頭と心は嘘をつくけれど、体は嘘をつかない

2020.04.18 Saturday

(Photo by Xie Okajima)

 

≪”おうちで過ごそう”応援企画≫として、今すぐカンタンにできる体操を動画でご紹介しています。

 

最初は、不要不急の外出を控えるようになって、わたしも太極拳のクラスのお休みを決め、うちで過ごす時間が多くなってきた頃、「何かできることはないか」と思って、カンタンにできる体操をテキストで発信してみました。

 

そのなかで友人から「難しいから動画にしてほしい」というリクエストもあったのですが、最初は「そこまで手間はかけたくないな」と思っていました。

 

でも緊急事態宣言が出る頃、とつぜん、クラスで準備運動にもしている、ぴょんぴょん跳んで、パタパタする体操を紹介しよう、と思いつきました。


動画リクエストされていなかったら、こんな気持ちにならなかったかもしれません。言ってくれて、ありがとう。

 

短い時間で体も温まるこれは、みんな「く、苦しい」と言いながら、自然と笑顔になります。

 

「今、必要なのは、笑顔だ。」という思いと、


ぴょんぴょん跳んでパタパタするわたしの様子を見て、「アホだな」と笑ってくれたらいいな、とも思いました。

 

くだらなくても、笑えるなら、それだけで素晴らしいじゃないですか。

 

それともうひとつ、頭がぐるぐる動いて不安にもなりがちなときだからこそ、体を動かしてほしかったこともあります。

 

わたしは体に、絶対的な信頼を持っています。体は、嘘をつきません。

 

頭や心は、嘘をつきます。

 

頭は、まだ起きていないことを不安に思ったり、人の気持ちを勝手に作り上げてしまったり(妄想ですね)、いろいろと派手に暴走します。

 

心も、嘘をつきます。「今日はくたびれた、もう動けなーい」と思うときでも、とりあえず体を動かしてみると、意外と元気に動けたりします。こういう場合は、体ではなく、心がくたびれているのだと思います。

 

ただ心の場合、本心とか、真心とか、深いところにあるものを指す場合は、嘘はつきませんけどね。人とか場合によって、”心”の定義は違うかもしれません。

 

こんなに頼りない頭と心に比べて、体は絶対に嘘をつきません。

 

だから、わたしは体を動かすことを大事にして、嘘をつかない体の声を聞けるように、自分の感覚を育ててきました。

 

それは、情報や、いろいろな人が口にする不平不満に影響されてしまいそうになる時期に、

 

心を惑わされず、自分を見失わず、大切にしたいことを守りながら、行動を決めていくことに役立っています。

 

こういうとき、「やっぱり、太極拳でしょ。」と、思います。生徒さんにも、「太極拳で習ったことが、役立っている」と言ってくださる方もいらして、それはすごくうれしいです。

 

でも「みんな太極拳していればよかったのにね」と言っても、現状には全く役に立ちませんし、


「今からみんなで太極拳しましょ」と言うのも、ちょっとそぐわない感じです。

 

カンフー(功夫)のひとつである太極拳は、時間がかかります。功夫の本来の意味が、時間をかけて磨いていく技とか、それをする人、という意味でもあることにも、それは現れています。

 

こんなときだから、太極拳に興味のない人でも、運動に苦手意識がある人でも、「やってみようかな」と、やる気になりやすいものにしたかったのです。

 

基本は、短いもの、難しくないもの、スペースを取らずにできるもの、です。

 

動作としては、よくある、ありふれたものだと思いますが、

 

わたしがずっとやってきて、「これはこういうやり方をしたら、こういうところにいいな」と実感しているものばかりです。体がほぐれるもの、巡りがよくなるもの、活力がわくもの、などです。

 

形には、ねらいというか、意図があります。そして「こういうプロセスをたどると、こういう形になる」という流れもあります。

 

でも、その意図やプロセスが抜けてしまって、形だけ広まってしまう動作も、わりとあるのです。

 

意図やプロセスが抜けたままだと、「なんだかやりにくいな」とか、違和感を感じます。そんなときは、自分の経験とか感覚を頼りにして、楽にできるやり方や、しっくりくる方法を探ります。


その結果として、今、「こうしたいなら、このやり方」と思っているものを、動画でご紹介しています。

 

もちろん、ただ動かすだけでも十分なのですが、やり方を間違えると、体を痛めてしまうこともあります。


意図とやり方がわかると、より安全にできますし、成果も出やすいですし、感覚も育ちやすいと思っています。

 

「こう思ってやると、こんな感じになるんだ」というだけでも、体験する前よりは、感覚は育ちます。ムクムクと。

 

体は嘘をつかないと言いましたが、体の声をちゃんと聞けるほど、多くの人の感覚は育っていません。そもそも、全身を連動させて、全身で生きている人も、そんなに多くありません。

 

たとえば「体幹が大切だよね」と言っても、頭だけの理解で、それがどういうことなのか、体でわかっていない場合も多い気がします。


それが悪いわけではないのですが、わかったつもり、より、


わからないことを、わからないとわかっていることは、大事だと思うのです。そういうことが、安心感とか、自分への信頼につながっていくのではないでしょうか。

 

嘘をついてしまう頭と心に加え、体の声が聞こえない状態では、自分の本当の願いなど、わかりようもありません。

 

