、スタッフとして参加した坐禅会で、自分も坐る機会がありました。そのとき何かの本に書いてあった「慈悲の瞑想」を思い出したのです。

 

「自分が幸せでありますように」から始め、「近くにいる人が幸せでありますように」と範囲を広げていくことで、自分の感覚が広がっていきます。イメージなら、地球規模まで広げることは簡単です。そのときに「そうなのか〜!」という発見がありました。それは「つながっていないものは、ない」という全存在での気づきでした。

 

 

☀「坐禅会」の変化のはじまり

坐禅は、目的や意味を持たせるものではありません。段階論ではなく、「こう坐るのです」と説明したら、それで終わりです。あとはただやるだけです。こんな境地になる、という説明もしません。そのため、一般の方にはとっつきにくいものに感じられてしまいがちです。

 

一般の方は修行僧とは違うので、坐禅を伝える方法や説明にも、もう少し工夫があってもよいと思うのですが、曹洞宗は「型」を伝える方法を大切にしてきており、誰に対しても僧侶と同じような坐禅指導法でやってきました。

 

そんな中、6年前に研修センターのプロジェクトで、30〜40代の女性をコアターゲットにした”朝活禅”の企画がスタートしました。コアターゲットの設定というマーケティング的なことを土台として始めたことが、まず画期的でした。そして内容も「また参加したい」と思ってもらえるような、新しいカタチを考えていったのです。そのひとつはカルチャーセンターのような連続講座です。より丁寧に坐禅作法をお伝えすることができるため、身につきやすく続けやすくなります。もうひとつは禅の食事作法でお粥をいただいたり、写経の時間や掃除を組み合わせて、変化を持たせたものです。今までにないものにしたい、という思いが強かったですね。

 

 

☀藤田一照さんとの出会い:身体論からの坐禅

その頃、現在では曹洞宗の国際センターの所長をされている藤田一照さんに出会いました。アメリカで長く坐禅を指導されていた方で、1時間ほどゆっくりストレッチしてから坐禅する会を開かれていたのです。藤田さんは「どうやったら体の落ち着きを見出せるのか」という身体論から坐禅をとらえていらっしゃいました。実際に来ていただいて教えていただいたのですが、そのとき「骨盤を立てて坐るのですよ」と言われたときには、まさに目からうろこでした。それまでは足を組むところから坐禅が始まると思っていて、骨盤がどうなっているかなど考えたこともありませんでした。じゃあ足はどうするのか?というと、足を組むことは骨盤を楽に立てるひとつの方法なのだ、とわかってきたのです。酌んだ足がもう片方の足を押すという、最初は苦痛にしか感じられなかったことが、実はどれだけ体に安定感をもたらしていたのかも、わかってきたのです。うわー、面白い!と思いました。

 

そこから俄然、興味がわいて、坐禅における身体の研究をはじめました。いろいろなボディワークをネットで検索したり、本を読んだり、体験したり、そのひとつとして太極拳もやってみました。太極拳はキツくないですし、自分を見つめるものなので、親和性があると思っています。いろんなことをやってみましたが、やったことすべてが今につながっていると思います。

 

 

☀坐禅会への思い

コラボイベントをするようになったきっかけは、人と交流する中で、わたしが坐禅をすごく楽しそうに話していたのが大きいようです。自然に「一緒にやりましょうか?」という流れになりました。最初はヨガのインストラクターの方と一緒にやったのですが、坐禅する前に体をほぐすことは必要なので、ヨガでほぐしてもらえるなら、それはとても都合がいいじゃないか(笑)と。

 

私が行っている坐禅イベントの目的は、「坐禅未経験者を減らす」ことです。コンセプトは「もう一度やりたくなる坐禅」です。だからこそ、なるべくゆるやかに、おだやかな場づくりをしています。

 

坐禅は、初回にすべてが入っています。足りないものは、ありません。私は自分も楽しみながら、その”初回”を提供したいのです。実際は100回目でも、毎回が”初回”ですけどね(笑)。同じ経験は、2度とありません。

 

私の坐禅の会にいらしてくださる方の中には「坐禅は興味があるけれども、お寺は敷居が高すぎて」とおっしゃる方も多くいらっしゃいます。どうも近寄りにくいようなので、こちらから出かけていってお寺ではないところ(カフェ・古民家・公園・市民会館など)で坐禅の場を開いていたのは、正解だったのですね。

 

坐禅は、私が坐っているのではなく、坐らせてもらっているのです。床があって、「地球ごと坐っている」と感じています。そう思うと、ものすごい安定感じゃないですか?

 

(4月に開催した「青空坐禅と太極拳の会」)

 

(文責:いしい まゆみ)

 

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☀プロフィール

小杉 瑞穂さん

曹洞宗僧侶。曹洞宗大本山總持寺にて修業。現在、曹洞宗総合研究センターにて、若手僧侶の育成に携わり、現代における禅の普及方法について研究。特に坐禅のつらい、きびしい、難しいといったイメージを払拭し、柔かく穏やかな坐禅をより多くの人に体験してもらうために活動している。

 

イベントこーさん&みんみん 青空坐禅と太極拳」の開催報告は、こちらからご覧いただけます。

 

≪みんみんのインタビュー後記は、こちらからご覧いただけます≫

 

 

 

☀「陽だまり」とは

ブログタイトル「みんみんの陽だまり太極道日記」の「陽だまり」のイメージは、縁側にのんびり座り、暖かいお日様の光が射しこみ、ぬくぬく、まどろむような時間と空間です。縁側は、なくても生活できますが、あると素晴らしく居心地が良く、今、とても失われている”あそび”や”ゆとり”だと思うのです。モノも置かれておらず、いつもキレイで、どことなくキリリとした印象もあります。太極拳を通して、こんな時間と空間を創っていきたい、陽だまりにつつまれて暮らす人、心身ともにゆとりある人を増やしたい、と思っています。

 

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いしい まゆみ(道号:静慧)/ みんみん)

太極道家

体と心が目覚める太極拳(http://minminkung-fu.com/)

講座のご案内は、こちらからどうぞ

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