武当山日記:可能性を狭めない
2019.10.25 Friday
(武当山で。いちばん左が、先生)
現在の先生(武当玄武派第十六代伝人:明月師父)からは、習うことはもちろんですが、生きる姿勢など、いろいろなことに気づかせていただいています。
おおらかで、よく笑い、真摯なお人柄のせいか、周りに集まる人も、ニコニコ、気持ちのよい人が多いです。
おかげさまで今回の滞在も、特別なことがなくても、普通がとても楽しい日々でした。いつも感謝です。
先生の教え方にも、影響を受けています。
先生の教え方は、生徒の可能性を限定しない、という印象があります。可能性を信頼しているとも言えます。それには、いつも勇気づけられます。
どういうことかというと、初心者でも、長年やっている人でも、同じように教えるのです。
今回で言うと、まず30分の站椿功が1日2回組み込まれていました。站椿功は、”杭を打つように立つ”お稽古で、腕の形はいろいろです。今回は、木を抱えるように腕を前にあげるタイプです。
足は、膝に負担のかからないやり方を徹底するため、つらくなることはあまりありませんが、この腕のタイプは、肩や腕が痛くなりがちで、ちょっと手ごわいです。
途中で腕を下ろしても、怒られるわけではないので、途中で下す人もいますが、結構みんな、がんばります。
わたしも痛くなったときもありましたが、みんな一緒なので、続ける勇気をもらえます。腕は、上げ続けることができました。
お稽古は、午前と午後の他に、自主的に参加する早朝と夜もあります。そこでも站椿功をするため、多いときは1日に4回、合計で2時間やりました。
これまでにこんなに站椿功をやったことはなく、よい時間になりました。
站椿功は、腕を下げて立つだけでも意味があります。まず大切な縦に伸びる力を体得することができますし、骨の構造を活かして、無駄な力を使わずに楽に立てること、心を静めること、そして年齢とともに衰えてくる足を鍛えることなど、いろいろ役に立ちます。楽に立てると、心もほぐれるのですよ。
それに対して今回の腕を上げるタイプは、わたしのイメージでは、”バランスとパワー”です。
腕を上げるためには、命門(めいもん、背中側にあるおへその裏のツボ。)を後ろに引きます。膝は前に曲げるのではなく、膝より上が後ろに行くことで曲がり、太極拳で言う”坐る”姿勢になります。
この命門と腕で、前後に伸びるバランスを取り、肩やひじなど腕の関節の隙間が空いていきます。前提として、バネのように縦に伸びる力は必要です。
縦に伸びる他に、前後左右、四方八方にも広がる力が生まれます。バルーンがぷんっと膨らむような感じですが、もっと強く、パワーが外に広がる感じです。
長くいる中国人の生徒さんからも、「腕が痛い」という声が聞かれたりしました。どこかに緊張があるからで、首が縮んでいたり、命門と腕のバランスが取れていなかったりなど、原因があります。
バランスは、とても繊細です。続けていくうちに、だんだんその繊細さをキャッチする力(感覚)がついてくる気がします。
これを、短期で来る人、初めての人も含めて、みんなにやらせるというのは、なんともチャレンジングではないでしょうか。
しかもときどき、30分よりも長いこともあります。わたしが到着した前日、土曜日の午前中は、2時間、これだけをしたそうです。
先生が、それだけ「これだ」と思っている現れだと思います。
太極拳を習っているときも、同じです。最初から、必要なことは全部教えます。
ただし、動きを作りだす要素が全部分解されていて、とても明確です。この明確さは、ここ3−4年、お会いするたびにぐんぐんと伸びている気がします。わかりやすいです。
”動き”が分解されているのではなく”、”動きを作る要素”が分解されている、と書いたのは、見た目の動きではなく、こういう力が働いて、その結果こんな動きになる、ということだからです。
太極拳を教えるとき、「まず形をおぼえて、次に〇〇、そしてもっと細かく〇〇を」と、段階的に教える方もいらっしゃいます。どれが正解というわけではなく、人それぞれでいいと、思っています。
「初心者だから、まずはこのくらいで」というのは、ごく当然のやり方のように感じます。無理をかけすぎない、という配慮もあるでしょう。
自分の練習ではすることでも、「生徒にさせると嫌になってしまうかもしれないから」とおっしゃった方もいらして、それも、否定できません。
でも、今の先生の教え方を観ていると、「初心者だからこのくらい」と狭めることは、ある視点から視たら、その人の可能性を限定してしまうことになるのかもしれないと、思うのです。
優しく親切なようで、実は信頼していない、とも言えます(ただし、悪気はもちろん、ありません。)
信じる勇気、と、先生が気負っているとは思えず、自然体のまま「いい」と思うことをされているのだと思いますが、
気づかなうちに「このくらいから」と相手の可能性を狭めかねないわたしには、それが”勇気”のように映るのかもしれません。
そして、勇気をもらえるのですよ。いいと思うことをやろう、と。
そして、相手を信じることの大切さを、思い出させてもらえます。
これまでがどんな人で、どんな経験があるかで人を見るのではなく、
今、目の前にいるその人を、いつもまっさらな目で見たいと、思っています。教えるときだけではなく、日々の生活の中でも、です。
【これからの特別クラス】
☀10月27日(日)14:30-16:30「はじめての形意拳」 ※詳細とお申込方法はこちら。
☀11月 2日(土)14:00-16:30 「じんわり温まる温灸メガネを作りましょう」 詳細とお申込み方法はこちら。
☀11月10日(日)14:30-16:30「はじめての形意拳」 ※詳細とお申込方法はこちら。
☀11月16日(土)14:00-16:30「ホントにはじめての武当太極拳・気功」 詳細とお申込み方法はこちら。
☀11月17日(日)14:00-16:30「たのしい太極扇」 詳細とお申込み方法はこちら。
☀11月24日(日)14:00-16:30「やさしい站椿功:しあわせを呼ぶ7つのステップ」 詳細とお申込み方法はこちら。
☀「陽だまり」とは
「陽だまり」のイメージは、縁側にのんびり座り、暖かいお日様の光が射しこみ、ぬくぬく、まどろむような時間と空間です。縁側は、なくても生活できますが、あると居心地が良く、今、とても失われている”あそび”や”ゆとり”だと思うのです。モノも置かれておらず、いつもキレイで、りん、とした印象もあります。太極拳を通して、陽だまりのような場を創っていきたいと思っています。
...☆...☆...☆...☆...☆...☆...☆...☆...☆...
いしい まゆみ(道号:静慧)/ みんみん)
太極道家
講座のご案内は、こちらからどうぞ。
- 武当山
- 18:04
- comments(0)
- -
- -
- -
- by 静慧(Jing Hui)/ いしい まゆみ