すると今のように外の世界が騒がしい中で、振り回されてしまうかもしれません。無駄にくたびれてしまうことも、あるかもしれません。

 

そんなことにならないように、もっと体の声がきけるように、少しずつでも進んで欲しいと思っています。

 

「筋力がないから鍛えないとね」と言ったりますが、筋力が今のままでも、コツがわかると、体はもっと使えるようになることもります。

 

ある動作ができない場合、自分の体の能力(たとえば筋力とか)の問題というより、やり方がわかっていないことも多いのです。

 

ご紹介している中には、今のところ、ひとつだけ、17分くらいかかるものがあります。スワイショウという腕ふり運動です。おすすめは、1000回なのです。

 

ときどき太極拳のクラスでも準備運動にしていて、体をほぐし、巡りをよくし、心を静めるためにも、良いと思っています。

 

わたしの感覚ですが、700、800回くらいから体の感じが変わってくるため、1000回やって欲しいのです。一緒なら、みんなやりますが、ひとりだと、できる人はできるのですが、できない方もいらっしゃいます。

 

こういうことにミラクルはないので、やらなければ成果は出ません。でも、できない気持ちもわからなくないですし、「やらなければダメだよ」と、突き放す気持ちにはなれません。

 

「ならば、動画で一緒にやれば、できるのではないかしら。」と、思いました。


「先生の声と一緒にやりたい」という声があったことも、あります。

 

深く静かなところに入っているときに出る自分の声、好きなのです。それは、みんなが深い静かなところに入っていくこと、体をしっかり感じることの助けになる、と思ってます。


声も、振動ですからね。深く遠く、響いて届きます。

 

話は変わりますが、このシリーズ、庭で撮っているため、人の話し声や、配達の音、鳥やカラスの声、救急車のサイレン、掃除や炊事の音など、さまざまな生活音が入っています。

 

以前は「動画を撮るなら静かなところで」という思い込みがあったのですが、外の方が気持ちいいですし、外なら生活音があるほうが自然です。


いいところでカラスの合いの手が入ったりして、楽しいこともあります。

 

いいところで配達の車が止まり、ガラガラがっしゃーん、と音がしたり、ピーポーが巨大音になったときには、さすがに中断しましたけどね。自分の都合だけで、意のままにならないのが、この世で生きることです。

 

クオリティが、と顔をしかめる方もいらっしゃるかもしれませんが、おおらかに見てもらえると、ありがたいです。

 

クラスがお休みにならなかったら、こんな試みをすることもなかったかもしれません。そう思うと、これはこれで、いい時間を過ごしていると思っています

 

 

≪”おうちで過ごそう” 応援企画≫は、ご自宅でカンタンにできる運動をご紹介しています。

 笑顔と活力を失わないためにも、ぜひ。詳しくは、こちらから。

 

オンライン視聴できる動画レッスンを開始しました。

 遠方で通えない方、ご自宅でじっくり練習されたい方に。詳しくはこちらから

 

 

「陽だまり」とは

「陽だまり」のイメージは、縁側にのんびり座り、暖かいお日様の光が射しこみ、ぬくぬく、まどろむような時間と空間です。縁側は、なくても生活できますが、あると居心地が良く、今、とても失われている”あそび”や”ゆとり”だと思うのです。モノも置かれておらず、いつもキレイで、りん、とした印象もあります。人が集って、一緒にお茶でも飲んでなにげない話をして、ほっとする場所でもあります。太極拳を通して、陽だまりのような場を創っていきたいと思っています。

 

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いしい まゆみ(道号:静慧)/ みんみん)

太極道家

講座のご案内は、こちらから

 


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    からだの痛みは、自分を守るためかもしれない

    2020.03.19 Thursday

     

    からだの痛みは、つらいですよね。

     

    そのために、痛みを悪者にしてしまうことも、ありますよね。「なんでこんなことに」とか、「これがなければいいのに」とか。

     

    でも、なんとなく感じるのは、「からだは、常に自分を守ろうとする」ことです。

    痛みは、自分を守ろうとした結果であることも、あります。

     

    たとえば、土台になる足でみると、構造をうまく使えないために、それを補強する行動の結果が、痛みになることもあります。

     

    足は、下から、ひざ関節の上に股関節がきれいに乗っていれば、骨の構造で立つことができます。骨の積み重ねで見ると、ひざ下の骨(脛骨)の上に、ひざ上の骨(大腿骨)がきれいに積みあがって、その上に骨盤が乗る感じです。

     

    骨の構造がしっかりしていれば、あとは、支えるそれをための筋肉を、わずかに働かせればいいだけです。

     

    でも骨がきれいに積みあがっていない場合、積み木に例えると、下と上のずれが大きい場合、何かで補強する必要がありますよね。筋肉をかためて固定させようとしたり、つっかえ棒のように使ったり、するわけです。

     

    からだは、とにかく今、その人を立たせることに、全力を注ぐからです。

     

    その防御能力は素晴らしいのですが、問題もあります。

     

    からだは、よくも悪くも、今にしかいられません。今、危機に瀕しているところへの対処能力には優れていますが、これが続いたら結果の予測は、できないようです。

     

    つまり自分を守ろうとして、かため続けた場所は、ある日、限界を超えて痛みとなって現れます。そうなると、からだは「今、ここ痛いです。これ無理です(涙)。」と訴えてきます。せつないですよね。

     

    そう思うと、痛みは、嫌悪の対象ではなく、逆ではないかと思うのです。

     

    まず、「守ってくれて、ありがとう」

    そして、「無理させて、ごめんなさい」

     

    そして、「これからは、自分が守るから、大丈夫」と、伝えることじゃないのかな、と思います。

     

    その後は、頭の出番です。痛みのある場所から、必要であれば専門家の手を借りて、「これを続けていると、こんな痛みになる」と学ぶことができれば、根本原因から直していくこともできます。

     

    人の構造って、うまくできていますよね。

     

    頭は、頭だけクルクル動くと全く当てにならない、とよく思うのですが、実感をもとに働かせると、すばらしく上手く機能してくれます。

     

    ひとつ大事なことは、これが全てではありませんし、読んで頭では理解した気になっても、実際に動けないことも、あると思います。人は自分が納得しないと動かないからです。もしかしたら、痛みを、とことん憎まずにいられないことも、あるかもしれません。勧めたくはありませんが、憎いのが素直な気持ちなのであれば、否定するのはもっと体に悪いかもしれません。

     

    ものごとが解決するには、タイミングがあります。

     

    個人差があるところですので、一般的な話としてここに書くのは難しいですが、痛みに加えて、さらに自分を追い詰めるようなことがないように、無理しないようにしてほしいです。

     

     

    もうひとつ、痛みを超えていくために必要なことは、「この痛みは不要だ」と、体がちゃんと認識することです。

     

    生きていれば、からだには負荷がかかりますし、ゆがむこともあります。

     

    たとえば太極拳をすることで、その負荷やゆがみを、日々自分で調整することはできますが、限度があります。「これは自分では無理だ」と思ったときは、わたしも整体など、専門家の手を借ります。

     

    一般に、からだを使う人ほど、ゆがみやすいです。でも、自分の体をわかっている人は、治りやすいです。

     

    なぜなら、整体や針治療で「ここ、痛い!」と感じたとき、「この硬さ、要らないよね」と納得しやすいからです。他人の手は借りますが、その後は自己治癒力も働いていく気がします。

     

    わたしは子供の頃に側弯症を発症していて、その歪み自体は「大人になってからでは治らない」と、ずいぶん言われたのですが、ほぼ問題なく改善しました。その話を整体師さんにしたとき、「あなたは、自分で治したよね」言われたのは、そういうことだと思います。

     

    ときどき、定期的に整体に通わないとダメという方も、いらっしゃいますよね。

     

    もしかすると、硬いところを外から緩められた場合、からだが「この守りではダメなのか。では、もっと強く硬くしないと守れない」と、さらに硬くしてくる可能性もあるような気がします。

     

    頭と心は「痛みがつらい」と言っていても、からだは自分を守るために必要な砦を崩されて、焦るわけです。頭と心とからだと、バラバラですね。

     

    これでは、どんなに腕のよい整体師さん、鍼灸師さんでも、かなわないかもしれません。そのときは緩めることができても、さらに強固に固めてこられたら、いつまでも終わらない、いたちごっこになりかねません。

     

    いたちごっこから抜ける方法のひとつは、感覚を育てることだと思います。例えば立ち姿勢にしても、楽に立てている状態を経験することで、無理がかかっている状態も理解できるようになります。

     

    一度、楽な状態を経験すれば、オセロの黒が白にパタパタを変わるように、一瞬ですべてが変わるわけではありません。感覚を育てるには、それなりに時間がかかります。でも、最初の糸口にはなります。それは、とても大事です。

     

    そうやって、少しずつ違和感を感じられるようになれば、施術してもらう場合でも、「あ、要らないものだよね」と、からだが自ら痛みを手放していけることもあると感じています。

     

     

    もうひとつの痛みの原因は、痛みがあることで、自分を感じようとしていることです。

     

    極端な例ですが、リストカットが、そうかもしれませんよね。痛みを感じて、生きていることを確認しているのではないでしょうか。

     

    人と喧嘩してぶつかり合うのも、(取っ組み合いも、言い争いも)、自分を感じるためかもしれません。国や勢力同士の争いも、自分の存在を確認したいために起きていることも、あるかもしれないと思います。

     

    よく考えると、ちょっと(かなり)人迷惑ですね(笑)。お互いさま、という場合もありますが。

     

    これも、自分を守るため、生きようとしているからだと思います。

     

    抜け出すひとつの方法は、「わたしはここにいてもいい」と感じられることです。

     

    方法はいろいろありますが、いちばん簡単なのは、触ることです。

     

    子供は、ぎゅっと抱っこしてあげるといい、と言いますよね。あれは、ぎゅっとされることで、自分の存在を感じることができて、安心するからだと聞いたことがあります。

     

    大人でも、ハグをすると心が安定する、という話もありますよね。

     

    誰かとハグするのも素敵ですが、自分でも、できます。

     

    例えば右手で、左腕を上から下まで、ゆっくり撫でるだけでもいいのです。このとき、指先まで撫でるようにします。適当に手首あたりで終わらせてしまうと、その先の手が、ないことにされてしまいます。

     

    ゆっくり撫でた後、誰かに左腕を持ち上げてもらうと、腕がずっしり、重くなっていることもあります。撫でてていない右腕は、軽かったりします。軽い=緊張がある、です。

     

     

    ほかにも、痛みが出る部位によって、心理的な原因がある、という見方もあります。

     

    例えば、わたしの場合だと、背骨の役割は、支えることです。障害は、自分や他社への支えの恐れであり、改善法としては、自己受容や自分を信頼することです。(出典:石原克己著「伝統医学のこれから」第2巻)

     

    痛みの出た時期、感じ方などから、こまかく原因を見ていくワークもありますので、やってみる方法もありますが、わたしの好みとしては、「そういうことも、あるのかな」と、参考程度に見るくらいでもいいと、思っています。

     

    「わたしのこれは、なんだろう?」と思った方は、聞いてくださいね。

     

     

    いろいろ書きましたが、どれも共通しているのは、痛みは自分を守ろうとした結果、という点です。そう思うと、痛みを違う面から見られるようになるかもしれません。

     

    これがすべてではなく、他にもあるかもしれませんが、どなたかの参考になれば、うれしいです。痛みとうまく付き合っていける人が、ひとりでも増えますように。

     

     

    【3月の特別クラス】

    3月28日(土)14:00-16:30 「ホントにはじめての武当太極拳・気功(池尻大橋)詳細とお申込方法はこちら

     

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    「陽だまり」とは

    「陽だまり」のイメージは、縁側にのんびり座り、暖かいお日様の光が射しこみ、ぬくぬく、まどろむような時間と空間です。縁側は、なくても生活できますが、あると居心地が良く、今、とても失われている”あそび”や”ゆとり”だと思うのです。モノも置かれておらず、いつもキレイで、りん、とした印象もあります。人が集って、一緒にお茶でも飲んでなにげない話をして、ほっとする場所でもあります。太極拳を通して、陽だまりのような場を創っていきたいと思っています。

     

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    いしい まゆみ(道号:静慧)/ みんみん)

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      体温をあげよう

      2020.03.05 Thursday

       

      (中国 湖北省 武当山)

       

      毎日、新型コロナウィルス感染症のニュースでもちきりですね。

       

      状況は刻々と変わりますし、必要な情報は取るべきだと思いますが、あまりにすぎると、起きていないことへの恐怖にとらわれて、不安が不安を呼んでしまうこともありますよね。

       

      絶対に自分はかからないわけではありませんが、

      絶対に自分はかかるわけでもありません。

       

      状況を見ると、インフルエンザにプラスされているため、今年は病気リスクが高そうですので、わたしは普段よりも警戒レベルを上げて、しっかり予防をするようにしています。

       

      警戒レベルを上げるとは言っても、外国旅行に出たときのような感じです。日本にいるより、スリなどの被害にあう確率が高くなりますし、ぼんやりしていると知らずに危険な場所に入り込んでしまうこともあります。中国では交通事故にあっても、道行く人たちが救急車を呼んでくれないことも多い(なぜなら、犯人にされてしまうから)ため、「自分の身は、自分で守る」という意識をより強く持ちます。その程度です。

       

      栄養を取る、よく休む、水分を取る、手洗いとうがいをしっかりする、軽く運動する、など、できる予防をして、あとは心やすらかに、淡々と暮らすのがよいと思っています。

       

      インフルエンザもそうですが、菌に触れても、本人の免疫力が強かったりすると、発症しないで済むこともあるでしょう。

       

      菌は存在しているのですし、もちろんそれを駆除すべく、あれこれ手を打ち、収束していくことが望ましいですが、

       

      それはそれとして、普段から免疫力を上げておいたら、リスクは減らせますよね。

       

      免疫力の目安になるのは、体温です。

       

      以前、中医学の先生から「黄帝内経」を習っていたときに、教わったことを、かいつまんで書いてみようと思います。黄帝内経とは、中国最古の医学書、養生書です。

       

       

      健康体温、ご存じでしょうか?

       

      36.5〜37℃です。

       

      「えっ!」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。今は平熱が36℃ない人も、かなりいるようです。生活習慣のせいでしょう。

       

      平熱が健康体温よりも低い場合は、低体温です。低体温は危険で、さまざまな病気を呼んでしまいます。

       

      低体温と冷え性は違うのです。冷え性では死にませんが、低体温では、死ぬこともあります。

       

      体温と免疫力の関係でみると、

       

      体温が1℃下がると、免疫力が30%下がります。血流が悪くなり、新陳代謝が悪くなり、さまざまな障害が生じ、病気を引き起こします。

       

      ガンは、低体温の35℃だいだと発生しやすいそうです。また血栓も、体温が正常なら起きにくいそうなのですが、体が冷えてしまうと、できやすくなるそうです。

       

      逆に、体温が1℃上がると、免疫力が5−6倍に高まります。もともと人に備わっている、病原体を発見して、正常に戻ろうとする力が働きます。

       

       

      冷える原因としては、次のようなものがあります。

      ・衣服

      ・食生活の乱れ

      ・室内環境(暖房と冷房)

      ・運動不足による筋力の低下(筋力量不足)

      ・シャワー

       

      衣服

      寒い冬に、お腹を丸出しにしていると、冷えますよね。手のひらをお腹の素肌に当ててみて、お腹の方が冷たかったら、冷えています。簡単な改善方法としては、腹巻です。むかーし、わたしもお腹の方が冷たかったとき、絹の腹巻をしていたら、短期間で改善しました。

       

      絹の腹巻は、冬だけではなく、夏も、冷房で冷えている場所などで活躍してくれます。

       

      お腹を冷やさないために、パジャマの上着のすそをズボンに入れるのも、おすすめです。子供みたいですが、大丈夫、誰も見ていません。

       

      背中を冷やさないことも、大切です。首の付け根と両肩を結んだ横のラインから、腰を結んだ逆三角形のエリアは、冬には絶対に温かくしておきたいところです。首にもマフラーやスカーフを巻いて、温めます。

       

       

      食生活

      水分をしっかりとり、栄養を取ることです。

       

      通常の風邪でもそうですが、熱を出したら、とにかく水をたくさん飲みます。水が、すぐれた解熱剤になってくれます。

       

      インフルエンザや感染症の場合、殺菌作用のある菊花茶も、おすすめです。ちょっと怪しいと思ったら、大量に飲んで、おふとんをかぶって、汗もどんどん出してしまえば、発症せず済むこともあります。

       

      冷えるとトイレに行きたくなりますよね。あれは水を出して熱を守ろうとしているからだそうです。体は、今この瞬間を守ろうと働くことはできますが、それによって先にどうなるかまで、予測して働くことは難しいようです。冷えないようにしながら、水分もちゃんと、こまめにとりましょう。「のどが渇いた」と思ってから飲むのでは遅い、と言う話もありますので、渇く前に飲む習慣いしたいですよね。

       

      朝起きたときに、温かいお湯を飲むのもおすすめです。睡眠中、血液から発汗して、血はドロドロになります。粘っこくなった血液は、心臓や肺に負担をかけてしまいます。流れが悪いと、血管壁に圧もかかりやすく、動脈硬化にもなりやすくなりますよね。このとき、冷たいお水よりは、ぜひ温かいお湯にしましょう。

       

      お湯は外出時も、おすすめです。「冷えたな」と思ったとき、温かいお湯を飲むと、体の中からぽっこり温まります。外から(衣服)だけでなく、中からも温めること、大事です。

       

      食事も、大切です。冷やさないためには、冬にとれるものを食べます。トマトやキュウリなどの夏野菜は、しゅーっと体を冷やします。

       

      朝食も大切です。中国に行ったとき、「お腹すいていないから、いい」と、朝食をパスしようとしたら、気づいたら朝ごはん屋さんに連れていかれていました。「朝ごはんを食べないのは、体に悪い。」と。

       

      胃に食べ物を入れない時間があるとよいという考えもありますし、自分なりのリズムもあるかもしれません。それらを否定するわけではありませんが、ここでは、朝食を食べる大切さを、書きます。

       

      3食の中で、いちばん人の体に影響するのは、朝食です。10時間以上食べておらず(通常であれば、睡眠中ですから)、寝ている間も1000キロカロリー以上、失っているそうです。生きていくために最も重要なエネルギーを、補給しなければなりません。

       

      これから活動していく朝は、しっかり炭水化物を取って、備えることが必要です。

       

      長い間、朝食を取らない場合、脳に影響が出たり、消化器系統に影響が出たりすることもあるようです。

       

      大脳は、全体重の2−3%と小さいのですが、どこよりも大量の血液(800CC/分)と酸素が必要です。低血糖になると、胃腸から補給することになり、胃腸に負担がかかってしまいます。

       

      子供の場合、低血糖が長引くと、大脳の重さや形態の発育に影響が出る、とも聞きました。

       

      大人でも、脳は使いますよね。脳の機能が低下すると、全身の機能が低下します。

       

      消化器系統への影響は、というと、正常なら前の晩に食べたものは、6時間で消化・吸収され、胃が空っぽになります。朝になると「これから食べてくれるよね」という期待のもと、胃酸が分泌されて、食欲をもたらします。胃腸のぜん動運動も始まります。

       

      胃酸が出ているにも関わらず、何も食べなかったら、胃酸が胃の粘膜を溶かしてしまいます。それが胃炎や胃潰瘍を引き起こすこともあります。リズムどおりに食べることで、胃酸から胃袋を守るシステムが働いているのですが、そのシステムが壊れてしまいます。

       

      胃腸を損なうことは、老化につながります。

       

      なお、ご参考まで、寝る前の夕食は、炭水化物は不要です。夕食に炭水化物を食べると、消化に時間がかかり、目覚めるときに、まだお腹がすかなかったりします。実際わたしは、夜の炭水化物を抜く方が、朝、お腹がすいて起きられるようです。

       

      「お腹すいたっ!」と起きる=健康、です。

       

       

      室内環境(暖房と冷房)

      暑い夏には冷房が必要ですし、寒い冬には暖房が必要です。ただし、冬のあっためすぎ、夏の冷えすぎは、禁物です。たとえば冬は「寒い」と感じることも、自律神経を正常に働かせるためには必要です。

       

      中国にお稽古に行くと、どの季節も外でお稽古します。(ただし夏は、太陽が高くなる正午から午後4時くらいまでは、お稽古しません。)冬は、セーター、ダウン、マフラー、手ぶくろ、帽子など、もこもこ着て、外に出ます。薄着に見えると、「寒いんじゃない?着たら?」と言われます。

       

      動くと暑くなるので、こまめに上着を脱ぎ着して調節することが大切です。

       

      わたしは、寒いな、と思っても、「ま、いいか」とそのままにしてしまうこともあるのですが、兄弟子を見ていたら、かなりまめに着たり、脱いだりをしていました。

       

      わたしより、ずっと若く、ずっと健康そうな人が、こまめに脱ぎ着しているのです。わが身を振り返り、ものすごく反省しました。

       

      面倒がっては、いけません。「ま、いいか」というのも、自分の危機管理能力、感覚の鈍さですよね。鈍いからこそ気づかないのですが、それなら、なおさら、まめを心がけないと、ですね。

       

       

      適度な運動

      血が巡れば、体温は上がります。そのためには、筋肉も大切です。

       

      心臓は、だいぶ上の位置にありますよね。立っている人間で、そこまで血液を上げていかなければならないのは、大変です。もちろん心臓はポンプの動きで、血液を押し出しますが、ひとりでは無理です。

       

      足の筋肉は、血液を上に送る役割をする、と聞いたことありませんか?

       

      心臓は、筋肉の助けも借りる前提で、働いています。筋肉がなくて、助けてくれないなんて「聞いてないし」ですよね。心臓だけで頑張りすぎると、血管壁に圧がかかりすぎて、動脈硬化を起こしかねません。

       

      足を鍛えることは、大事です。

       

      站椿功(立禅)とか太極拳は、足の必要な筋肉を鍛えてくれますし、体の無駄な緊張を取り去ることで、全身に血液が巡ることを応援してくれます。

       

      健康とは、毛細血管まできれいな血液がいきわたっていること、とお医者さんが言っていたことがあります。毛細血管まで血液がいかないと、その毛細血管が機能しなくなるようなので、常日頃から、はじっこまで巡らせることが大切です。

       

      動くと、すっきりする、というのもありますしね。うつうつとした悩みや、頭のぐるぐるも、お休みできます。

       

       

      お風呂に入る

      面倒で、もしくは苦手で、シャワーで済ませる方もいらっしゃいますが、お風呂に入ることも大事です。

       

      お風呂に入って、発熱することで、体温が上昇します。

       

      適温は38℃〜41℃くらいです。このくらいだと、副交感神経が刺激されて、リラックスすることができ、明日の元気を引き出してくれます。

       

      42℃以上だと、交感神経刺激されて、身体の活性化にはなりますが、心臓や肺、脳に問題のある人は、逆効果になります。問題がある人は、お医者さんに相談してください。

       

      お風呂の良さは、水圧がかかることです。水圧がリンパ、血管を刺激して、働きを活性化してくれます。リンパも血管も、拡張すれば(広がれば)、苦労せずにすみずみまで届きやすくなります。

       

      お風呂には、溶解性もあり、血栓を溶かす作用もあるようです。血栓は、誰にでもあるそうですが、温熱で大きな血栓を小さくすることで、浄化作用が働きます。

       

      さらにお風呂に入ると免疫作用が働いて、白血球の強化にもなり、病気になりにくい体になります。

       

      体の中にある汚れも、外に出せますしね。

       

       

      こう見てみると、そんなに大それたことは、ひとつもありませんよね。

       

      人の機能を正常に働かせるためのことに、そんなに大変なことがあるわけはありません。

       

      この機会に、もし知らなければ平熱を計ってみてくださいね。低い人は「免疫力が落ちている」と、ぜひ認識してください。日頃から免疫を上げておくことで、今のようにリスクが高くなっているときでも、慌てずに淡々と過ごしやすくなるのではないでしょうか。

       

      すべては日ごろのケアから、です。

       

      これまでにやっていない人も、今からぜひ、です。

       

       

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      「陽だまり」とは

      「陽だまり」のイメージは、縁側にのんびり座り、暖かいお日様の光が射しこみ、ぬくぬく、まどろむような時間と空間です。縁側は、なくても生活できますが、あると居心地が良く、今、とても失われている”あそび”や”ゆとり”だと思うのです。モノも置かれておらず、いつもキレイで、りん、とした印象もあります。人が集って、一緒にお茶でも飲んでなにげない話をして、ほっとする場所でもあります。太極拳を通して、陽だまりのような場を創っていきたいと思っています。

       

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        体は自然にバランスを取る

        2019.07.04 Thursday

         

        太極拳をやっている人の、よくある悩みとして、

         

        「『ここを緩めて』と、よく言われる」があります。

         

        「言われる」ということは、緩んでいないことになりますが、「よく言われる」ということは、緩め方がわかっていない可能性があります。

         

        そのために、「『緩めて』と言われるたびに、苦しくなる」と言う方もいらっしゃいました。

         

        人は誰でも、ベストを尽くしています。ただし、そのときの自分が知っている範囲でのベストなので、その中には解決の糸口がないこともあります。

         

        ベストをつくしてなお指摘されたら、それは辛いですよね。

         

        肩が緩んでいない場合、たとえば、

         

        ひざを固めてしまっている場合もありますし、

        あごが上がって、首が縮んでいることもあります。

         

        この場合、ひざも、首も、緊張している、と言います。

         

        原因は人によって違うので、本来は、それぞれの様子を見てアドバイスするものですので、これはほんの一例です。肩が緩まない原因は、肩にはないこともあります。

         

        「よく言われる」という方の場合、肩だけに注目しすぎかもしれません。もちろん、肩をどうにかするだけで改善することもありますが、原因が他にある場合は、それだけでは緩みません。

         

        人の体は、よくも悪くもバランスを取ろうとします。

         

        首が縮んでいると(たいていの人の首は、本来の長さよりも短いです)、相対して肩も上がります。両方が中心に向かって縮むような感じです。

         

        あごを引いて、首の後ろ側が伸びるようにすると、自然に肩は、しゅーっと下がります。

         

        自分だと「伸びているよ」としらっと思ってしまいがちですので(これもベストを尽くしているからです)、人にやってもらう方がおすすめです。耳の後ろの骨のあたりを、にゅーっと上に向けて押すのです。

         

        ひざと肩の組み合わせも、ひざが固まるとバランスを取るように肩も緊張して固まります。

         

        わたしが実践している、ひざを緩ませる方法は、上下の骨(大腿骨と脛骨)が合わさる部分の真ん中をイメージして、それがお互いに押し合えるところを探ります。これが、足がまっすぐな状態です。このとき、ひざ裏には緩みがあるはずです。

         

        これ、ひざ裏を緩ませる方からアプローチしても、特に慣れていない人の場合は、同じ結果にはなりにくいと思います。注意してくださいね。

         

        もちろん、この組み合わせが全てなのではなく、たとえば肩の緊張の原因は、いろいろあります。ひとつ解決しても、他の要因がまだあるかもしれません。

         

        でも少なくともひとつ、別の場所からアプローチすることで、何か気づくことがあるかもしれません。

         

        そうやって少しずつ、つなげて意識できる範囲を広げて、全身、さらにはその先の空間まで広げていけば、だんだんと緩みやすい体になっていくのではないでしょうか。

         

        自然にバランスを取るのは、人に備わったすごい機能だと思っています。でもそれが、上手く働く場合と、上記のように、緊張が緊張を呼ぶように働く場合と、両方あります。

         

        良くも悪くも、ですが、それでも、このバランスを取る機能は、人の不思議というか、すごさのひとつです。もともとは調和している(太極)と思えば、当然と言えば当然なのですが、その当然が何か、わからなくなっていますものね。

         

        もうひとつ、緩まない原因として、「まだ緩めたくない」と無意識に思っている場合もあります。心から来る緊張ですね。そういう場合に、無理やりほぐそうとすると、体が危機感を感じて、さらに固めにかかる場合もあります。

         

        鼻息荒く、一気にすべてをなんとかしようとするのではなく、タイミングが来るまで待つというおおらかさも、大切だと思っています。

         

        ちょっとずつで、いいのです。人生、長いですしね。

         

        そして、「まだ緩めたくない」と思っている場合も、何かに対してバランスを取って固めているかもしれません。怖いから、とか、自分がしっかりしないといけないから、とか。

         

        この場合も、無理は禁物です。タイミングが来たら、自分で気づいてほぐれていくものだと思っています。

         

        ただし何もしないままだと、いつまでたってもタイミングが来ないこともあります。わたしにとっての太極拳は、タイミングが来たら、起きるべきことが起きるようにするための、ベースにもなっている気がします。

         

        最初から、そんなこと期待して始めたわけではなく、やってきた感想として、感じていることですけれどもね。

         

         

         

         

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          背中は語る

          2019.04.25 Thursday

           

          (東寺の帝釈天騎象像。立体仏像曼荼羅のうちの1体。東京国立博物館の「東寺 空海と仏像曼荼羅」より)

           

          「自分」というとき、皮膚が境界線だと感じている方は、多いのではないでしょうか?

           

          皮膚より内側が自分、それより外側が外、という認識です。

           

          太極拳をしていると、この境界線が曖昧になってきて、どこまでが内でどこからが外か、わからなくなってきます。それとともに、意識が拡大していきます。個を超えて、全てはひとつの源である「太極」に触れに行く感じがします。

           

          パーソナルスペース(この中に他人が入ると居心地悪いと感じる空間)の境界線もなくなっていき、視野も拡大していく感じです。

           

          個を超えてつながりに向かうとき、「意識」と「体」という物体の2つの側面があると思いますが、

           

          わたしにとっては、体からのアプローチが大事です。

           

          体を持ってこの世に生まれ、それゆえ「個」という認識や自我が育っていくと思うからです。体が解放されていくと、意識も解放されていく気がしています。(人によって、違うアプローチもあると、思います。)

           

          体の解放のきっかけのひとつは、皮膚の柔かさです。

           

          さて、そこで背中です。自分の背中がどんな感じか、普段気にする方は少ないのではないでしょうか?

           

          「背中で人生を語る」と言いますよね。

           

          後ろと前はつながっているため、前だっても語っているでしょうが、後ろ姿から受ける印象の方が、正直のような気がします。前は、自分で見えますから、気も使いやすいですしね。(もちろん、気を使うことが悪いわけではありません。)

           

          「やさしい站椿功」のクラスでは、ときどき、はじめる前と後で、後ろ姿の印象を見比べてみます。

           

          ふたりペアになり、一人は後ろ向きに立ち。もうひとりが印象をメモします。形、〇〇に似ている、硬さ柔かさ、重さや軽さ、雰囲気、擬態語など、なんでも自由です。無責任に(これが大切です)、何かを気にすることなく、感じたままを書いてもらいます。

           

          最初に書いたものは、そのまま回収して、終わった後あらためて印象を書いてもらい、両方を本人にお渡しします。

           

          結構、わかりやすく変わります。

           

          人それぞれですが、大まかな全体の傾向を言うなら、硬くてゆがんでいたものが、バランスが良くなり、スッとする感じでしょうか。痩せたように、すっきり見える方もいらっしゃいます。

           

          背中は、ここ数年、とても気になってきた部位です。中国の師匠や兄弟子たちの背中は、とても柔かく、龍のようにしなります。必然的に、全身もしなやかに動きます。

           

          でも、日本でいろんな人を見ていると、背中は一枚板のように硬く、まっすぐな方が多いのです。

           

          背骨が柔かく使えていないこともありますが、背骨の関節をひとつずつ曲げられたとしても、背中に緊張が残っていることもあります。その緊張は、なくてもいいのだと気づいたことを書いたブログが、「背負ってきたものを、もう手放してもいい」です。

           

          背中で語っているものは、個とか自我の現れでもあるような気がします。「がんばらないと」とか、何者かになろうとして努力しているものが、現れているのかもしれません。

           

          努力は、すばらしいです。でも、しなくてもいい努力をしていること、ありませんか?一生懸命なだけに、自分ではわかりにくいでしょう。

           

          自分がよかれと思ってやっていたことが、実は誰も望んでいなかったという、なんとも悲しい経験は、わたしにもあります。

           

          そもそも、そんなに「自分」が頑張らないといけないのでしょうか?

           

          例えば、立つことでも、自分ひとりでは立てません。

           

          「なぜ立てると思う?」と聞くと、よく返ってくる答は、「立つ意志があるから」とか、「骨と筋肉で立つ」というもので、もちろんその通りです。

           

          でもそれ以前に、地面がなければ、立つことはできません。当たり前にあるもののありがたさは、忘れがちになるものですが、ここでもそうです。

           

          見方を変えれば、いつも大地は、人を助けてくれています。

           

          それを体感していくことで、「立たなきゃ」という力みや荷を、降ろすこともできます。

           

          人が緩むには、拠り所がないと緩めません。立つときには、まず地面が支えてくれること、足の骨の構造をしっかり土台にすること、そして上半身の重心ラインの位置(背骨の前側です)を認識することで、背中の緊張は緩めることができます。

           

          すると、体はもっと軽く楽に動けるようになります。

           

          頼りにするところを認識して、必要ないところを緩めながら太極拳をすると、「やっていない感覚」がさらに増します。動きの早い形意拳も、息が上がらず、楽に動けます。

           

          こうして背中が緩んでくると、またひとつ、個からつながりを思い出していくきっかけのような気がします。

           

          視野が広がれば、自分ひとりの思い込みで、良かれと思って突っ走ってしまうことも、減るかもしれませんよね。

           

           

          「やさしい站椿功」の終わりに、こんな感想を言っていた人がいました。「本人の後ろ姿が変わったこともあるのだろうけど、自分の見方が変わったことも、あるような気がする。」

           

          そうだと思います。世界は、自分のフィルターで見ているわけですから、自分が緩めば、フィルターは透明になるでしょう。前は見えなかった「ありのまま」が見えることも、十分にあり得ます。

           

          つながりを取り戻した背中は、ありのまま、素のままです。この背中も語りますが、わたしの印象では、「おおらか」とか、「居心地よさそうで近寄りたくなる」という感じで、強烈な個性は感じません。

           

          「太極拳には、個性が出る」という話もあり、わたしも昔はそう思っていました。でもあるとき、中国で田理陽師父(武当玄武派第十五代伝人)の太極拳を見たとき、

           

          「この人は誰?」という衝撃を受けました。

           

          それまで1か月以上直接教えていただいて、それなりに「知っている」と思っていた人とは、全然違う存在が、そこにいたのです。

           

          そのときから、これが太極拳なのだと思うようになりました。個を超えたもの、すべてがつながるひとつのもの、それが太極ですからね。(そのときのお話を書いたブログは、「武術と才能」(2015年1月))

           

           

          中国には、「武術に長じた者は打たれて亡くなる。水泳に長じたものはおぼれて亡くなる」という言葉があるそうです(出典:「老子と太極拳」清水豊著 BNP出版)

           

          得意なところに、心の執着や滞りが生まれやすいから、とか。

           

          聖人は、市井の人にまぎれている、とも言いますよね。

           

          やればやるほど、個が際立つよりも、つながりを取り戻していくと、そうなっていくのかもしれません。

           

          個を超えているけれども、それは誰でも根本に持っているもの(もしくは、それにつながるもの)でもあるためか、誰にとっても居心地よく、安らげてくれるような気がします。

           

          皮膚や柔かく、お背中は、ふんわりと、ですよ。理想は、上の写真の仏さまみたいな感じです。たいそう美しく、楽そうです。

           

           

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          4月28日(日)13:00-15:00は、千葉県香取市(小見川)の「立って、歩いて、太極拳」です。詳細とご応募はこちら

           

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          5月12日(日)14:00-16:30「内なる自然に還る旅:魚からの進化をたどって若返ろう!」第4回 より速く:草原を走る四つ足動物チーター です。詳細とご応募方法はこちら

           

           

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